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犯人探しの始まり【12】

「私が知っている情報はこれだけだ……残念な事にな」


 実際の所は、この他にも映像の視点を持っている犯人リストを作成していたりもするが、そこらに関しては口にするのを控えた。

 まだまだ確定要素が低い……否、皆無と言っても良い内容だ。


 そんな、不確定要素満載な情報をイリに教えた所で、むしろ話をややこしくしてしまう可能性だってある。

 それか、余りに不確定過ぎて笑われるかのどっちかだ。


 何にせよ、そっちについては、もう少し情報を収集し、それをしっかり煮詰めた上で話してからでも遅くはないと思った。


「……そうか。それは本当に残念だな」


 私の言葉を信じたか否かの判断は出来なかったが、それでもイリは素直に応じる形を取った。

 しばらくして、イリは席を立つ。

 同時に、キイロとミドリの二人も席を立って、イリの後を追う形で歩いて行く。


「何だよ? もう帰るのか?」


「ああ……ここに来た目的は、純粋に情報が欲しかっただけだからな? その目的は十分果たした」


「そうか……」


 私的に言うのなら、全然目的を達成しているとは思えないレベルではあったんだが……それでもイリは何かを掴んだのだろう。

 少なくとも、そんな顔をしていた。


 ただ、イリなりに掴んだ物も、まだ確信を得るには至らなかったのか?

 それとも別の理由があったのか?

 今の私には、その心情を上手に読み取る事は出来なかったが……どうやら、イリなりの考えを、この場で明かすつもりはないらしい。


 イリは、キイロとミドリの二人を引き連れる形で席を立つと、そのまま酒場のマスターにお代を支払ってから、早々に酒場を去って行った。


「バイバイ、リダさん。ルミやルゥも、またね!」


「次は、もっと気軽に世間話出来たら嬉しいかもです」


 イリの後を追う形で歩くキイロとミドリの二人が、愛嬌たっぷりに答えて私に手を振って来る。

 私も、それなりの愛嬌を見せて手を振り返した。


 ほぼ同時に、ルミとルゥの二人も席を立った。


「さて……それじゃ、私達もおいとましましょうかね」


 軽く立ち上がってからルミが答えると、


「そうだね。ここにはイリさんと会う為だけに来ただけだし」

 

 ワンテンポ置いてからルゥも席から立ち上がって頷いた。


「リダはどうする? 帰るなら、一緒に帰ろう?」


「そうですね。帰り道は一緒なのですから、折角ですしね?」


 席を立って間もなく、何気ない口調で私へと促して来たルミに、ルゥも賛同する形で私へと言って来る。

 私は苦笑のまま、首を横に振った。


「悪い……今日は、もう少しここでチビチビと飲んでから帰りたいんだ」


「えぇぇ……リダ、飲酒は二十歳になってからだよ? トウキの法律じゃ、違法だよ?」


 ルミはいつになく真面目な事を言って来た。

 そう言うお前は、そのトウキで悪酔いして、この店で超炎熱爆破魔法フレインダムドをぶっ放したじゃないかよ……?


「リダさん。それは校則違反です。せめてソフトドリンクにして下さい」


 直後、ルゥも不満を顔に出してから私を注意して来る。

 何てか……風紀委員に注意されている不良みたいな図になってしまった。


 実際、ルゥはそう言う気質がある様な気がする。

 私的には意外で仕方ないよ。

 だって……あのじゃじゃ馬姫から生まれて来ているのが、ルゥなんだぞ?

 もう少し、奔放な性格になっても良い気がするんだけどなぁ……?


「ああ、ちゃんとアルコールが入ってないのを飲む事にするから。もう少し一人で居させてくれないか?」


 敢えて反論する事もなく、私はルゥの言葉へと柔軟に応対して見せた。

 ここで、下手に突っ掛かった所で、良い方向に話が進むとは思えないからな。


 ……ま、酒は飲むけどなっ!


 余談だが、本当の私はれっきとした成人だ。

 ちゃんと、二十歳越えているって所だけは、ここにも付け加えて置こう。


 そこはさて置き。


「……少し怪しいのですが……今回は、リダさんを信用する事にしましょうか」


 私の言葉を耳にしたルゥは、かなり怪訝な表情を見せつつも……しかし、答えて間もなく笑みを作ってから手を振った。

 ルミも合わせる形で手を振ってみせる。

 

「じゃあ、私はこれで」


 ルゥはペコリと一礼しながら答え、


「良い? リダ? ちゃんと学園に戻るんだよ? 変な事とか、絶対に考えちゃダメだからね!」


 ルミは再度、私に訴え掛ける形で私に言い聞かせ様としていた。

 

 どうやら、ルミも本気で私の事を心配してくれてる見たいだな。

 この姫様は、いつも楽天的で……良く言えば前向きなんだが、ちょっと危険予知が下手くそ過ぎる。


 しかし、そんなルミですら、現状の私はかなり気になって仕方ないと言わんばかりの態度を切実に取っていた。

 ……それだけ、必死になっていると言う事だろう。


 心配させて……ごめんな。


 私は、そっ……と、ルミに心の中でのみ謝った。

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