真相究明の始まり【10】
「よって、私は西側諸国と全面戦争になり兼ねない、今回の問題にどう取り組もうかで悩んでいる」
「私なら、全面戦争は多いに賛成したい所なのですが……しかしながら、それがリダ様の意向なのであれば、私はそれに従います……つまり、です? リダ様は波を荒立てない方法をお探しであると?」
「そう言う事だな……正直、密入国をやっているギャング団だけでも、どうにかしたい所なんだが……」
「ああ、なるほど……西側の連中らがリダ様を狙う暗殺者を中央大陸のトウキに送り込んでいるカラクリはそんな感じでしたか」
困り切った顔になって言う私に、ユニクスは一つの謎が解けてスッキリするかの様な顔になっていた。
そこから、しれっと言う。
「なら、もう答えは出ているじゃないですか? 向こうがコソコソと密入国しているのなら、それを取り締まれば良いだけの事です」
「……何?」
私はキョトンとなった。
それだと、完全な公の場に出てしまう事になってしまうじゃないか。
結果、中央と西側に溝が生まれ兼ねない!
私としては、なるべく穏便に事を済ませたい所なんだがなぁ……?
「つまり、こうです。このギャング団は、西側の密入国を促すと言う事もしているかも知れませんが、他にも叩けば幾らでも埃が出ます」
「……と、言うと?」
「他の理由で検挙する……と言う名目で、このギャング団を潰しましょう。正面突破する形で殴り込んで……どさくさに紛れて壊滅させてしまう訳です」
めちゃくちゃ言うなぁ……。
ハッキリ言って、大義名分が過ぎる話だ。
そうと、思わずぼやきたくなる私がいたのだが、
「早速、トモヨさんにでも話を付けて起きましょう……多分、闇のシンジゲートを操る様なギャング団であるのなら、闇組織の勢力が強くて行政にまで圧力が掛かって衛兵が動けないか、単純にギャング団の組織に戦闘能力の高い存在がいて、衛兵では太刀打ち出来ないかのどちらかでしょうし。どちらの理由であったとしても、冒険者協会・会長の命が掛かっているとなれば、しっかりと大義名分的な方法で逮捕または壊滅させる事が可能だと思いますよ?」
有無を言わせぬ迫力で、私へと訴え掛けて来たユニクスの気迫に、つい根負けしてしまう私がいた。
うぅーむぅ……。
なんか、少し姑息な気持ちもあるのだが……確かに可能かも知れない。
要は、他の理由って事にして置けば、西側といがみ合う事もない。
まず、これが罷り通るのなら、ギャング団を潰すと言う目的が達成出来る上に、波風も立たないで済みそうだ。
そして、このギャング団が……広く貴族達とも繋がりがあり、帝国の政治に対しても何らかの力があったと仮定しても? それと同じか、それ以上に貴族達との親交を深めている……つまるに、顔が効くのが冒険者協会でもある。
そのトップでもある世界冒険者協会の会長となれば、ギャング団に味方するヤツは後で村八分を喰らう可能性だって十分にあるだろう。
裏からの圧力で手を出せないでいたとするのなら、衛兵サイドからすれば渡りに船だ。
こっちもこっちで、密入国者をこれ以上出さずに済む事になれば、新たに流れて来るだろう暗殺者の脅威に悩まされなくて済む。
まさにウインウインの関係となりそうだ。
これ以外の理由……最後にあった『衛兵では太刀打ち出来ないまでに強い存在がいる』と言う理由であるのなら……むしろ、面白いっ!
私的には、この展開が一番ワクワクするねっ!
だって、面白そうだろう?
衛兵が束になっても勝てない相手とか……どんな相手だ?
きっと、私のハートを存分に熱くさせてくれる様な……そんなスゴい相手であるに決まっているっ!
よぉぉぉしっ!
燃えて来たぁっ!
「あはははっ! 良いだろう……ユニクス。中々の妙案だ……私を心から楽しませてくれる、そんな相手がいる事を、まずは願おうか」
答え、私は周囲にいる連中が地味に引いてしまう様な……そんな笑みを色濃く浮かべた。
…………。
……あ、ちゃんと可愛いからな?
そこは勘違いするなよっ!
●○◎○●
朝食を終え、普段着に着替えた私達三人……ユニクスとバアルに私を含めた三人は、トウキの中心街にある大きなビルの前に立っていた。
右手には……トモヨさんから貰った逮捕状入りの封筒が。
そんなトモヨさんは、私が手にしている逮捕状を物凄い勢いで作成させる(正確には周囲にいる衛兵と係員達にやらせていた)と、トウキの中心街エリアで直ちに動ける衛兵をかき集める為に、急いで外へと出て行った。
一応、場所は教えてあるから……多分、後で来るとは思う。
後はアシュアなのだが……帰宅したばかりで、しばらく使っていなかった私の自宅は、部屋に汚れが溜まっていて非常に汚いから、今日は大掃除がしたい……らしい。
そ、そんなに汚いかなぁ……ちょっとへこむんですけど……?




