【2】
「あら、誰かと思えば、ドジのフラウじゃない」
せめて、わざと負けるとかは止めにしておこうかな……と、考えを改めようとしていた時、少し遠くの方から声がした。
……? 誰?
「………あ」
声を耳にした瞬間、フラウが目を下に落とす。
……何だ? 一体?
「そう言えば、あなたも今年から冒アカGPに参加するんだったわねぇ……ふふふ」
何だよ、感じ悪いなぁ……。
「だったら何だと言うんだ、お姉さんよ」
やたら態度がデカいお姉さんだ。
胸もデカいけど、態度はそれ以上だ。
「別に。ただ、もし奇跡的に本戦に来ても惨めにやられるだけなら、いっそ予選で負けてもいいのかな、とね?」
本当に感じ悪いな!
デカいのはその胸だけにしとけよ!
「わ、私は、つ……強くなりました」
そこでフラウは強い意思をこめて、態度と胸が無駄にデッカイ女に向かって言ってみせた。
でも、なんかいつものフラウらしくない。
もっとこぅ……無駄に自信があってだな?
だけど、やたら弱気に見える。
こんな一面があった事に私はむしろ驚きだ。
「あらあら。強がりだけは一人前ねぇ」
「ほ、本当です! 二年前の私と一緒にしないで下さい」
「そう? でも、ドジで泣き虫の貴女が、まさか私にそんな口を効くなんてねぇ……あはは! おかしいわ」
やたら滑稽とばかりに大笑い。
当然かも知れないが、目は笑っていない。
完全なる嘲りの目だ。
「……おい」
私は思わず声を掛けた。
最初は黙ってみていようかで迷ったけど、やっぱりだめだ。
だって、だ?
今の私にとってフラウは仲の良い友達だったからだ。
「何あなた? さっきから随分と態度が大きいわね?」
お前に言われたくないよ!
「あんたとフラウに何があったのか知らないけど、その言い方はあんまりだろ? フラウに謝れよ」
「謝る? わたしが?」
胸と態度ばっかり大きい女は、私の言葉を聞いて大袈裟に驚いてみせた。
「あははは! 面白い冗談ね! フラウの友達なの? ねぇ、私の名前知らないの? 身の程知らずも甚だしいわ!」
知るか!
てか、身の程知らずは、間違いなくお前だ! 乳デカ女!
「まぁ、いいわ。どうせフラウが魔法少女としての腕を上げていたとしても、私にとっては虫以下でしかないわね」
そう答えると、私の方に顔を向ける。
そしてニィ……と好戦的な笑みを向けて言う。
「もちろん、あなたもね」
かっちぃぃぃぃぃん!
私の頭の中で何かが切れた!
くぅおんのぉ!
お前は! 誰に向かってそんな口利いてるんだ!
もう、あたしゃ頭に血がドドーン! と昇った勢いそのままに、速攻で超炎熱爆破魔法をぶっぱなしてやろうかと思ったんだけど、フラウに止められた。
そうこうしてる内に、乳デカ女は勝手に愉快そうに笑ってどこかに行ってしまう。
後に残ったのは最高の不快と屈辱感だけだった。
「すいませんリダ。今のは私の一つ上の先輩で……うぉわ!」
申し訳なさそうな顔して言っていたフラウだったが、その言葉は途中で止まってしまった。
多分、怒りのオーラ全開だったからだろう。
まぁ、悪い。
けどまぁ……流石にアレはねぇ。
「気が変わった」
ポツリと私は言う。
「………え?」
フラウは不思議そうな顔になった。
でも、口元が少しだけヒクヒクしてた。
きっと、次の私の言わんとする台詞に大体の検討がついたのだろう。
「あのクソアマ張っ倒すまでは、絶対に負けない!」
そんで、絶対に泣かせてやる!
「ふ、ふふふ………」
「やばいね、リダ、本気で怒ってる」
他方、ルミが顔を蒼白にしてフラウに言っていた。
フラウも蒼白だった。
そこから、フラウは言った。
「リダ、せめて殺すのはナシですよ!」
●○◎○●
こうして始まった予選会。
まずは、クラス予選から始まる。
全員参加の関係もあって、これが結構な数の予選会になる。
だからなのか、クラス予選は本戦が開催される学園祭の一ヶ月も前に始まるのだった。
まずは、学園長からの挨拶等々。
つまるに開会式が始まり、組み合わせ抽選会が始まる。
「いきなりリダに当たりません様に、リダに当たりません様に………」
まるで呪文の様に念じながら、抽選するルミ。
その甲斐があったのか?
いきなり最初から私と当たる事はなかった。
一次予選はクラス内予選だった。
よって、同じクラスのルミは私と当たる可能性があった。
一方のフラウは隣のクラスだった為、現時点では当たる事はない。
但し、クラス予選を突破した次の学年予選では当たるので、どの道本戦を目指すのであれば、私との対戦があるかも知れない。
まぁ、そこは可能性の問題だな。




