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犯人探しの始まり【9】

 これからは、もっとしっかりと冷静に判断してから、慎重に行動を起こす事にしよう。

 私が殺されるだけなら、まだ納得出来る部分もある。

 正確に言うのなら、これだって理不尽極まってはいるんだけど……そうじゃない。


 もし、私が犯人の手によって意識を乗っ取られてしまい……そして、自分の手でルミやルゥ……キイロやミドリ、場合によってはフラウやユニクスまで手に掛けてしまったのなら?

 私は……一生では足りないのではないかと思えるばかりの、強く重い罪を背負う事になるだろう。


 そんな悲劇は、絶対に回避しなければならない!

 例え、どんな結末になろうと、だ!


 しかし、その反面で思う事がある。


 これが二つ目の謎だ。


「どうして私は、犯人に襲われないんだろうな?」


 目的は私。

 だからこそ、私はこれが不思議でならない。


 もう、目的は分かっている。


 私の暗殺だ。

 そして、犯人は……既に、この近くにまで来ている。

 

 これが、まだ他の街にいて、こちらに向かっている途中だと言うのなら、私も理解する事が出来る。


 けど、違う

 間違いなく、もう確定レベルで近くに潜んでいる筈だと言うのに、犯人は私へと何のアプローチを出して来ていないのだ。


 そもそも、意識を乗っ取る……等と言う、狡猾であり有能とも表現出来る超能力を保持しているとするのなら、堂々と私の面前にやって来たって大丈夫なのではないだろうか?


「実は、俺がお前を敢えて遠ざけていたのは、そこにあるんだよ」


「……どう言う事だよ?」


「…………」


 どうにも話が見えない私がいた所で、イリは無言になる。

 そこから、かなり悩む様な顔になって……しばらく頭を回転させて行く様な仕草を取った。


 散々、悩みに悩みあぐねた所で、イリはポツリと答えた。


「これはまだ確定じゃない。だから、怒るなよ? 俺としても、憶測で物を言うのは嫌だったから、口に出して良いのかどうかで悩んでいたからな?」


「ああ……わかった。予測で構わないよ? それで、どう言う考えなのか聞きたいんだが?」


「お前は、もう相手の術に嵌まっている可能性がある……って、事だ」


「……は?」


 ポカンとなった。

 はは……冗談にしても笑えないね!


「私の意識は私が保持しているぞ?」


「……と、思い込んでいたら、どうだと思う?」


 思い込む……だと?


「相手の能力が、本当の意味で判然としている訳ではないから、必ずそうなっているとは言わない。けれど、相手の能力が催眠術の類いだったとすれば、どうなると思う? お前は自分の意識を失っている間……つまり、完全なる無意識の間だけ操られ……そのまま、自分の記憶には全く残らない」


 よって、自分でも気付いていないけど、実は無意識にとんでもない事を、もう既にやらかしている……かも知れないって事かっ!?


 一気に寒気がして来た!


 そして、イリが私を避けていた決定打を耳にして、私も激しく同意するしかなかった。

 何と言っても、当の本人である私自身だって、絶対にしていないと断言出来ないんだからな。


 要はこうだ!


 私は、もう既に犯人と出会っているのだが、その記憶がない。

 厳密に言うと、消されている。


 そして、私はもう犯人の催眠に掛かっており……そこで私がとんでもない行動を取っていたとしても、それは記憶に残らないと言うだけで、実際は色々やっている!?


 ……かも知れない!


 当然、これの防護策は皆無に近い。

 そもそも、催眠と決まった訳ではないし、催眠を受けているのかどうかも定かではない。


 対処したくとも……私の意識はハッキリしている……と、思う。

 つまり、曖昧過ぎて本当に暗示の様な物を受けているのかすら分からないし、分かりようもないっ!


 なんて事だっ!


 怖い……怖すぎるぞっ!


「俺的には、場合によってはお前を拘束しても良いかと思ってた位だったんだが……ルミが凄く反対してな」


「そりゃそうだよっ! だって、まだ本当にそうと、ハッキリ決まった訳じゃないものっ! そうかも知れないって言う理由だけで……リダを不自由にさせるなんて……私は断固反対!」


 ありのままを淡々と口にするイリがいた時、ルミが猛然と感情的になって叫んでみせた。


 こう言うのを見ると、本当にルミはお人好しだと思えてしまう。

 ……でも、私もルミが逆の立場になっていたら反対しただろう。


 そう考えると、私も大概なお人好しなのかも知れない。


「それでね? リダさんが催眠に掛かっているかどうかを皆で調べて……その結果、リダさんに催眠がまだ掛かってないか、そもそも能力的に違う物だって言うのが分かったら、リダさんに言うつもりをしてたんだよ」


 キイロは、話をまとめる形で私へとそう答えた。

 なるほど……これは、私的に納得するしかないや。


 私は乾いた笑いを、心の中で吐き出しつつ……キイロの言葉に頷くのだった。

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