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真相究明の始まり【19】

 本当に神様ってヤツは……罪作りな魅力のある女を産み出すのが得意だと、心の底から痛感してしまう。


「失礼ですが……お名前をお伺いしても宜しいですか?」


「ユニクス・ハロウだ……」

  

 目が、完全に魅了状態チャームになってなっていた金髪男の言葉に、ユニクスは少し後退あとずさりしてから声を返した。


「ユニクスさんですが……良い名前だ。実に優雅で、チャーミングな名前だと思う……ああ、私の名前はジャベリン・スピアーと言います」


 金髪男改め……ジャベリンは、聞いてもいないのに自分の自己紹介をユニクスにして来た。

 ユニクスの中にある不快度指数が急上昇しているのが、私の目から見ても良く分かった。


 それら一連の会話を見ていたバアルは、さりげなぁ~く瞳をキラーン☆ と光らせて、


「リダ様に提案がございます。このジャベリンは、この組織の中でもかなり上層に位置する立場の人間です。上手く我が同胞に加える事が出来たのなら、確実にこちらにとって大きな利益になる事でしょう」


 私に向かって助言して見せた。


 ……刹那、

 

「な、何を言う! 私は反対だ! 確かに有能かも知れないが、コイツはギャングだ! 言うなれば何時いつ裏切るやも知れない相手だぞっ!? そんな危険な存在をリダ様のお膝元に置くことなど、私は許すと思っているのかっ!」


 ユニクスが猛然とがなり立てて来た。

 さっきと言ってる事が逆になっているのですが……?


 ついでに言うのなら、その台詞は見事なブーメランだと思うんだがなぁ……?


「それは滑稽な発言だと思わないか、ユニクス? それならば……私やお前は何だ? 視点を人間と言う論点に置き換えるのであれば、私やお前こそが、全人類の宿敵にして忌み嫌われる存在だと思うのだが?」


「そ、それは違うぞ! 我らは、リダ様に忠誠を誓っている! そしてリダ様は万民に公平だ!」


 案の定、ブーメランになってしまったバアルの言葉に、それでもユニクスは必死で反論して見せる。

 どうやら、心底嫌らしい。


 面白いから、少し観察して置こう。


「自分がリダ様に忠誠を誓えば、ウチの組織を壊滅させないで済むのか? それなら、喜んで誓うが?」


 そこでジャベリンは真顔になってユニクスとバアルの二人に答えた。

 なるほどなるほど。

 コイツはコイツなりに、今ある組織に愛着があるのかも知れない。

 表向きはちゃんとした会社だし……その大半は、しっかりと真面目に生きている月給取りでもある。


 そして、その会社だって崩壊してしまったのなら……一体、幾人の失業者が生まれ、どれだけの家族が路頭に迷うと言うのだろう?

 世界規模で、色々と手を出している巨大企業でもある。

 その数は計り知れない。


 そして、幾人もの失業者が生まれる果てに……星の数にまで膨れ上がるだろう悲劇の数々。


 この世界は、特に悲惨だ。

 金がないと言う理由で我が子を奴隷商人に売り払ってしまう親だっている。

 まだまだ、人権と言う意味では完全な発展を遂げている世界ではなく……まさに未開の部分が多い世界でもあるのだ。


 それだけに……。


「私はどうなっても構わない……だから、この会社の為に毎日頑張っている皆の生活を……その幸せだけは、保証してくれないだろうか?」


 答えたジャベリンは、私達に向かって土下座をして来た。

 ギャング団のトップクラスにいるだろう者が、だ。


 きっと、コイツだって悪い事を散々して来たのだろう。

 場合によっては、沢山の人間を不幸にして来たかも知れない。


 そんな人間が、果たして……どの面下げて、こんなみっともない行為に踏み込んでいるのかと思う部分はある。


 しかし、それでも私は思った。


 これは、別に、コイツらだけに限った事ではないと。

 ハッキリ言うのなら、冒険者協会の連中だって、完全なる善良な存在なのかと言えば、答えはノーと言うしかない。


 その末端である冒険者に至っては……盗賊紛いなキチガイだっているだろう。

 つまり……相手の悪行ばかりを見ていたらキリがないのだ。

 過去ばかりに焦点を当て……相手が行った悪い事ばかりをクローズアップするのは、ハッキリ言えば建設的ではない。


 そして、思う。


 私たちは未来思考の人間でなければならない……と。


 では、未来に焦点を当てると、どうなるのだろう?


 このまま、コイツを倒し……この企業その物をやり玉に上げたらどうなるか?

 これに関する答えはもう出ているだろう。

 数多くの悲劇が生まれるだけだ。


 そして、私はこの悲劇的な未来を止める事が出来る。


 ここまで考えたのなら……もう、私の口から言える事なんて、ほとんどないんじゃないかと思った。

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