犯人探しの始まり【3】
しかし、そうなると新入生と言う存在も少し気になる。
犯人探しとは全く関係のない話しではあるんだが……これまで中庭に来ていたルミが、いきなり来なくなったと言うのも意外だったし、その行動に至るだけの何かがあるのだろう。
そして、そこに新入生とやらが深く関わっているんじゃないかと予測する。
……うーむぅ。
大丈夫だとは思うんだが、少し心配ではあるな。
ここらはユニクスの過剰な心配性が、私にも移ってしまった様な節もある気がする。
つまるに、杞憂だとは思う。
けれど、ルミは明らかに私へと秘密にしているんじゃないだろうか?……等と勘ぐってしまいたくなる部分もあった。
これは自惚れなのかも知れないが、ルミが何の脈絡もなく、突然私達から離れて行くとは考えられなかった。
仮にそうであったとしても、何らかの前置きや宣言程度の事はすると思える。
しかし、現状のルミは私達に何も言う事なく、気付けば毎日の様に食事をしていた中庭にも来なくなってしまった。
これはどう言う事だろう?
もしかしたら、ルミには何か大きな問題が発生していたのではないだろうか?
私に余計な迷惑を掛ける事を避ける為、敢えてそれを口にしない。
……結果、今の様な前触れなく、いきなり疎遠な態度を取る様になってしまったのではなかろうか?
もしそうであったのなら、私としてはルミがとても心配だ。
本来であるのなら、真っ先に私へと相談して来るルミが……それでもして来ないと言うのだから、これは相当な問題だと予測してしまう。
何せ、国家レベルでの危機ですら、真っ先に私へと助けを呼ぶ様なお姫様だからな?
そう言うルミだっただけに……余計、妙な心配をしてしまう私がいた。
……とは言え、だ?
ルミに何らかのトラブルが発生している様には見えない。
……ルミはちゃんと元気にルゥと二人で学園にも来ているし、それら一連の生活風景から見ても、困っている様子は微塵もない。
むしろ、一年の時よりも充実してるんじゃないかって勢いだ。
そうなると、やっぱり私の考えている心配は、単なる杞憂であるのだろう。
反面……杞憂であるのなら、どうしてルミの行動が変わってしまったのか?
それらを証明する物がなくなってしまう。
……否、違うな。
あるとするのなら、やっぱり新入生の存在だろう。
新入生は、ルミとどんな関係を持っている存在だと言うのだろうか?
確実に言える事は、ルミにとって特別な存在であると言う事だ。
こんな事は、ルミ個人の問題だから、余り深入りしては行けない問題だとは思うんだけど……やっぱり気になっちゃうんだよなぁ……。
……と、言う訳で。
「これから、ルミの身辺調査を行おうじゃないか」
私は顔を引き締めて答えた。
そんな私の正面には、呆れ顔になっていたフラウと、愛想笑いで何とか笑みを保持していた物の……やっぱり何処と無く反論したいのだろうユニクスの二人が立っていた。
放課後を迎え、周囲の生徒達が学園の門を抜けて行く中、一緒に教室から出て来たフラウと、そのタイミングを見計らって下駄箱辺りで合流したユニクスの二人は、
「あのさぁ……ルミにだって個人のプライバシーってのがあるんだよ?」
嘆息しか口から出て来ないフラウが、眉間に皺を寄せて私へと答えて行き、
「これに付いては……残念ながら私もフラウと同じ意見です。やはり、ルミにはルミなりのプライベートと言う物が存在しますし……少なからず、今の所は私達の方も犯人を探しだしてリダ様の安全を確保しなければならないのですから……」
ユニクスがフラウの言葉に賛同する形で頷いた。
まぁ、二人の言いたい事はごもっともではある。
これは、言うなれば生死を賭けた戦いなのだ。
犯人が近未来の内に(正確な時間は不明だが、確実に時間制限がある)一定の手順を踏んで私を殺すか、その前に私達が犯人の真相を暴いて事件を未然に防ぐか。
現状では、この二つに一つとなる。
今の所は、犯人は元より……その動機や殺害に至るまでの経緯まで、一切合切不明だ。
分かる事と言えば……このまま行けば、ほぼ確実に私は殺害される。
残された猶予だって、実にあやふやだ。
実は、まだ結構な猶予が存在しているかも知れないが……逆に全くない事さえも予期出来る。
こんな状態なのだ。
今は、素直に犯人探しをした方が得策であるに決まっている。
「ルミには悪いけど……生死に関わる様な、切迫した状態には見えないし、今はやっぱりリダが一番危険と言うか、最優先にしないと行けないって、私は思うんだよね」
「フラウの言う通り! ルミさんについては、この一件が終わった後にでも、ゆっくり探りを入れれば良いと思います」
フラウとユニクスは、あたかもシンクロでもしてるかの様な勢いで私へと言って来た。




