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新学期の始まり【1】

 見ていて清々しいまでに綺麗な太陽が地上から上空へと上がって行く。

 今日も新しい朝がやって来た。


「うむ。実に春めいた、麗らかな朝だな」


 その日、少しだけ早起きした私は、普段より早めに制服を着て、そこはかとなくナチュラルに顔へとお絵描きをした後、室内にある窓の外を軽く眺めていた。


 トウキにも四季がある。

 比較的温暖な地域ではあるのだが、実は春夏秋冬が存在し、夏は暑く冬は寒い。

 ただ、完全なメリハリがある訳ではないと言うか……そこまで寒暖の差が激しくない。


 だから、若干四季の風情に欠ける部分もあるのだが……しかし、それでも四季を実感出来る程度の変化はある為、春の息吹が到来して来た事を、暦を見るまでもなく実感する事が可能だった。


「良い季節になって来たな」


 ほんのり暖かい、穏やかな朝の風景を軽く見据えつつ、私は目を細めた。


 今日は入学式。

 私にとっては始業式でもあり、本日から正式に進級して二学年になる事を意味している。


 制服の胸ポケットに付けているバッチも一年生の物から二年生へと変わった。

 けれど、それ以外は根本的に変わらないんだよな。


 余談だが、私達の学年にはその学年を意味するカラーがある。

 例えば、私達の学年は赤だ。


 ブレザーにスカートと言う制服なのだが、首元にある蝶ネクタイの色やスカートの色などが私達の学年カラーである赤を主体とした色調になっているのだ。


 この他にも、上履きの爪先つまさき部分や、ジャージの色なんかが赤い色を使用しており、遠くから見てもその学年だけはすぐに分かる様な仕組みになっていた。


 この学年カラーだが……実は進級と同時に、学年カラーも自動的に進級するシステムになっているのだ。


 例えば、全学年……つまり、一年の時は一年生を意味する色が赤だったのだが、進級して二学年になると、今度は二学年を意味する色へと変更される。


 これまで二学年を意味していた色は三学年に、三学年を意味していた色は新入生にそれぞれ変更され、学年を意味する色は、こうしてローテーションで回って行く事になるのだ。


 元は、学年が進級するたびに、学年カラーへと変更するシステムを取っていたのだが……それだと、学年が進級する度に新しい物を購入しないと行けなくなってしまう為、無駄な出費を学生が支払う事になってしまう。

 ここらを考慮し、学年カラーも進級するシステムへと変更された訳だな。


 そこらの関係もあり、新しく変更されているのは学年を示すバッジだけと言う、少し寂しい状態になっていたりもする。

 別にそれはそれで構わないのだが……これだけだと、二年生に進級した実感が沸かないと言うか……薄い気もする。


 何はともあれ、だ。


「この学園に来てから、もう半年も経つのか……」


 窓の光景を軽く見据えつつ、私は独りごちた。

 気付けば、冒険者協会で会長をしていた時を懐かしんでしまうまでの時間が経過してしまった。


 本当は、すぐに会長職へと戻る予定だったんだがなぁ。

 ……まさか、進級してしまうとは。


 そう考えると、地味に何をやっているんだろう……と、考えてしまう自分もいる。


 ふと、机に飾っていた水晶球へと視線を変えた。


 知ってる人は知ってるかも知れないが、この水晶球はアインが私にくれた遺品の様な物だ。

 

 この中にはダイニングメッセージとなるだろう手紙と、今も形見代わりに嵌め込まれている指輪が封入されていた。


 そんな水晶だったのだが……思えば、もの凄く頑丈だ。


 それと言うのも……いつぞや、怒りそのままに超炎熱爆破魔法フレインダムドで、この部屋を半壊させてしまった時があったのだが、その時ですら水晶球には傷一つ付いていなかった。


 他の物は、見事に爆破されてしまい、塵芥状態になってしまったと言うのに、だ?


「そう考えると、メチャクチャ頑丈だよなぁ……これ」


 思いつつも、机に飾っていた水晶を手に取ってみせた。

 今日も水晶は朝日の光を浴びて、綺麗に光っていた。


「……うむぅ」


 特に悩む必要がある訳ではない……ないが、ちょっとだけ不思議でもある。

 この水晶は、どうしてこんなに頑丈なのだろう?


 通常の水晶であれば、うっかり地面に落としただけでヒビが入る危険性がある。

 所が、どうだろう?

 この水晶は、超魔法の直撃を喰らってもビクともしない。


 確かに、この水晶はアインが私へと最期のメッセージを残した手紙や、私に渡したかったのだろうアクセサリーが封入してあったのだから、相応の頑強さを持ち合わせている必要があったのだとは思う。


 アインの想いの数だけ、水晶の耐久性が強かった……そう思える。


 けど、私は思う。

 本当にそれだけの為に、ここまでの堅牢さを保持しているのだろうか?

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