新学期の始まり【12】
「それで、どんな事が分かったんだ?」
「そうですね……まず、リダ様の服装です」
「私の服装?」
「そうです。リダ様の服装は制服……そして冬服でした。ここから予測すると、リダ様は夏服へと衣替えする前に、この映像の未来が起こるか……逆に夏服から冬服へと戻ってから以降に発生すると言う事が予測出来ます」
「……なるほど」
冷静に、淡々と説明して行くユニクスに、私は短く頷きだけを返した。
実際に言われると……確かにそうなるなと納得出来る。
錯乱気味である事と、何の予告もなく映像だけ見せられていた為、注意深く見ると言う事をしなかったのが原因ではあるんだけど、そこを差し引いても、やっぱりユニクスはしっかりと冷静に物事を判断する事出来るな……と、感心せざる得ない。
冷静に考えるのなら『映像が残っているのなら』それを元に、色々な物が見えて来る。
当然、映像を元に『どの程度先の未来なのか』と言う事だって、ある程度までなら予測可能なのだ。
うむぅ……。
「やっぱりユニクスは頼りになるな」
笑みを強め、私は素直にユニクスを誉めて見せた。
「お誉めに預かり光栄です。この調子で、リダ様の愛情と劣情も勝ち取ります!」
……前言撤回。
「やっぱり、お前はただのレズで良いや」
「そんなっっ!」
地味に呆れ眼になっていた私に、ユニクスはガーンッ! って顔になりながら、半ベソになっていた。
折角、人が感心したと言うのに、すぐに呆れへと転換させて来るのだから……ある意味で驚きだ。
「それで? 何点か分かったと言う以上は、他にも分かった事があったのか?」
「はい、もちろんです。次に分かった事は……場所です」
「場所?」
「そうですね。映像の背景を見る限り……どうやら夕方辺りの時間だと予測する事が出来るのですが、夕暮れである為、映像には背景の様子が目で判断する事が出来ました……その上で行くと、恐らく公園です」
ユニクスはズバリ言って来る。
……公園、か。
「私の予測からすると、ここからすぐ近くにある大きい公園ではないかと思うのです」
「ああ、やっぱりそこか」
何となくだけど、私もユニクスと同じ事を考えていた。
前にアインのヤツと話し合いをする時に、この公園へと誘った事がある。
場合によっては戦闘になるかも知れないからな。
そうと予測する時は、なんだかんだで周囲の迷惑を考慮すると……その公園は妥当でもある。
まさか、そこが私の墓場予告になる場所とはなぁ……。
別段、この公園に良い思い出がある訳でもないし……むしろ、悪い思い出と言うか、あまり良い思い出がない場所ではあるのだが、
「またしても、この公園に嫌な思い出が増えてしまうのか……」
「リダ様……恐らく、この映像がそのままになってしまったのであれば、もはや思い出と言う枠を逸していると思われます」
苦い顔になって言う私に、ユニクスは素朴ながらも正論を口にして来た。
実際に、額面通りの結果になってしまったのなら、確かに私は死んでしまうのだから、思い出もへったくれもないだろう。
それはそれでどうなんだろうなぁ……。
「ったく……お先真っ暗な話だ」
ややネガティブな顔になって、重々しい吐息を吐き出す私がいた所で、ユニクスは真剣な顔を作ってから答えた。
「大丈夫です。私が絶対にそうさせませんから!」
根拠なんてないだろうけど……それでも信用したくなる様な熱意ある視線を向けて答えた。
なんて真っ直ぐな瞳なんだろう?
これが神からの天啓を得て勇者になった者の姿は、やはり一味違った。
だからだろうか?
「そうだな……まだ、希望だけは捨てないでおこう」
私も自然と笑みを作る事が出来た。
本当……ユニクスと言う仲間がいてくれた事を、心から神様に感謝したい気持ちだよ。
何となく、心が暖かくなった気持ちになる私がいた所で、
「では、続けて気になったポイントを言います。まず、視点です」
真剣その物な状態を一切崩す事なく私へと答える。
「……視点?」
どう言う事だ?
ちょっとだけ不思議な気持ちになった。
まぁ、まずは話を聞こうか。
「この映像は、リダ様を殺した犯人の視点から映されているのではないかと、私は考えました」
「ほうほう、可能性はあるわな?」
けれど、それで何が分かると言うのだろうか?
地味に要領が掴めない私がいた時、ユニクスは言った。
「この視点は、リダ様をやや頭上から眺める角度になっております……つまり、身長がリダ様よりも高い。ここから予測するに、相手が人間であったと仮定するのであれば、男性もしくは女性でも身長の高い者である事が分かります」
「……そうか、そうなればある程度の特定が可能になる訳か」
凄いなユニクス……。
たった一回の映像を見ただけで、そこまで考え付くとは。
もしかしたらユニクスは、冒険者ではなく事件を担当する衛兵とかになった方が、世の為になるかも知れない。




