新学期の始まり【14】
けれど、もしかしたら……何か分かるかも知れない。
そして、ユニクスは言う。
「私達は、ここに相手がやって来ると言うアドバンテージがある。これを最大級に活用しない手はない」
「……どう言う事?」
ユニクスの言葉に、フラウは未だ怪訝な表情を崩す事なく口を動かしていた。
「つまり、映像の場所を特定する事で、そこがリダ様の死に場所になる事が判明する! 今から花束と葬祭式場に連絡すると言う手間も含め、事前に手筈を踏まえて置く必要が……」
ドォォォォォォォンッッ!
ユニクスの台詞が、最後まで終わるのを待つより早く、私の爆発魔法が発動していた。
ったく!
一日に何回やらせれば気が済むんだ!
この変人わっっ!
「アホは滅んだ。ともかく、状況と言う物を確認すると言う意味での下見だな。何か妙案が生まれるかも知れないし」
「妙案ねぇ……」
キリリッ! っと、顔を引き締めて答えた私に、フラウは少しだけ考える様な仕草を取った。
いい加減慣れてしまったのか? ユニクスが爆発されている部分にツッコミはなかった。
……否、正確に言うのなら少し違う。
「いやだなぁ~リダ様! この私がそんな事を本気で言うと思っておりますか? 純然なるジョークですよジョーク!」
その数十秒後には復活を遂げていたユニクス。
簡素に言うのなら、ツッコミを入れるより先に完全復活を遂げてしまったのだ。
……くそぅ。
本当に、最近のユニクスは地味に強くなっているな。
一応、味方である為に頼もしくはあるんだが……この調子で力関係が逆転し、いつしか私の手に負えない時が来た時……奴は全力で私へと己の分身を残そうとせんが為に、実力行使をして来そうで怖い!
「……? どうしたのリダ?」
「いや……なんでもない」
地味に嫌な想像をしていたら、無意識に顔が青くなっていたのだろう。
不思議そうな顔で尋ねて来たフラウに、私は苦笑する事しか出来なかった。
そんな中、
「ふむ……ここは……」
ちょっと眉を捻り、神妙な顔付きになっていたユニクス。
そこから、軽く周囲を何度も見回し……再び考える。
何か分かったんだろうか?
……ん?
あっっ!
「分かった! ここは、映像で見た場所だ!」
言うなり、私はポケットから水晶を取り出す。
必要になるかどうかは分からなかったけど、一応あれば役に立つかと思った私は、ポケットの中にアインの水晶球を入れいた。
そこから、水晶に働きかけ……再び、映像を映し出して見せる。
「間違いない……ここだ」
「……やっぱり」
水晶の映像と見比べて、今立っている場所である事を再認識した私の声音に、ユニクスもコクリと頷いて見せた。
「……で? それが分かった事で、どんな進展があるのかな? まさか、そこに花束を置きたいとか言い出すんじゃないでしょうね?」
なんて縁起でもない事をぬかすんだお前わっ!
多分、ブラックジョークを踏まえた皮肉だったのだろうが、半眼になったフラウが私やユニクスへと答えると、
「ああ! そうだった! 早速花屋に向かわないとっっ!」
ユニクスはハッとなって、即座に行動しようとしたから、
ドォォォォォォォンッッ!
取り敢えず爆破してやった。
本当に本当に懲りないヤツだなっっ!
「だから、冗談ですってばぁぁぁっ!」
ユニクスは半べそのまま気絶していた。
どうやら、流石に二発目はダメージを被った模様だ。
「……相変わらず、ユニクスお姉には厳しいよね」
「ユニクスのアホが、ちゃんと真面目にやれば私だってこんな態度は取らないんだけどな」
冷や汗混じりで苦笑するフラウに、私はしれっと正論を叩き込んでやった。
そんな……見事に丸焦げ状態のまま、目をバッテンにしているユニクスを尻目に、周囲を軽く見る私がいた。
……うむぅ。
「……なるほど」
「何か分かったの?」
「いや、なぁ~んも」
「……だよね」
フラウは、やはり半眼になって答えた。
実際、実況見分が可能である筈がないのは、フラウだって聞くまでもない事だと分かっている。
しかし、私が何かを閃いた感じで頷いた為、何らかのヒントを得たと思ったのだろう。
「結局、収穫はなし……か」
分かってはいたけど、やっぱりそうかと……納得半分で口を尖らせるフラウがいた時、
「いや、収穫はあったぞ」
私は自信を込めて言う。
「何があったと言うの? 分かった事なんか、ここでリダが殺されるかも知れないって事だけなんじゃ……」
「そこが重要なんだ」
「……どう重要なの?」
「場所が分かっているのなら、色々と出来るだろう? 例えばトラップとかな?」
答えた私は、ニッと笑みを作った。
他方のフラウは少しだけ不服そうな顔だ。
「それ……卑怯過ぎない?」
「生きるか死ぬかの状況で、卑怯だ何だと言っていられるか。それに、トラップと言っても相手を貶める為の物を設置する訳じゃない」
「どう言う事よ?」
「決まってるだろう? こっちが有利になる魔法を埋め込んで置くのさ」
答え、私は軽く親指を立てた。




