こうして実技試験は鬼門となった【15】
「リダさんは、心身共に御強いのみならず、人としての人徳にも優れています。いずれ一国の主として、多くの民衆へと己の愛を注がないと行けない私から見るのなら、これはとても勉強になります!」
「そ、そうか……よかったな」
本当は色々と否定したい部分もあったんだが……この手の人種は、私が何を言っても耳を傾けない。
まぁ……それに、一応の理解と言うか、私と言う人間を高評価してくれた訳だし、否定するのも悪い気がした。
でも、肯定出来る程、私は人間そこまで図太くもない。
ここは、適当にお茶を濁す辺りで終わらせて置きたい所だ。
……と、こんな事を考えていた時だった。
「それより、リダ?……特待生達が、地味にアンタへとライバル心を持ってたよ?」
フラウが、いつになく真剣な顔になって言う。
「ライバル心?」
「ああ、そこは私も気になっておりました。リダ様が実はこの学園に通う生徒で、もうすぐ二年生になるだけの存在であった事が、強い競争心と言いますか……闘争心を生む切っ掛けになった模様です」
キョトンとした顔で言う私に、ユニクスが続けて答えた。
「つまりあれか? 単なる二年生でしかない私に対し、順位的に下位であったとは言え、これまでの特待生が全く歯が立たないって事が気に入らない訳か?」
「うーん……近いかな? 単純に気に入らないと言うより、俺または私がアイツを倒してやるって風潮?」
それは面白いな。
「あははっ! 良いな? 良いぞ? 面白い! それなら後半はもう少し気合いを入れてやってやろうじゃないか? 私を倒すぐらいの気持ちで、思いっきりぶつかって来るのなら、私も相応の態度を見せてやろう!」
燃えて来たぞ!
やはり、特待生と言うからには、その程度の意思を持ってくれないとなっ!
思った私は、ついつい高笑い。
そんな私を見て、
「リ、リダ様……高揚なされるも良いのですが、ホドホドになさって下さい」
ユニクスは思いきりドン引きする形で口を動かし、
「そ、そうだよっ! リダが本気とか……特待生の子達、怪我所か死んじゃうからっ!」
フラウは本気で特待生を心配していた。
私って……一体。
「うーん……でも、そっちの方がリダらしいかな? ほら? 弱い相手でも容赦しないってトコがさ?」
そこでルミがコロコロと笑って言う。
私がいつ、そんな酷い真似をしましたかねっ!?
「っ! リダさん! そ、そんな……本当のリダさんは、そこまで無慈悲な方だったのですか!?」
「いやいやいやっ! 違うし! そもそも、ルミとかにも優しくしてるし!」
フルフルと身体を震わせ……顔で信じられないと言ってたいたルゥに、私は必死で否定の声を張り上げた。
「そう? 私、こないだの剣聖杯で二回当たったけど、結構酷い目に遭ってた気がするんだけど?」
「遭ってないだろ! てか、その内の一回は私が何もしない内にお前が勝手に気絶して、事実上の不戦勝だったじゃないかっ!」
もう……私、泣いて良いか?
「私……リダさんと言う方が、どんな方なのか、分からなくなって来ました……」
怯える様に声を震わせて言うルゥ。
……いや、だからっ!
「私は本当に、一方的な暴力なんて、振るわないからなっっ!」
こんな感じで、私の休憩は終わって行った。
取り敢えず……ルゥとの誤解は少しだけ解けた気がするが、完全ではなさそうだ。
後で、少しでも仲良くなれるように、ルミと三人でトウキの街を案内しようか……。
……くそぅ……なんか、納得行かない。
地味に不満を抱きつつ、私の後半戦が始まって行くのだった。
◎○●○◎
後半戦が始まった。
案の定と言うか……フラウ達の情報通り、特待生達のやる気は満ち満ちていた。
うむ! 良いぞ!
やはり、そう来なくてはなっ!
後半戦の一人目……順位で行くと四十九番手だって特待生は、無手での勝負を挑んで来た。
へぇ……。
これまで、色々な武器や魔法を駆使して来た人物は多数いたけど、普通に武器なしの無手で挑んで来たヤツは初めてだった。
「はぁぁぁっ!」
開始の合図と同時に、特待生は素早いフットワークで私の眼前にやって来る。
ドンッッッ!
……お?
素手とは思えない、強烈な一撃だった。
防御壁には傷一つ付いてはいないが……恐らく、それはマクロ的な物だろう。
簡素に言うのなら、外見上はヒビ一つ入っていないが……ミクロ的な尺図で見ると、ほんの少しダメージを受けているのが分かる筈だ。
なんてか、これを同じ場所に何回も何十回も攻撃を続けて行けば、いずれヒビが生まれて行き……最終的には崩れて行くに違いない。
そして、それを狙っているのだろう。
「はぁぁぁっ!」
ドンドンドンドンッッッ!
彼は、全く同じ場所を、寸分違わぬ正確さで打ち続けている。
この正確さは武器だな。
「威力も高得点、早さもあり、なにより正確……と」
特待生の猛攻を受けつつ、私はサラサラと評価を付けて行った。




