真相究明の始まり【3】
しばらくして、フリーズした表情のまま……パクパクと、あたかも金魚の魂がバアルに宿ってしまったかの様な感覚で声を絞り出して来る。
「リダ様……これは……一体!?」
震えた声音のまま、愕然と佇んでいたバアルは、間もなく指まで震わせた状態でユニクスを指差す……って、ちょっと待てぇぇぇいっ!
「狼狽えるな! お前は思い切り勘違いしているっ!」
私は遮二無二騒ぐ。
確かに、多少は紛らわしい事をしているのは認めよう!
しかし、私としても言い分がある。
私としても、自分の寝床に半裸の状態でユニクスが忍び込んで来るとは思わなかったんだ!
つまり、不可抗力だと宣言したいっ!
しかし……現状のバアルを見る限りだと、完全に勘違いしまくった状態で、何を言ってもちゃんと納得してくれそうもない。
だから違うんだ!
そもそも、相手は女だぞっ! 半裸で寝てはいるけど、何が起きるって言うんだっ!?
私は心の中で頭を抱えてしまった。
「こ……これは失礼しました……つまり、こうですか? 昨夜はお楽しみでしたね?」
「ちっっっがぁぁぁぁうっっっ!」
完全に動揺しまくっていたバアルは、未だ身体全体を震わせた状態のままとんちんかんな台詞を言って来ると、私は一秒掛けずに怒号を浴びせてやった。
「……ふ、ちゃんと分かってるじゃないか?」
そんな中、ユニクスは穏やかな表情で微笑んで見せる。
バアルが来た事で、半裸状態だったユニクスは布団で身体を隠す様な仕草を見せている。
私の前では痴女顔負けな残念女をやってはいるが、やはりそこはそれ……相手は異性でもあるし、相応の羞恥心はあったのだろう。
……いや、そうなんだけど、そうではなく。
「バアル……相手はユニクスだぞ? 普通に同性だぞ? 同じベットで寝ていたからと言って、どんな間違いが発生すると言うんだ?」
「そ、それを私が言えと? どんな羞恥プレイなのですか!?」
「その考えを、根底から直せと言っているんだっっっ!」
顔を真っ赤にし、派手なリアクションまで見せるバアルへと、私は喉が壊れそうな勢いで喚き声を放って見せた。
本当に……どうして、私の周囲には、こんな変な思考を持つ変人しかいないんだよ……?
心の中で、途方もない脱力感に苛まれていた時だ。
「おい、バアル……一言だけ言って置く」
ユニクスは、明らかな敵意の視線をバアルに向けて言った。
そこから、完全なライバル心むき出しのオーラをこれでもかと言わんばかりに放出しながら叫んだ。
「リダ様は、私のモノだ!」
「お前のじゃないしっっ!」
直後、私は猛然と否定して見せる。
「……ふ。油断した事は認めよう」
いや、だから……認めるなよ。
声も高らかに……堂々とレズ宣言すると言う、恥ずかしくないのか? と大声で罵倒してやりたいユニクスの台詞に、バアルは身体を震わせつつも納得してみせる。
「だが、これで終わったと思うなよっ!」
直後、バーンッ! と言う効果音でもやって来そうな勢いでユニクスへと叫ぶバアルがいた。
何が『これで終わったと思うなよ』だよっっ!
そもそも、始まってもいないだろうがっ!
「お前ら……まとめて爆発したいのか?」
私の目が怒り色に染まりつつあった中、
「じょ、じょ、冗談ですよリダ様! 今、色々とそう言う事を言っても大丈夫な雰囲気と言いますか……空気が形成されていたではありませんかっ!」
「そんな空気なんかないからな? あったとしても吹き飛ばすからな? 比喩的にではなくてリアルな意味でっ!」
ひたすら焦るバアルを前に、私は憤然と声を返して行った。
本当……マジで勘弁して欲しい所だ。
この手の絡みは、ユニクスだけでも勘弁して欲しいと思っていると言うのに……。
「それより、用事はなんだ? もしかして私を起こすだけの理由で、ここまで来たのか?」
「それはそれで私なりに熟慮しておりました……まず、私が優しく揺り動かし……しかし、それでも起きないリダ様へと困りかねた私は、そこでおはようのキスと言う形で熱いベーゼを……って、リダ様? いや、嘘です! 冗談ですから手をこちらに向けないで下さい!」
真剣な表情で、ほんのりと頬を赤くしつつ答えていたバアルは、間もなく私の右手がバアルに標準を合わせた事で顔を青くしてから叫んでいた。
「ぐぬぬぬ……おのれバアル! そんなハレンチな真似をしても良いと思っているのか? リダ様に口付けを許されているのはこの私! ユニクス・ハロウだけなのだからなっ!」
「……って、お前もダメに決まってるだろうがっ!」
声高にレズ発言をかますユニクスに、私は即行で叫んだ。




