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犯人探しの始まり【17】

 ともかく……これら諸々の関係もあり、私の居住地はアーバネ郊外にある住宅街の一軒家にある。


 オーソドックスな平屋の自宅だ。

 予定では二階建てで、地下一階が建設される話だったらしいが……私が二階を断った。

 

 理由は簡単。

 一人で住む家に、二階は要らないだろう!

 

 但し、地下に関しては少し必要性があるかも知れないので、一部認めた上で建設している。

 

 現状での使い道は、目下、ただの物置でしかないが……この自宅に住む事となった時に、試して見たい魔法が結構あってな?

 ついでに言うと、この当時には『睡眠学』スキルを所持していなかったので、私が個人の能力を高めるトレーニングの場所が欲しかったんだ。


 ……今となっては無用の長物でしかないが。


 …………。


 そこはさて置き、だ?


「リダ様、お茶が入りました」


 答えてから、リビングの室内に入って来たのは、フォーマルなジャケット姿に着替えたバアルだった。

 外見は少年染みた姿を維持しているが、正装と表現しても誇張ではない、ビシッとした格好をしていると、中々どうして様になる。


 気品のある若き執事って感じだ。

 

「ああ、ありがとう……頂くとしようか」


 清楚な微笑みと同時に、テーブルへと紅茶を置いたバアルに軽く返事をしてから、ティーカップに口を付ける。


 ……うまい。


「誰が淹れたんだ? 魔法でも掛かってるかの様な逸品だな」


「私が丹精込めて淹れました。もちろん魔法など使っておりませんからご安心を。掛けているのは手塩と愛情だけですから」


 素直に誉めた私に、バアルは柔らかい笑顔を満面に浮かべて答えた。

 結構な数の女がコロッと逝きそうな顔だった。


 ……く。

 私とした事が。

 一瞬、バアルの笑みに見惚れてしまったじゃないか。


 コイツは、私の着替えを盗撮する様な変態だと言うのにっ!


「バアル様。言葉遊びが上手で、結構な事ですね」


 私の中に、珍妙な葛藤が生まれていた時、ややトゲのある声音が飛び込んで来た。

 声の主は、少しばかり気に入らないと言う顔で、こちら側を凝視している。

 見方によっては睨んでいる風にも見て取れた。


「どうしたアシュア? 私が何か間違いでも言ったか?」

 

「……間違いではありませんが、曲解され兼ねない台詞を口にしている事は事実かと?」


「そうか……以後、注意しよう」


 少しへそ曲がりな態度で口を動かすアシュアに、バアルは爽やかな笑みで軽く彼女の言葉を交わす様に返答して見せた。

 何てか……大人の対応だった。

 妙に感情的な一面を除かせるアシュアへと、飽くまでも理性を持って静かに対応しているバアル。

 その会話は、まるで大人と子供の会話を見ているかの様だ。


「バアルって……結構な切れ者だったのか?」


 私は意外な顔を作ってから答えた。


 すると、


「はぅわぁっ!」


 またもや四つん這いになって、床に崩れた。

 

 ……これで三度目だぞ?

 いい加減、このネタは飽きたんだけどなぁ……?


「リ、リダ様ぁっ! あなたは何度、私の主であるバアル様を辱しめれば気が済むのですかっ!」


 前言撤回だ。

 ちっとも理性的じゃなかった。


「分かった分かった……そこは謝るから。お茶は素直に美味しいと思ったし、バアルの愛情も私にとっては甘露だったよ」


「ほ、本当ですかっ! リダさまっ!?」


 正直、馬鹿馬鹿しさが先を行ってたから、適当に話を会わせる形で言った訳なんだが……どう言う訳か? 四つん這いから一瞬で跳ね上がって来ては、凛々とした瞳を見せて私へと訴え掛けて来るバアルがいた。


「い、行けませんリダ様! 確かにバアル様を中傷するなとは申しましたが、寵愛ちょうあいせよとは申しておりません! これは、起こしてはならない恥ずべき行為です!」


 直後、更にいきり立ったアシュアが、私へと強烈な非難を浴びせて来る。

 ……どうすれば良いと言うんだよ。


「どの道、私はバアルに愛しさも切なさも心強さも感じてない。安心しておけ」


「はぅわぁっ!」


 バアルは再び四つん這いになった。


 …………。


 もう良いや、このままにして置こう。


「茶番は良い。それよりも本題だ」


 四つん這いになって嘆くバアルと、それを必死になって慰めるアシュアの二人を前に、私はいつになく真剣な眼差しを送った。


 これによって、空気が変わる。

 正直、もっと早く変わって欲しかったよ!


「……そうですね。まず、資料については……先程のと同じ物を、もう一度こちらで御用意致します」


 表情が変わったバアルは、神妙な面持ちで言うと、


 スゥゥ……


 風の様な音と同時に、テーブルへと数枚の用紙が出現した。

 

 どうでも良いが、さっきと同じって事は、


「私の着替えている映像も紛れ込んでいる……なんて事はないだろうな?」


 怪訝な目で私はバアルに答えた。

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