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真相究明の始まり【17】

 もちろん、そう思わせるのが私の狙いだ。

 

 私は相手に『コイツは冒険者協会の会長を装っている衛兵だ』と言う印象を植え付けたのだ。


 それでいで『だけど、本当かも知れない』と言う演出もしないと行けない。


 この曖昧さ加減を相手に植え付けるさじ加減ってのは、地味に難しい所なんだが、


「良いだろう。私が会長である証明を見せてやれば良いんだな?」


 言うなり、私はスゥ……と立ち上がる。


「……? リダ様? 何を?」


 いきなり立ち上がった私を見て、ユニクスも不思議そうな顔になっていた。

 見れば、その近くにいたバアルにも了見が飲めなかったらしく、キョトンとした顔で私を見ていた。


 ……まぁ、な?


 この方法が正しいのかと言われたら……正直、私自身も当たりであるのか不明ではある。


 ……あるんだけど。


「悪いが、この方法しか思い付かなかったんだ……冒険者ってのは、カードで相手に自分の実力を見せる方法とは別に、もう一つの方法として……」


 ここまで言うと、私は頭の中に魔導式を紡ぎ始める。


 スーパー攻撃力上昇魔法オフェンスアップレベル99!


 スーパー防御力上昇魔法ディフェンスアップレベル99!


 スーパー身体速度上昇魔法スピードアップレベル99!


 その瞬間、補助魔法は発動し……私の能力が急上昇して見せた。


 ドンッッッ!


 同時に、急激なエネルギー上昇による余波で、周囲に強烈な衝撃波が出現する。


「直接、自分の実力を見せるって方法がある訳だな」


「……っ! こ、これは……スゴいですね」


 悠然と、演技も半分程度の感覚で、如何にも強者の余裕らしい微笑みを見せる私がいた所で、男は目を見開いて驚く。

 ……いや、驚いてはいるんだが、どうも……こうぅ……何てか、その驚きには猶予がある。


 簡素に言うのなら『この程度ならまだ俺の方が強い』と言う感じの余裕が伺えた。


 ……なるほど。


 もしかしたら、コイツも衛兵達がこのギャング団を摘発させない抑止力の一つであったのかも知れない。

 つまり、武力行使になった場合……返り討ちに遭う可能性があったからだ。

 完全な返り討ちではないとしても、相応の被害を受ける事は必死だろう。


 ついでに言うのなら、男の目は言っている。

 コイツ……本当に会長なのか?


 チッ……仕方ないな。


 ドラゴン呼吸法ブレイズ【極】


 私は更に補助スキルを発動させ、その能力を大幅に上昇させて見せる。


「まだ上がるのですか?……これは興味深い」

 

 しかし、それでもヤツの表情から笑みが消えていない。


 ……なんてヤツだ。

 ほんの少し前であるのなら、これが私の最大だったと言うのに。


「なるほど……世の中ってのは広いって事か」


 私は思わず、口元を緩ませた。

 この状態の私を見ても、まだ平静さを失わず……あまつさえ笑っていられるなんてなぁ……。


「面白い……良いだろう。私の実力を、しっかりと見せてやるよ」


 言うなり、私は呼吸を整え……精神を集中する。


 これは、新しく手にしたスキル『睡眠学』の成果でもある。

 この補助スキルを会得するのに、かなり苦労したんだぞ……?

 

 まぁ、寝てただけなんだけどなっ!

   

 その瞬間、


 ゴゴゴゴゴゴッッッ!


 周囲に地鳴りが起こる。


「……な、なんだ……と!?」


 流石に動揺の色を見せて来たか。

 内心、少しだけホッとする。

 これより一段階上の状態になる事は可能だが……なるべくなら、ここで終わりにして起きたかった。


 私的に言うのなら、完全にこちらの手の内を見せる事をしたくなかったんだよなぁ……。


 スーパードラゴン呼吸法ブレイズ レベル1!


 シュバァァァァッッッ!


 今までとは段違いのエネルギーが私の中に封入され、漏れたエネルギーが先程と動揺に、周囲へと撒き散らされる。


 だが、その衝撃波の威力は、さっきの比ではない。


 パリンッッッ!


 室内にあったガラスは全て割れ、


 ブワァッッッ!


 近くにあった机やソファ等が宙を舞うと、


 ドガシャァァッッッ!


 壁に激突し、粉々に砕け散った。

 激突した壁にも、大きなひびが入る。


 ……これ、後で弁償しろとか、言われないよな……?


 内心で、少しだけドキドキする私がいる中、


「こ、こんな事が……あると言うのか……?」


 完全にワナワナと身体を震わせ、戦々恐々とする男の姿があった。

 顔では言っている。

 こんなの、もう……人間ではない!……と。


 正直、そこまで驚かれると、反論したい気持ちで一杯になってしまう私がいるのだが……わざと、会長かも知れない演出をするためにやっている事でもある。


 仕方ないから、ここは敢えてコイツに恐怖を覚えて貰おうか……?


「一つ、良いかな? これでも私は、まだ本当の意味では『完全ではない』からな? この意味は……分かるだろう?」


「…………」


 ニィ……と、好戦的に微笑む私を見て、男はとうとう絶句してしまった。

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