【5】
素朴な疑問もそこそこに。
結局、不戦勝が続いてしまった私は、二次予選のライバルとなるだろう人物を軽く探して見る。
……うむ。
うむぅ……。
やめにした。
一応、クラス別に仕切られてる予選会場を軽く見て回ったのだが、どこを見てもそれらしきヤツは……おや?
模擬刀を鮮やかに振り回す少年。
パラスだ。
いつもは無口で隣の席にただ座ってるだけの寡黙スペシャルな少年だったのだが、実はそれだけではなかったらしい。
対戦相手に大した攻撃をさせる事なく、一方的な展開で相手を圧倒していた。
へぇ………。
やるじゃないか。
思った私は、勝者の告知を受けて予選用の闘技場からやって来たパラスに声を掛けて見る事にした。
「よっ! 結構やるな!」
「……相手が弱いだけだ」
私なりに可愛い笑顔で言った筈だが、パラスはそうと一言呟くと、素っ気なくスタスタ歩いて行ってしまった。
毎度思うが、もう少し女の子を大事にしろよ!
てか、顔は良いんだから、愛想良くすればモテるぞ! マジで!
てか、モテなくても良いから、せめて会長には優しくしろよ! こっちは友達が少ないんだ! そんな態度取られたら傷つくじゃないか!
他にも言ってやりたい事があったが、この辺で許してやろう。
ありがたく思えよ!
とにもかくにも、だ。
ルミとパラスは共に全勝で一次を一位通過して行った。
二人共、私が思ったより強かった。
特にルミ姫様があそこまで魔法が使えるのは予想外とも言える。
物理攻撃を炎壁で防いだり、逆に陽炎魔法で相手をノックアウトしたりで、少し驚いた。
てか、フレアはやりすぎだろ。
危うく、相手死ぬトコだったぞ!
何はともあれ、こんな感じで私達の一次予選は終わりを告げた。
●○◎○●
一次予選が終わった所で、お昼休みとなる。
例によって、学食の戦いを終え、その戦果を経た私とルミの二人が、中庭のベンチでお昼休みと洒落込んでいる。
程なくして、快活な声を吐き出すフラウもやって来た。
「やっほ~い? 二人共、一次予選は通過した?」
「うん、私もリダも一位通過だよ~」
「おぉ~っ! リダは本気出せば反則負け以外では負けないと思ったけど、ルミもなんだ。凄い、凄い!」
反則負けってなんだよ。
まぁ、最初からツッコミ入れてやりたくなったが、敢えて入れないで置こう。
「そう言うフラウはどうだったんだ? まさか予選落ちって事はないだろうが」
「ふふ~ん! この常勝無敗の魔法少女ことフラウ・フーリさんがクラスの一次予選ごときで負ける筈がないじゃないですか! 楽勝で全勝ですよ!」
フラウは無い胸をさも誇り高く張っていた。
ペッタン子じゃなければ、良い絵面だった。
「じゃあ、ここまでは三人して順調ってトコだな」
「そうなります。ただルミさんはリダと当たるかも知れないので、そこはなんか、ご愁傷様と言うか」
いや、すごーく可哀想な顔して言うなよ!
あたし泣いちゃうだろ!
「そうなの! だから、リダと当たりません様にと百回位言ってから二次抽選受けようと思って!」
「百回も言うのかよ!」
どんだけ私が嫌いなんだ、ルミ姫様はっっ!
かなり本気で言ってたルミに、思わず私も叫んでしまった。
けど……まぁ、そうだな。
仲間で潰し会うのは嫌だもんな。
「おお! いいね! 私も学内予選でリダと当たりそうなら、それやろう! リダが急にお腹壊して戦えません様に! を百回念じる!」
「もうそれ、ただの呪いだろうが!」
私は喚く事しか出来なかった。
完全に二人のイジられ役になりつつ、食事を終えて二次予選が始まる。
再抽選の結果、ルミの祈りが再び届いてしまう。
「やった! またリダと別のグループだ! やっぱり神様はいるんだ!」
ああ、そうですか!
そんなに私と当たりたくないかねぇ……私だって、ちゃんと手加減はするし、ルミが負けている様なら、勝ちを譲ってやっても良いのに。
いや、でも、八百長は良くないか。
そんな事を考えつつ、二次予選が始まる。
相も変わらず、私は不戦勝が続いた。
もはや、ただの悪魔になってた。
少しは戦わせてくれよ……もう。
そのまま四戦連続で不戦勝となり、二位以上が確定してしまう。
なんだろうな、この腑に落ちない勝ち方は。
この調子で五戦目も不戦勝か?
そう思っていた。
だが、そうはならなかった。




