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新学期の始まり【5】

 ルゥの学年が二学年だったのは、本人の希望だったそうだ。

 ……普通は、自分の希望で学年を選べるなんて話はないんだがなぁ……。


 ここらに関しては、ルゥが極度の人見知りで、今もルミといつも一緒にいる(寮もルミとルームシェアしてる)形を取っているから、完全にルミありきの状態と述べても良いだろう。

 ある意味で、親離れが出来てない子だった。


 これだけを聞くと、何とも頼りない子に聞こえてしまうのだが、ルミいわく『とってもしっかりしている子』と、胸まで張って自慢している。


 ここは、親バカ的な贔屓目があるのかも知れないのだが……色々としっかりしている部分もある。

 そこはそれ……ルミよりも王族らしさを持つ品性豊かなお姫様だ。

 コミュ障だと言うだけで、他はしっかりとしているのは、私も認めたい。


 ……そう言う事にして置こう。


「ルゥも、もう少し対人とのコミュニケーションをしっかり取れる様にしないと、立派なニイガ女王にはなれないと思うんだよねぇ……」


 ルミは苦笑して言う。

 私的に言うのなら、お前がそれを言うか? と言いたくなる部分もある。


 少なくとも、立派なニイガ女王になれないと言う台詞には、少し物申したい気持ちで一杯になってしまう。


 だが、確かに間違った事は言ってない。


 ルミの場合は無駄に開放的で、相手をいぶかしがる部分が少ないと言うか……もう少し警戒心を持った方が良いと思いたくなるまでの世間知らずなお姫様なのだが、ルゥはこの対極に位置する訳だから……うーん。


 私的に言うのなら、二人で足して二で割ったらちょうど良くなる様な気がする。


 どの道、コミュ障な女王ってのも……なぁ。


 未来は、ちゃんと会話が出来る女王になっている事を願おう。


 ガラッ!


 ……と、そんな事を考えていた時、教室の引き戸が開く。

 開けたのは、このクラスの担任だ。


 クラスが再編成された事も相まって、担任の先生も変更されている。

 前回はオッサンだったが、今回は二十代の女性だった。

 ……うむぅ。

 なんか、顔のお絵描きが地味に上手な先生だなぁ……。


 私的には、少し色々と顔の書き方を教えて貰いたい所なんだが。


 ……と、冒険者にとっては、限りなく不必要な部分に感銘を受ける私がいる。

 

 そうこうしている内に、これまで自由に教室で雑談していた生徒達が、それぞれ自分の席へと戻っていた。


 同時にホームルームが開始される。


「はい、みんな席に着いたね。まずは自己紹介。今日から二年一組の担当になるリーナ・マリルと言います。よろしくお願いします」


 答えた担任……リーナ先生はペコリと頭を下げた。


 生徒を相手にしても、ちゃんと礼儀正しいその姿は、何となくだが好感が持てる先生でもあった。


「続けて紹介しますね。隣にいる方は、今日から転入する形でこの学園の生徒になる、ルゥ・トールブリッジ・ニイガさん。セカンドネームとサードネームを聞いて分かるかも知れないけれど、ルミさんの親戚です。仲良くしてあげて下さいね」


 程なくして、教壇の隣に立っていたルゥを手で示してから、教室にいる生徒達へとルゥを紹介して見せた。

 間もなく、仄かな微笑みを作って、ルゥを促す。


「では、ルゥさんの方からも自己紹介をお願いしてもよろしいですか?」


「……は、はいっ!」


 リーナ先生に促され、ルゥも頷いて見せる。

 しかし、顔はかなり強張っており、緊張の度合いが見ている私にも伝わって来た。


 ……この程度の注目で、そこまで緊張していたら……その内、ニイガ国民の前で演説する時に、緊張で貧血を起こしそうな気がする。


 そんな事を、ふと考えつつもルゥの自己紹介を見据えていた。


「ルゥ・トールブリッジ・ニイガと申します……そ、その……こう言った場所で学ぶ経験は今の今まで一回もなく……何かと、皆様のご不便をおかけするかも知れませんが、精一杯尽力を尽くしますので、どうかイジメないで下さい」


 言ってから、ペコッと頭を下げた。

 顔は耳まで真っ赤だった。

 ……最後の台詞はどうかと思うが、無難な自己紹介と表現する事が出来た。


「はい、ありがとうございます。では、ルゥさんはルミさんの隣が空いているので、そちらの席に座って下さい」


 リーナ先生は笑みで言う。

 多分、これは予測なのだが、最初からルミの隣をルゥが予約していたんじゃないかな……なんて思えた。

 こんな調子で、本当に親離れが出来るのか……地味に心配になる光景でもあった。


 そこから、クラス内にいる生徒が一人一人の自己紹介を軽くして行った。

 まぁ、クラスが変わったからな?

 顔ぶれもかなり変わった。


 自己紹介は、その個人と言う物をアピールする事の出来る、数少ないチャンスでもある。

 中には、ウケを狙って大きく外す恥ずかしい存在もいるが……まぁ、その内に良い思い出として変換されるだろう。


 ……多分。

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