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真相究明の始まり【1】

 憶測と懐疑しか飛び交う事がないまま、元来の自宅に戻ると言う選択肢を取った私は、バアルが作成した犯人の可能性があるリストへと一通り目を通した後、自宅の寝室へと向かった。


 早急にリストへと目を通して置いたのは、今後の対策と解決策を素早く練りたい為だ。

  

 まず、危険性のある相手を先に知っておけば、それなりに身構える事が出来る。

 そのリストには味方も入っている(実はユニクスやバアルだけではなく、イリも入っていた)のだが、ここも踏まえて、誰が危険であるのかを客観的に知る必要があったのだ。


 ただ、リストのメンバー数がかなり膨大で……私の頭では一晩で全てのメンバーを把握する事は不可能に近い状態だった。


 仕方がないので、取り分け危険度の高い相手から優先的に頭の中へと強引に捩じ込む様な形で覚える事にした。

 もはや、テスト前日の一夜漬け状態だ。

 取り敢えず、テストに出て来るだろう部分だけを集中的に覚える的な? そんな場当たり的な感じだった。


 学生時代の私は、前に数度ばかり一夜漬けをやった記憶があるのだが……大抵は山を外して、賛嘆な顛末を迎えている。

 何てか……さ? 

 やっぱり、私は運が悪いんだよ……。


 …………。


 一夜漬けした私の散々な思い出はさておいて。

 今回ばかりは、その山が当たってくれる事を祈ろうか。


 こうして夜も更けて行き、寝室に向かうと、


「……なに?」


 ちょっと驚いた。

 寝室が凄まじく綺麗だったのだ。


 特段、前が汚かった訳ではないぞ?

 けれど……何てか、凄く整然としているのかと言えば、やはりお世辞にもそうではなかった。


 おまけに、私は自宅をしばらく開けていた。

 否……しばらくなんて物ではない。


 何せ、学生として転入したのが去年の秋口頃だ。

 そして今は、年をまたいで春を迎えている。

 言うなれば、年越しはおろか年度までまたいでしまった。


 それだけの長い間、完全に放置されていたのだから、絶対に綺麗である筈がない。

 正直、帰宅したらまず最初にやらないと行けないのが、部屋の掃除だと思っていた程だ。


 しかし、リストへと目を通す作業が余りにも膨大で……結局、夜更け過ぎまで掛かってしまった。

 当然、掃除などやっている訳もなく……今夜ばかりはほこりまみれの残念な寝室とベットで一夜を明かす事になるんだろうなぁ……と、嘆息混じりにぼやいていた。


 所がどうだろう?

 何と! 寝室は、私がこの部屋を離れた以前よりも綺麗になっているではないかっ!?


「バアルのヤツが掃除をしたんだろうか?」


 もしそうであるのならば……ヤツは何者なのだろうか?

 大悪魔として、人数で言うのなら万を越える悪魔軍団と言うか……蝿軍団を保持していると言うのに、その実、自分は自分で立派な執事としての能力を潤沢じゅんだくに合わせ持っていると言う事になる。


 ともすればアシュアがやったのかも知れないし、あるいは二人の部下達が召喚されて、せっせと清掃をしてくれたのかも知れないが……経緯はさて置き、凄まじい事をして来るなっ!


「後で、軽くお礼だけでも言っておこう」

 

 思い、私は呟くと……そのままベットの中に入った。

 

 シーツや布団も完璧だった。

 やばい……あいつらでホテルとか経営すれば、結構な稼ぎになるんじゃないだろうか?


 けど、悪魔が経営するホテルって言うのも、それはそれでどうなのだろう?


 ……いや、それは偏見か。


 どちらにせよ、バアル達のお陰で快眠にありつける事が出来たのは、とても有りがたい事だった。

 疲れていた事もあり、私は数分もしない内に深い睡魔へと引き込まれて行く。


 普段であるのなら、ここから睡眠学技術により、自己鍛練が始まるのだが……今回はパスして置いた。

 取り敢えず、今は心身共に休んで置いた方が適切だと、私は判断したのだ。


 この睡眠学スキルは、眠っている間に起きた出来事(夢の世界)で行った結果が、そのまま現実の世界にも継続して反映すると言う、実に反則めいた特殊スキルではあるのだが……難点として、夢で行ったマイナスの出来事が現実の身体にも一部反映してしまう。


 具体例として……まず、筋肉痛が起きる。

 

 睡眠学スキルで過酷なトレーニングを積むと、確かに現実でも身体が鍛えられるのだが……しっかりと鍛えた証とも言える筋肉痛はやって来る。

 そればかりか、疲労等も現実世界に引き継がれてしまう為、やり過ぎると寝ている筈なのに朝から疲労困憊と言う、珍妙な現象が本当に起こってしまうのだ。

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