こうして実技試験は鬼門となった【20】
「私を変えたのは、他でもないあなただよ? リダ・ドーンテンさん」
……へ!?
朗らかな笑みを作って答えたメイ。
思わず、私は驚いてしまい、ポカンとした顔になってしまう。
……刹那、
ドカァァッッ!
「ぶぼばぇっっ」
またも、恥ずかしい悲鳴を意味不明に上げてしまう私がいた。
つい、呆気に取られてしまった私がいた瞬間、強烈な蹴りを私の腹へと突き刺さるかの勢いで放って来た。
ポカンとなり、うっかり隙だらけになってしまった私は、成す術なくモロに喰らってしまう。
「がはっっ!」
口から、少しだけ見たくない物が吐き出されそうになる……と言うか、胃液が少し逆流して来た。
やべぇ……マジで強ぇぇ。
評価は、もう出ていると見て良い。
今回の特待生の中で、文句なしに実技テストは首位と見て良い。
よって、試験はこれで終了と述べても良いレベルだ。
測定の必要はないのだから。
……そう。
後は、私が笑って『あはは! いやぁ……負けたよ、強いね!』と降参すれば良いだけだった。
それが大人の対応と言う物だろう。
現状で、私が大人気ない態度を取って、本気を出す方がどうかしている。
どうかしていると思うが……でも、だめだ。
「ふふふ……あはははっ!」
腹部を押さえ、よろめく私へと更に追い打ちを掛けて来たメイを前に、私は攻撃をスルりとかわしてから、大きく笑った。
「…………」
メイの顔色が変わる。
しばらくしてから、ポツリと答えた。
「やっぱり、リダお姉ちゃんじゃない……その笑い方……つまり、本気って意味でしょ?」
ギックゥゥッッ!
「ち、違うぞ! わ、私はこの学園に転入して来た、ただの学生で……」
「……と、言う事にして起きたいのね? 分かった分かった」
あたふたする私に、そこでメイは嘆息してから言う。
今度は不意打ちしてこなかった。
……多分、心理作戦での攻撃で私にダメージを入れても、それは自分の実力ではないと悟ったのだろう。
その心意気や良し!
やっぱり、メイちゃんは心身共に成長しているみたいだ!
「その辺の事は、後で聞くから……今は集中して欲しいかな? 私は、お姉ちゃんを目標にして頑張って来た訳だし」
「……そうなのか?」
「うん、そうなの」
ニッコリ、素直に頷いた。
そして、真剣な顔になる。
「じゃ……再開だよ? 本気で来てくれるんでしょう?」
「ああ……もちろんだ」
メイの言葉に私は頷いた。
次の瞬間、私達は同時に動く。
今度は、私も攻撃を仕掛けた。
互いに突進している為、目にも止まらない早さで急接近すると、すかさずメイの腹部へと流れる様に滑り込み、そのまま肘をぶつけようとする。
……が、まるで柳の様にしなやかな動きで私の肘をかわすと、逆に自分の肘を私の後頭部に叩きつけようとして来た。
まるで、呼吸でもしているかの様に、自然な動きで……滑らかな動きだった。
つい、口元が緩む。
頭で考えるより、身体が自然とそうしている……そんな動きに、つい嬉しくなってしまう。
流石は拳聖。
ガッッッ!
頭上に降り降ろされた肘を、私は素早く両手でガードする。
……そして。
暴風の刃!
密かに頭の中で紡いでいた魔導式を元に、魔法を発動させる。
「……え?」
メイは予想外だったのだろう。
ブォワァァァァッッ!
直後、私を中心に巻き起こった竜巻の様な暴風を避ける事が出来ずに吹き飛んでしまう。
暴風の刃は、風魔法の最上位。
発動すると、風の刃が竜巻の様な勢いで発生し、術者の周囲に強烈な暴風が出現する。
しかも、刃が付いている事から分かる通り、暴風の外側には一部、真空が生まれている。
この関係上……この魔法によって吹き飛ばされて外側に出てしまうと、その真空の刃……つまりカマイタチによって追加ダメージを受けるのだ。
「キャァァァァッッ!」
甲高い悲鳴を上げる。
……うむ、こう言う所は普通に女の子だな。
でも、防御力と言うか……ダメージはそこまでは受けてないのが驚きだ。
低級モンスターレベルなら、外側に弾き飛ばされた風圧で身体が圧殺されてしまうだろうし、よしんば外まで飛ばされても、外側のカマイタチに切り刻まれてしまう。
所が、切り刻まれていたのは服だけだ。
……しかも、中に防具を付けていたのか? 身体のアチコチがボロボロになった穴の部分から、鉄の様な物が見え隠れしている。
多分、中に鎖かたびらの様な物を着込んでいるのだろう。
良くは分からないが、かなり特殊な金属で出来ている様に感じた。
「……用意周到だな」
まぁ、技能試験がある事は前々から分かっていた事だし、それ相応の準備もして来るんだろうな。
冒険者にとって装備は自分の命を繋ぐ命綱でもある。
そう考えるのなら、やっぱり周到な位に準備をすると言うのは良い心掛けだと思う。




