真相究明の始まり【12】
……まぁ、いいさ。
その、腐った国に住んでいる腐った国民の一人が私であったとしても、
「腐った国民は腐った国民らしく、売られた喧嘩を買うだけだ……」
私はニヤリと好戦的な笑みを色濃く作って、そうと呟いた。
そこから、私はバアルとユニクスの二人を軽く見てから口を動かす。
「……よし、行くか!」
「そうですね。行きましょうか」
私の言葉にバアルはゆっくりと笑みを返し、
「ひと波乱があるかも知れませんが……それを込みにしても楽しみですね。ふふ……リダ様と一緒にいると、退屈しないから楽しいですよねぇ……」
ユニクスは陰鬱な笑みで頷いていた。
いや……ちょっと?
「ユニクス……お前の笑い方だと、どっちが悪役なのか分からないぞ……?」
「良いのですよ……ふふ、大義はこちらにある。まして私は人間でもあり悪魔でもあるのですから」
言い、ユニクスはその笑みを更に濃厚にしていた。
……思えば、今回のパーティーは悪魔二人のパーティーだったな。
バアルは悪魔軍団のナンバーツーだし、ユニクスは悪魔転生によって人間になっている。
そう考えると、どっちが悪役なのか分からない気持ちもする。
……い、いや!
悪魔と言うだけで悪役にするのは偏見だ!
何より、ユニクスではないが、大義はこっちにある!
もう、ウダウダ考えていても仕方ない!
思った私は、そのまま意を決する形で表情を引き締め、建物の中に入っていく。
中は綺麗で広々とした空間が広がっていた。
まぁ、規模で言うのなら大企業クラスだしなぁ……。
正直、私もここがギャング団の巣窟だと言われても、やっぱり疑ってしまう。
正面にある入り口から入り、広いロビーの様な所をズンズンと歩く。
そして、受付のフロントまで進んだ。
「今回はどんなご用件でしょうか?」
にこやかな受付の態度に、私は少しだけ苦笑いをしてしまった。
まぁ……そうだよな?
表向きであったとしても、有名な企業の本社だし。
ロビーで色々と会話をしているスタッフその他の連中は善良な月給取りばかりなのだろうから。
まぁ……だからして、余り騒動に巻き込みたくはなかったんだが、
「あんたの所のトップに逮捕状が出てる。もうじき衛兵の集団がこっちに向かっているだろう。悪い事は言わない。今日の所は早退しとけ」
「……………………はい?」
受付の目がテンになっていた。
うん、そうな?
どう考えても、悪いジョークだ。
間もなくして、口元をヒクヒクさせながらも受付は私に言った。
「すいません……おっしゃる意味がサッパリ分からないのですか?」
予想通り、私の言葉を信じなかった。
仕方ないな……。
「こう言う事だ」
私はトモヨさんから発行して貰った逮捕状を受付に見せる。
流石に封筒から取って、中身を見せる所まではしなかったのだが、
「…………え?」
それでも、少しは納得してくれたらしい。
「そ、それは本物なのですか?」
「偽物だと思うんなら、それはそれで構わないさ? 私はどの道、強制的にお前のボスへと会いに行くだけの話だからな?」
「…………」
受付は真っ青な顔になっていた。
そこから、フロントの裏にある魔導器を手にして見せる。
ここら辺ではポピュラーな連絡手段だ。
言うなれば、インターホンの様な物だな。
魔導器を使って連絡した受付は、
「……少々、お待ちください」
顔を蒼白させたまま、それでも穏和な笑みを作ってから私に答える。
うむ……妙な所で、プロ精神を感じたぞ。
私としても、ここで即座に暴れても良いと言う気持ちでいたのだが、相手が礼儀正しい態度を取っていると言うの、こちら側が一方的に暴れるのは少し戴けない。
それはユニクスやバアルの二人も同じ事を考えていたのだろう。
静かに待つ私を前に、やっぱり同じ様な形で静かに待つと言う態度を取って見せた。
しばらくすると、
「お待たせしました。トウキの治安部隊の方ですか? 取り敢えず、ここでは周囲の迷惑になりますので、奥へどうぞ」
比較的低姿勢を見せる形で一人の男が私達の前にやって来た。
…………うむ。
見た目、ほっそりした体躯だが……違う。
確実に身体を鍛えている。
ほんのり高い魔力も感じられる所から察しても……分かっているな、これは。
「分かった」
私達は、腰の低い態度を見せるスーツ姿の男に頷く形で、建物の奥にある一室へと案内された。
案内された部屋は……実に殺風景な部屋だった。
てっきり応接間の様な部屋に案内されるのかと思ったのだが……見事に予想は外れた。
そもそも、ここ……何をする目的で作られた部屋だと言うのか?
机はおろか、椅子すらもない。




