犯人探しの始まり【16】
その後……。
「な、なんだ! いきなり爆発したぞっ!」
「怪我人はいないか!? 爆発に巻き込まれた人はっ!?」
「衛兵を呼べ! 救急隊も要請しないとっっ!」
街のど真ん中で大爆発が起きた為、周囲の連中が騒然となって騒ぎ始めた。
……うぁ。
やっちまったなぁっ!
ちなみに、爆破したのはバアルだけで、周囲に怪我人はいなかった。
……と、思う!
とにもかくにも……私は、爆破によって卒倒したバアルを担ぎ、急いで発動させたアシュアの空間転移魔法で緊急逃走を試みた。
元来であるのなら、空間転移魔法は禁忌の魔法ではあるのだが……緊急事態だ!
今回は無かった事にしよう!
……てか、そうしてくれ……百マールあげるから……。
騒然とする商店街の裏通りを、私達は結果的に逃げ出す形で瞬間移動して行くのだが……後日談程度に加えて置こう。
●○◎○●
トウキの街からすると、北端と述べるのが正しいのかな?
ただ、トウキって街は大きいから、街の北端と表現したとしても、それで街が終わる訳ではない。
飽くまでも行政区が違うと言うだけで、大きな意味……例えば首都圏と言う意味で述べるのなら、まだまだ街の中心地寄りと述べるのが適当だろうか。
ここらの分別は人によって違うからな?……トウキの中心区域から見て外れであるのなら、それは町外れだと言う人もいるし、トウキとその周辺にある街の全てを視野に入れれば、まだトウキの都内だから外れと言う程でもない……と考える者もいる。
どちらにせよ、それで立地条件が変わるわけでもなし……私的に言うのなら、どちらでも良い様な気もする。
とにもかくにも。
私が本来住む場所……と言うか、会長だった私が自宅として住んでいたのは、このトウキの北側に面したエリア、アーバネだった。
これは冒険者協会が、本部をアーバネに置いているからだ。
元々はユウラー地区と言う、トウキでも中心区域にあるエリアに本拠地を構えていたのだが、どう言う訳か? アーバネに本部が移ったりもする。
話によると、老朽化した本部を新しくするより、新築に移転した方が安かったから……との事。
維持費も何だかんだで年間に直すと安くなるらしい。
どうでも良いが、経費を安くする為に本部変えるとか……大丈夫なのか? 冒険者協会?
会長本人が危惧してしまうと言う、アホな悩みはさて置いて。
「まさか、あんな騒ぎになるとは思わなかった……」
こんな事を、ほやき半分に言っていた私は、久方ぶりに帰宅した自宅のリビングにあるソファに寄り掛かりながらぼやきを入れた。
……あれから、私達は急いで空間転移魔法を駆使して、取り敢えずその場を離れた。
転移先は特に決めていなかったと言う事もあり、最初は学園の近所に転移して見せる。
さっきいた商店街の裏路地から一キロ程度の距離にある場所だったのだが、それでも何か騒ぎになっている事が分かるレベルだった。
と、取り敢えず……この件は、後で怪我人が出ていないかどうかを調べる必要があるかも知れないな。
私は黙視する限りでは、死傷者は当然として、傷を負った人間など一人もいなかったんだが……万が一と言う事もある。
後回しの事案になりそうだが、私がちゃんと生きていられたら、そこらの調査もちゃんと行おうと思う。
結果はどうあれ、騒ぎを作ってしまった張本人である事に代わりはない為、そこはかとなく騒ぎになっている方向に向かって頭を下げた後、再び空間転移を行う。
もう既に一回やってるからな。
こうなったら、一回も二回も変わらない!
もはや開き直っていた私は、アシュアに頼んでもう一回だけ空間転移魔法を発動させてもらう。
こうしてやって来た先が、私の自宅があるアーバネだった。
学園がある場所は、トウキでも南寄りのエリアだから、都内の地図的に言うと真逆に近い場所でもあった。
しかし、やっぱり便利だよなぁ……。
都内の端から端まで、文字通り一瞬だ。
この魔法が禁忌じゃなかったのなら、とても便利な交通手段になるんじゃないだろうか?
……と、感嘆の声音を胸中で吐き出しつつも、私は未だに目覚めないバアルを担ぎながらも自宅に戻って来た。
視点を都内からアーバネに変えても、市街地エリアから離れた住宅街の一角に、私の自宅はある。
但し、ここからだと協会本部は歩いて十分程度だ。
本部も本部で、他国に在籍する協会の首脳陣が飛竜等や飛行船で直接来れる様な区画を作っている。
これはユウラーに本部があった時には出来ない施設だ。
あっちは地価が高いし……そもそも、そこまでの面積を確保する事が出来なかったからなぁ……。
まぁ、アーバネだってそこまで土地が余っている訳ではないんだけど、地域住民が優しいと言うか? 本部移転に然程の反対もなく歓迎され、土地交渉も他の地域と比べてスムーズだったらしい。
アーバネ地区の皆様に感謝だ!




