犯人探しの始まり【15】
コイツらは、本気でコントをしに来ただけ何じゃないかと、この時の私は思わずにはいられなかった。
しかし……あれだ。
呆れてしまう気持ちがある反面……何処か、こうぅ……和む気持ちもある。
これまでがこれまでだったからなぁ……ともかく、良い事が何もない状態がしばらく続いたから、今の様な下らないコントでも、気持ちが軽くなっていく気がしなくもない。
「全く……愉快な二人アピールをしてくれるのは良いが、そんな事ばかりやっていると、本来ある権威が泣くぞ?」
「本来ある権威……ですか?」
私の問い掛けにバアルはオウム返しに答え、そして言った。
「そんな物があるんですかねぇ……?」
おい……。
何処までがボケで、どこまでが本気なんだよ!?
もしかしたら、コイツらは生粋の天然ボケコンビなんじゃないかと、マジで思える様になって来た。
もう良いや。
ともかく話を聞こうか。
「それで? 私に何かを話したいんだろう?」
内心で……荒んだ私の心を労る為に、敢えてピエロを演じていると思っていたが、実は素だったかも知れないと言う、驚愕の事実を耳にしたくなかった私は、早々に話の内容を聞く事にする。
「ああ、そうでしたね。リダ様の言葉が余りにも私の心を抉る物ですから、すっかり忘れておりました」
そこまでの事はしてないからなっ!
取り敢えず、コイツはかなり打たれ弱い精神の持ち主である事だけは分かった。
「まず、リダ様が殺されてしまうと言う水晶の情報を元に、我々が使い魔を駆使して多角面からの情報を入手して来ました」
言うと、私に数枚の紙切れを手渡した。
これは……写真かな?
魔力を使って映像化した物をプリントしたのだろう絵と表現するのが妥当なのだろうが……クオリティーが極めて高い。
もはや、絵と言うよりも写真だ。
ここまで精密に描くとは……流石は大悪魔だな!
思わぬ所で舌を巻く私がいる中……。
「この絵は、リダ様が見た水晶の映像を考慮した物を元に、可能性として視点役をやるだろう存在のリストです。もちろん、リダ様達が名簿を元にリストアップした人間等も入ってますよ」
バアルはドヤ顔で私に説明していた。
正直、ドヤ顔されると少しイラッと来る部分もあるが、実際に自慢しても良い出来映えだ。
一体、どんな方法を使ったのかは分からないが、学園関係者や学園に所属している生徒の他にも、トウキ内でなんらかの関連スタッフと思われる者の顔写真まである。
これは普通に凄いぞっ!
思わず感心して唸り声を上げる私がいた時、
「……っ!?」
私の眉が大きく捩れた。
同時に強烈な衝撃が、私の脳天を直撃する。
「……これは?」
ワナワナと震える手が、私の動揺の様を大きく反映しているだろう。
その姿を見たバアルは、鋭い視線を見せてからニヒルに笑った。
「そうです……飽くまでも可能性ではあるのですが、ゼロではないのです」
可能性はゼロではない?
……お前、何を根拠にこんな事を言ってるんだ?
私が信じられないを顔にしている中……それでもバアルはシリアスな笑みを濃密に作りながら、
「リダ様は人が良すぎるのです。もっと人を疑う必要と言う物を……」
淡々と冷徹さを保ちながら答えていたバアルだったが、私が一枚の写真を見せた途端に言葉を止めた。
正確に言うのなら、言葉を失った。
そんな私が見せた一枚の写真。
それは、私の生着替えだった。
「え? ん? 何これ? どうして私の秘蔵の一枚が、そんな所に紛れ込んでいるんだ?」
「こっちが聞きたいわっっっっ!」
ポカンとなった顔のまま、徐に首を傾げていたバアルに、私は憤然となって大きな怒鳴りを上げた!
「バカなの? アホなの? ってか、人の何を見てるの? ふざけるのも大概にしとけよっっ!」
変に精神が弱いだけじゃなくて、人の着替えを盗撮するとか……もう、爆破しておいても良いんじゃないだろうか!?
「バアル様? さしもの私も……これは少しだけ意見を口にさせて頂きたいのですが……?」
他方、私の着替え写真を見たアシュアも、ギロッ! っと激しい嫌悪と憎悪のベクトルを爆発的に増大させてからバアルに答えて行く。
「こ、これはだ? リダ様の危険がないかと常に保護する為、私の使い魔を四方八方に散らしていた結果……たまたま! ほ、本当にたまたま映像が写ってしまったから、私としても処分するのはもったいない……もとい、処理に困ってしまった為、最終的に保存したのですよ!」
ドォォォォォォォンッッッ!
もはや言い訳にしても酷い内容だったバアルの返事に、私は超炎熱爆破魔法をお見舞いしてやった。
くぅぉんの、エロ悪魔っっ!




