表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
231/1397

新学期の始まり【4】

「あの水晶は、私にとって幼馴染みに当たる親友からの遺品でな? 言ってみれば形見の様な物なんだ」


「ふぅ~ん。だからユニクスお姉にとっては邪悪な水晶になるんだね」


「って、それで納得出来るお前の思考もどうかしてると思うんだが……?」


 相も変わらず、平然と納得していたフラウに、私の胸中では珍妙なフラストレーションが増加の一途を辿る事になっていた。


「ともかく……あの水晶なんだが、実に不思議な現象が起きたんだ」


「不思議? 稀少金属ミスリルより頑丈な水晶の時点で、もう不思議な水晶だって言うのに?」


「……そうな。そこは私も不思議だと思う……でも、それよりもっと不思議な現象が起こったんだ」


「へぇ……どんな事が起こったの?」


 フラウは、少しだけ瞳を輝かせて尋ねて来た。

 なんだろう?……完全に相談相手を間違えたって顔に書いてある気がした。


 正直、言うのに少し躊躇したが……ここまで言っておいて、やっぱり言わないと答える訳にも行かないだろう。


「水晶に映像が浮き出て来てさ……私が誰かと戦うシーンが、生々しく映されてた」


「戦う? リダって、誰かと喧嘩でもしたの?」


「……いや、まだしてない……ってか、する理由すら分からない……分からないが、何故か戦闘になってて、どうしてか……」


 そこまで答えた私は、更に表情を大きく強張らせた。


「……死ぬんだ」


「……え?」


 ポカンとした顔になった。

 顔では言っている。


「リダが死ぬとか、世界が滅んでも有り得ないよ」


「口に出して言うしっ!」


 私はガーンッ! って顔になった。

 もう、さも当然って表情をアリアリと出して……しかもコロコロと笑って断言してたよ!


「本当なんだ……私が知っているのは、私が殺されてしまう結果だけしか知らない。これだって、ある意味で仮定に過ぎないから、結果と表現するのはいささか語弊があるんだけどさ」


「……なるほど。それで朝から難しい顔になっていたのか」


 納得したフラウは……


 ポンッ!


 ……と、私の肩を軽く叩いてから柔和な笑みを作って見せてから口を開く。


「安心しなよ、リダ。どうしてそんな事になるのかは分からないけど、私も全力でリダが死なない様に頑張るから」


「……っ!」


 私はちょっと面食らった。

 程なくして、瞳からじんわりと涙が出そうになった。


 ……くそ、不覚だっ!

 まさか、フラウに不意撃ちで優しい言葉を投げられるとはっ!


「そ、そうだな……その時は頼りにしてるよ」


「ええええっ!」


 頼もしいクラスメートの言葉に、少しだけ心が暖かくなった私がいた時……そのクラスメートが思いきり驚いた顔になっていた。


 ……な、なんだよ?

 今の私は、別におかしな台詞なんか言ってない筈だが?


「リ、リダが……そんな、気弱な台詞を吐くなんてっ!」


「私をなんだと思ってるんだよっ!」


 どうやら、常に強気な人間だと思われていたのだろうフラウの言葉に、私は思わずがなり声を吐き出してしまった。


 そんな時だった。


「あ、リダとフラウ。おはよ~」


 快活な声音とセットで陽気な笑みをロイヤルに作って来たお姫様がやって来た。

 

「なんだ? 重役出勤か? もう少しで遅刻になる所だったぞ?」

 

 答え、私はそれとなく教室に設置されていた時計を見る。

 時刻は、ホームルーム五分前だった。


 私的に言うのなら、遅刻寸前も良い所だった。


「あはは! 実は、うっかり一年の教室に行っちゃってね~。今日から二年生だって事、すっかり忘れてたんだよねぇ~っ!」


 ルミは、気恥ずかしい顔になって言う。

 実際、本当に恥ずかしい話だった。

 しかしながら、私は思うのだ。


「そうか……相変わらずの平常運転だな」


 それがルミちゃんクォリティーであると。


「平常運転って! しかも人の冗談にアッサリ納得しちゃうし!」


 すると、ルミはプンスカ怒って見せる。

 直後、フラウが小首を傾げてから答えた。


「え? ルミなら普通にやりそうだし……違うの?」


「違いますぅっ! そんな恥ずかしい事、本当にする筈がないじゃないのっ!」


 ルミなら本当にやりかねないから、私もフラウも納得したんだと思うんだけどなぁ……。


「じゃあ、何があって遅刻寸前まで教室に来なかったんだ?」


「ルゥが、最後まで離してくれなくて……」


「……ああ、そう言う事か」


 苦笑いして言うルミに、私はすぐに納得を示した。


 そう言えば、ルミの娘に当たるルゥが、このクラスに転入する事に決まったらしい。

 本来の年齢は13歳ではあるのだが、話によると既にニイガのお城で高等教育を受けており、世間で言う飛び級クラスの学力を保持しているらしい。


 平たく言えば、天才なのだとか?


 そこで、ニイガ王家が上手く根回しをする事で、二学年からの転入をさせる手続きを取ったのだ。

 学園側も、王家のお墨付きを貰っている編入手続きだっただけに、特に怪しむ事なく編入試験を受けさせたらしいな。


 試験は筆記だけらしかったのだが、全教科で満点に限りなく近い好成績だった……との事。

 仮に学園内での試験を受けたら首席も狙えるレベルだった事もあり……更にニイガ王家の援助金も増額されると言う事もあって、学園内では満場一致で編入を決めたんだそうだ。 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ