真相究明の始まり【20】
「分かった。お前との約束は……この私、世界冒険者協会・会長のリダ・ドーンテンが約束しよう」
答え、私は自分の冒険者カードをジャベリンに差し出した。
もう、コイツには自分の素性をバラしても大丈夫だろうと確信したのだ。
「……本当に会長だったのですね」
私の冒険者カード……正確に言うと、名刺代わりに配る複製のカードではあったのだが、それを見てジャベリンは苦く笑った。
きっと、確たる証拠を敢えて見せていなかったので、やっぱり何処か半信半疑な部分があったのだろう。
まぁ……当初の目的としては、そのつもりでやっていたんだけどな。
結果オーライとは言え、何となくあの演技が無駄骨になってしまったのは、少し悔しい。
……そ、そこはさて置きだ。
「リダさん……いや、リダ様……今日からは、この私ことジャベリン・スピアーもリダ様傘下の一員として、しっかりとあなた様のサポートをして行きたいと思います」
ジャベリンは深々と私の前で頭を下げて来た。
「うむ、そこは任せておけ。お前がしっかりと働いてくれるのであれば、むしろ中央本部で擁護してやろう……ただし、表向きの所だけな? 流石に裏は難しいぞ……」
そこまで答えた時だった。
まるでタイミングを見計らったかの様な勢いで、通路に沢山の衛兵がなだれ込んで来た。
沢山いたろう衛兵の先頭には、部隊長でもあるトモヨさんがやって来ていて、
「動くな! この建物は、既に我が治安部隊が占拠した! 帝国と行政の認可は降りている! 直ちに強制捜査に入る!」
物凄い形相で叫ぶトモヨさんがいた。
……ああ、やっぱりこうなるのね。
他のフロアで、どんな騒動になっているのかは知らないけど……これは、もう……止められない気もして来た。
「えぇ……っと、ごめんトモヨさん。話は終わったんだ」
私は苦笑いのまま答え、トモヨさんの正面に立って両手を合わせて謝った。
「……は?」
ポカンとなっていた。
見事に、口が八等分のスイカみたいな感じになっていた。
「やはり、もう遅かったか……ふふふ……先程の言葉は、どうやら取り下げて頂く事になりそうですね……」
ジャベリンは、自虐的に笑って言う。
……くそ。
「トモヨさん! 取り敢えず、ちょっと待ってくれないか? 強制捜査は良いけど、かなーり適当にやってくれないかな……?」
「な、何を言って来るんですか、いきなりっ! そんな事、出来る訳がないでしょう!?」
ですよねー。
実際問題……もう既に色々な所がゴーサインを出しているのだろう。
そうじゃなかったら、治安部隊と言えども、こんなに簡単に強制執行する様な動きを取れる筈がない。
逆に言うのなら、ここまでの事をやって置いて……
『ごめん、やっぱり引き返します』
……とか、言える空気ではなかった!
おふぅ……。
なんてヘビーな状況なんだよ。
……その後。
「分かりました……一部、逮捕状請求をしてしまった部分に関しては徹底追求しますが、他はなるべく穏便に済ませる様に手配を掛けておきます」
散々頭を下げ……しまいには土下座までした事で、ようやく折れてくれたトモヨさんの温情(?)により、組織の完全壊滅までは行かない程度の捜査で終了して行くのだった。
○◎●◎○
翌日。
私の自宅に、金髪の美男子が訪ねて来た。
今回の一件で、色々と苦労する事になりそうな人物……ジャベリンだ。
あれから……重要参考人として強制連行を喰らったジャベリンであったが、私の土下座も功を奏したのか? 多少の尋問を受けた程度で済んだのだと言う。
会社の方は……表向きには、トップである総代表の会長が脱税したと言う事で終了した。
一応、他の色々な疑惑と言うか、積もり積もった所業の数々もあるのだが、これはこの会社にある子会社が仕出かした悪行と言う形で処罰される事になった。
つまるに、裏の顔……ギャング団の方は、下部組織だと言う形で処理したのだ。
当然、その上位組織と言うか親会社に当たる訳だから、相応の処罰を受けるだろうし……世間の目が厳しくなる事だって存分に考えられる。
そこで、ようやく私の出番となる。
貿易商と言う事だったので、この会社に関連する商売を促進する様に、冒険者協会が動く事になったのだ。
世界冒険者協会と言うのは、言うなれば世界経済を網羅する、極めて強大な協力団体だ。
何故なら、世界総合共同組合の上位組織が、冒険者協会だからだ。
前に少しだけ説明したかも知れないが……組合と言うのは、職業組合の事だ。
その数は凄まじく、多種多様な職業がある。
この組合を世界規模で纏め上げているのが世界総合共同組合だ。
その経済効果は、例え大国であったとしても……一つの国や地域とは比較にならないまでの経済力が存在している。
この、世界総合共同組合に、私は協力を斡旋したのだ。
上位組織にして、全ての頂点である、世界冒険者協会・会長としてな?




