こうして実技試験は鬼門となった【24】
どうやら、何か吹っ切れた様な感じだった。
再び笑顔が戻ったメイは、その快活な笑みを絶やすこと無く声を出す。
「さて、お姉ちゃんにも会えたし。そろそろ帰るね?」
言い、メイは軽く手を振った。
私もそれに会わせて手を振り返す。
見れば、周囲のみんなも笑顔でメイに手を振り返していた。
「ああ……気をつけて帰るんだぞ?」
「あはっ! 大丈夫! もう、子供じゃないんだから」
「それもそうだな!」
メイの言葉に、私も笑みで返した。
成長したメイを襲うバカは……むしろ、そいつの身体を案じたいまでに不幸な事になるだろう。
そう考えたら……まぁ、確かにメイの言葉が正しいのかも知れない。
滑稽な話だが、言い得て妙だ……そんな事を思ってしまった。
「メイちゃん、またね! 次は入学式で会いましょう?」
そこで、フラウが友愛の気持ちを込めて口を動かして来た。
巨人の里の時に思ったが、何だかんだで年下の面倒見が良かったりするフラウ。
私的なイメージだと、どうしてもユニクスの妹って感覚があったんだが……実はそうでもなかったりするんだよな。
「はいっ! フラウ先輩! 私もここの寮に引っ越して来るので、その時は仲良くして下さい!」
メイは礼儀正しく声を返していた。
「私もメイさんを全力で助けるから、困った時があればいつでも相談に乗るよ? 気兼ね無く言ってね」
ワンテンポ置いて、ルミが親愛の気持ちを込めてメイに答えると、
「あ……わ、私も助けられたら……そ、その……微力かもですが、助けたいと思います!」
近くにいたルゥがすかさず、ルミの言葉に乗っかる形でメイへと答えた。
「ありがとうございます! 本当、お姉ちゃんの周りにいる方はみんな素敵ですね! 学園生活がもう楽しみになっちゃいましたっ!」
朗らかに返答したメイは、実際に今から直ぐにでも寮へと引っ越したい位の気持ちで返答した。
少なからずあった、新天地での生活も、これで少しは緩和されたかも知れない。
……うむ、良かった良かった!
「メイさんはリダ様の妹みたいな存在らしいですから、私も全力でサポートさせて頂きます……なので、時々でも良いから、私の気持ちをリダ様にお伝え出来たら……その時は」
最後にユニクスが頬をポッと赤らめて……って、コラコラッ!
「なに? 最後の最後で、また爆発したいの? そう言う性癖の持ち主なの?」
「ち、ちちち違いますっ!……あ、でも……最近、すこぉ~しだけ、あの爆発がクセに……」
ドォォォォォンッッ!
モジモジと恥ずかしそうな顔をして、本当に恥ずかしい台詞をほざいていたユニクスは、間もなく爆発した。
「あああっ! これが新境地の快感っ!」
「もう、お前は黙っておけっっ!」
本気で疲れるからっ!
「……えぇと、お姉ちゃんって、そう言う趣味の人だったの?」
「違うからな! 断じて違うからな! 私は普通だ! 恋愛対象だって男だけだからな! 他は爆破対象にしかなってないっ!」
「そうかぁ……残念。お姉ちゃんが……ソッチの人なら、私も……ねぇ」
「何だ? 爆発したかったのか?」
「そ、そそそそっ! そうじゃないからっ!」
メイは全力で否定すると、逃げる様にその場から去って行った。
「じゃあねっ! また!」
最後だけ、地味に気になる台詞と態度を見せていたが……きっと大丈夫である事を祈りたい。
……てか、頼むからそうであってくれっ!
何にせよ、メイは爽やかな笑みを作りながら、学園の校門を抜けて行くのだった。
……かくして、私の地味に長い一日は終わりを迎えて行く。
「……さて、来年度はどんな事があるのかねぇ」
来るべき新学期はもうすぐだ。
私は、もうすぐやって来るだろう後輩達の事を軽く考えつつ……寮に戻り、いつものメンバー達と楽しくカードゲーム等をして、その日を終えて行くのだった。
編末オマケ短編-了-
リダ三編を最後まで読んで頂き、誠にありがとうございます。
地味に長くなってしまいましたが、これにて編末オマケ短編は終了になります。
次ページより、第四編がスタートします。
再び学園編と言う形ですね。
この四編では、イリ本編(第三編)と完全にシンクロさせる形のストーリー(リダが主人公の一人称ストーリーと、イリ主人公の多角面一人称及び三人称ストーリーと言う住み分けをさせる予定)になっているので、良かったら読んで頂けると幸いです。
ブクマとか付けてくれたらやる気にも繋がるので、良かったらお願います!




