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真相究明の始まり【18】

 ……しばらくして。


「結局の所……あなたが会長であると言う証明にはならないとは思いますが……しかし、確実に言える事が一つあります」


 額から汗を流していた男は、ここまで言うと真剣な眼差しを私に見せ……そこから再び口を動かして来た。


「あなたがウチを敵対しているとするのなら、この組織は壊滅へのカウントダウンが既に始まっていると見て良いでしょう……ふふふ、だから冒険者協会を怒らせる様な真似をしては行けないと、私は助言したと言うのに……」


 男は自虐的に笑った。


 ……ほう?

 まさか、そんな台詞をお前の口から出して来るとはなぁ……?


 こんな台詞を口にしていたのなら『私は中央大陸の冒険者協会に喧嘩を売る行為を、西側諸国と結託する形でやりました』と、遠回しに自供している様な物だ。


 こっちは、西との友好関係を保持したい為に、敢えてそれとは関係のない逮捕状を持って来てやったと言うのに。


「素直過ぎるなぁ……アンタ。もう少し、言葉をオブラートに包んだ方が良いと思うんだがねぇ」


 少し過激だった金髪男の言葉に、私もちょっとだけ躊躇してしまう。


 だが、金髪男は開き直ってしまったのか?


「あなた方の目的は……大方の予想は付いてますよ。ウチのボスがちょうど西側諸国に行っていたのは幸か不幸か……と言った所ですがね」


 特に、全く聞いてもいない事を、次から次へとベラベラ喋って来た。

 ……なるほど。

 どうやら、ここのトップは本当に不在だったか。


 さっきは、嘘か本当かの見極めが出来ない状態ではあったのだが、今回の言葉は信頼に値すると思えた。

 それでも、この期に及んで嘘を口にしている可能性もあるから、そこらも頭の片隅程度には置いておこうと思っているんだけどな?


「逮捕状の内容は、読むまでもありません。西側に敵対しない程度にウチだけを叩くと言う内容なのでしょう……そうすれば、一時的であったとしても密入国者の侵入を防ぐ事が出来る……最低限、時間稼ぎは出来る事になる訳ですよねぇ?……ふふふ。まさにその通りですよ。一体、どんな情報網を駆使して、この短期間でウチを見つけ出し……あまつさえ、しっかりとウチだけを狙った逮捕状を作成したのか?……本当に、冒険者協会と言う所は怖い組織ですね……手を出しては行けない所に、私達は手を出してしまったと言う事です」


 肩を落とした状態で、金髪男は言っていた。

 自虐に染まっていた笑みは、歪みに歪んでいた。

  

 そんな時だった。


「面白い相手ですね、リダ様」


 バアルが言う。


 直後、ユニクスも答えた。


「私も同意見です。コイツは中々に頭が切れます。戦闘的な実力も高い事も去ることながら、社会的な牽引力と知識力……何より、判断力も高い」


 ここまで答えたユニクスは……しかし、そこで嘆息混じりになってから再び口を開く。


もっとも……すぐに諦めてしまうと言う一点に置いては、いささか難点と判断せ去る得ませんがね?」


「この状態で、諦めるなと?……ふふふ、君たちは何を言ってるのか? どう考えてもチェックメイトを取られているのだよ? ここで白旗を上げないと言うのなら、何処で上げると言うのか? 最後まで足掻き苦しめと?……ナンセンスだ」


 ユニクスの言葉に金髪男は天を仰ぐ様な仕草を見せてから、全面的に否定の声音を口にする。


 言ってる事に間違いはないだろう。

 実際、完全に詰んでる。

 けれど、それでもユニクスは覇気を込めて金髪男に答えた。


「そのナンセンスな思考こそ、奇跡を呼ぶ道標みちしるべになると言う物だ」


「…………」

 

 金髪男は無言になった。

 きっと、反論する気になれば、いくらでも言葉を出す事は出来たと思う。

 それだけ状況は絶望的だった。


 だが……しかし、それでも金髪男の口から反論の言葉が出る事はなかった。

 

 この瞬間……ただただひたすら真っ直ぐな瞳を見せるユニクスの姿を見た金髪男は、思わず呆けた顔をポカーンと作っていた。


 一見すると、与太話を耳にして呆れているだけにも見える。

 けれど……きっと違うと思う。

 淀みと言う物を一切感じさせないユニクスの真っ直ぐな瞳に、ヤツは魅了されたんじゃないかなと思う。


 実際に、私に予測は当たった。


「……美しい」


 答え、金髪男は頬を紅色に染めた。

 何と言うか……一目惚れしたって感じだった。


「……?」


 ユニクスは眉を大きく捩った。

 程なくして、物凄く嫌な予感がする……と、顔に書いてある様な仕草を見せた。


 本当、ユニクスは、色々な男から惚れられる。

 この金髪男だって、結構なイケメンだった。

 

 ……普通、こう言うのって、主人公にしてヒロインでもある私の立ち位置なんじゃないだろうか?


 けれど、現実ってのは残酷だ。

 純然な意思を持つ瞳の美しさに魅了され……同時に芽生えた仄かな恋情を、早速ユニクスへと向け様とする金髪男の姿があった。

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