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真相究明の始まり【13】

「不思議な空間ですね……大都会のど真ん中に、ここまで無意味な部屋を作るなんて」


 部屋に入って直ぐに出たユニクスの感想はこんな感じだった。

 まぁ、私も同じ意見だな。

 せめて、何の使い道がないとしても、物置程度にはしても良いと思うんだけどな?


「……なるほど」


 他方のバアルは納得半分の声音を吐き出していた。

 何か分かったのか?


「リダ様、つまり向こうはギャング団……と言う事ですよ」


「……ほう」


 少し好戦的に微笑むバアルに、私もニヤリと笑みを作る。

 つまり、ここに案内したのは、

 

「私を殺す為……って、事か」


 そうと、納得混じりに頷いた時だった。


「殺すとは人聞きの悪い……私は単純にあなた方とお話をしようと、この部屋にお招きしただけの事です」


 不気味な笑みを見せるスーツの男がいた。

 更に醜悪な笑みのまま、再び口を開いて来た。


「この部屋は、色々と特殊な設計になっておりましてねぇ……? 防音壁の他に、衝撃を吸収する防壁等も完備されております」


 答え……スーツ男は右手をスゥゥ……と上げる。

 その瞬間、彼の右手に片手剣程度の長さがある、丸みを帯びた剣が握られていた。

 シャムシールだったか?


 青竜刀と同じ扱いを受ける傾向にあるが、実際には獅子の尾をイメージした剣らしい。

 よって、ライオンの剣と表現するのが良いのかも知れないな。


 どっちにせよ、だ?


「存分に話し合いましょうか?」


 そうと答えているスーツ男に、話し合いをするつもりがない事は、誰が見ても明らかであった。

 最初からこのつもりでいたので、私としては好都合か……元から、肩が凝りそうな面倒な舌戦に持ち込まれても、困ると言えば困るのだから。


「そうしようか」


 スーツ姿の男に頷き、私も臨戦体勢に入った時、


「お待ちくださいリダ様。あなた様程の方が、塵芥にも等しい雑魚を相手にわざわざ直接手を汚すまでもございません」


 私とスーツ姿の男との合間に入る形でユニクスが口を動かして来た。

 この言葉に、スーツ男はピクッ……とこめかみを動かす。

 

「この私を塵芥にも等しいと?」


「ああ、すまない? そこは少し訂正させてくれ」


 確実にユニクスの挑発に触発されていたろうスーツ姿の男に、ユニクスはやんわりと笑みを作ってから答え、再び己の訂正を口にした。


「塵芥未満だ」


「ほざけえっ!」


 一瞬で怒りを爆発させたスーツ男は、次の瞬間にはユニクスへと刃を向けていた。

 鋭く……そして速い!


 逸敏な動きとも取れる一撃であったのだが、円月状になっているシャムシールの刃がユニクスの正面でピタリと止まった。


 右手の人差し指と中指の二本で、白羽取りをしていたユニクスにより、シャムシールの刃はアッサリと止まってしまった。


「……な、なにぃっ!」


 まるで超魔術でも見ているかの様な顔だ。

 あるいは見世物小屋でやってるジャグリングとかだろうか?

 ともかく、常識では考えも付かない謎行動を初めて見た様な人間が見せる、唖然とした顔をあからさまに見せていた。


 そんな中、シャムシールの刃を未だに人差し指と中指の間に入れた状態で飄々と口だけを悠然と動かすユニクスがいた。


「これで分かったか? 身の程知らずはお前だ。それとお前にも逮捕状を新しく請求してやろう。婦女暴行だ」


 間違ってはいないけど、お前の場合は暴行されないんじゃ……?

 思わず私はユニクスに物を申したい気持ちで一杯になっていたが、ここでユニクスの話に水を差すのも悪い気がしたので、敢えて口にする事はなかった。


「……く、こっこのっ!」

 

 スーツ姿の男は、そこから必死の形相になって自前のシャムシールを引き抜こうと力をいれたが、刃は一ミリすら動く様子がない。


 奴からすれば、想定外の魔法でも掛けられている……とでも勘違いしたに違いない。

 だからなのか?

 スーツ姿の男は、早々にシャムシールを諦め、即座に剣から手を放すと、


「うぉぉっっ!」


 やや目を血走らせるかの形相で突進し、右ストレートをユニクス目掛けて放つ。

 

 ユニクスは呼吸するかの様な自然さで、当然の様にスーツ男の拳を避けると、


 ……スゥッ


 同時にスーツ男の足元に自分の右足を持ってくる。

 全力で突進していたスーツ男は、勢いそのままにユニクスの真横を突き進み、


 ガッッ!


 直後にユニクスの右足に自分の足を引っ掛けて、盛大にスッ転んだ。

 もう、見事なヘッドスライディング状態だった。


「ふごぁっ!」


 頭から床に激突し、そのまま数メートルばかり滑って行ったスーツ男は、


「な……何なんだよ……お前ら……?」


 そのまま私達へと顔を向き直す物の、未だ立ち上がる事が出来ず、仰向けの状態で口を動かしていた。

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