こうして実技試験は鬼門となった【9】
「うぉわっ!」
私は思わず声を上げて飛び退く!
い、いきなり何するんだよ!
びっくりしたじゃないかっっ!
「リダ様が、良からぬ悪巧みをしている事なんか、先刻承知です……ええ、一万年と二千年前から知ってましたともっ!」
私はそんなに生きてないからなっ!
思わず、私がツッコミを入れたくなってしまう中、
「今度は何の騒ぎだっ!」
再び先生がやって来た。
「……えぇと?」
私はちょっとだけ後味の悪い顔になる。
今回に関して言うのなら、私はなんもしてない。
してないんだけど……。
「ん? リダ君? またキミかっ!? 本当にいつもいつも! 何回、私達を困らせれば気が済むんだねっ!」
その怒りの矛先は私にやって来た。
いや……まぁ……そうな?
大体、こう言うのは私が原因だったり、私が直接壊してたり……そもそもある騒動の張本人が私だったりする事が多いから、真っ先に私が疑われる。
けどな……先生。
「今回は私は関係ありませんよ? 近くで見てただけです」
私がありのままを口にした。
「嘘を吐くんじゃない! そもそも、リダ君! キミは毎回毎回……本当にアチコチの備品や建物を破壊しまくり、本校の生徒にあるまじき素行の悪さには、私もホトホト愛想が尽き掛けているんだ!」
けれど、全く信じてくれそうにない。
私の信頼性って……。
「あ、あの……先生? 今回は本当にリダ様は何もしておりませんよ?」
間もなく、ユニクスは私を擁護する形で口を動かして行く。
まぁ、擁護すると言う気持ちもあったんだろうが、言ってる事は嘘ではないんだけどな?
「良いのだよ、ユニクス君。キミの様な優秀な生徒が、わざわざこんな素行不良のカスに気を遣わなくても……」
ドコォッ!
……あ、いけね。
頭に来て、つい殴ってしまったわ!
けど、まぁ……いいや。
この時、私は頭の中でプツンと、何かが切れた気がしたよ。
コイツ、私をただの生徒だと思って、言いたい放題だよなぁ……?
もう、面倒だ。
「おい、貴様。名前を言え」
私は、先生に真顔になって口を開く。
……いや、もう『先生』なんて表現するのも馬鹿らしいや。
中年男とでも呼ぼうか?
「き、貴様だと? リダ君! キミは停学になりたいのかね?」
私の言葉を耳にした中年男は、憤然とした面持ちで激しく激昂していた。
いるね? こう言う、自分の職権を傘にしてモノを言う馬鹿が。
ズバリ言うと……私は、そう言うヤツが大嫌いなんだ。
「聞こえないのか? 名前だ? 言わないのなら、私はそれでも構わないが?」
「ふんっ! お前に名乗る名前などない!」
「そうか、なら学長に聞いて来る」
言い、私は一枚のカードを取り出した。
自分で自分のカードを見る事自体、かなり久しぶりと言うのも変な話ではあるが、これでも私だって冒険者の一人だ。
よって、ちゃんと携帯はしているんだよ。
冒険者カードをな?
自分の冒険者カードを取り出した私は、オリジナルから複製を取り出して中年男に渡して見せる。
「……なんだ、これは?」
私のカードを渡された中年男は不思議そうな顔になっていた。
……普通であるのなら、冒険者アカデミーを卒業してから貰うカードでもあるからな。
どんなに優秀であったとしても、この学園に在籍している以上は所持している筈のない代物ではあった。
「冒険者カードだ。もちろん本物だぞ? そこに書いてある事もな?」
吐き捨てる様に答え、私は歩いて行く。
向かった先は……もちろん学長室だ。
「ふん、何を言うのかと思えば、冒険者カードだと? こんな物が……」
中年男は、馬鹿馬鹿しいと言うばかりに鼻で笑ってから……口をポカンとさせた。
そこから、しばらく口をパクパクさせる。
「リダ・ドーンテン……そ、そうか……どこかで聞いた名前だと思っていたら……あのリダ会長だったのか……」
中年男は、今にも過呼吸状態へと陥りそうな勢いで息急き切って私の前にやって来ては、
「か、会長! こ、この度は、大変失礼な事をっ!」
即行で私の前に回り込み、土下座をしていた。
……コイツ、プライドってのがないのか?
やれやれ……結局あれだ。
権力に胡座をかく馬鹿は、権力によって破滅するんだよ。
「失礼? お前にとって、私は素行不良なカスなのだろう? そんなヤツに土下座するのか? 教師としてのプライドは何処に行った?」
「そ、それは……ですね……」
「ともかく、カスはカスなりに、お前へと抵抗するだけだ。そうだな? 懲戒免職なんてどうだ? 分かりやすいよな?」
「そ、それだけはご勘弁をっ!」
その後、中年男は泣き叫んで私に抱きついて……セクハラ紛いな事をしたので爆破させといたが、余談程度にして置こう。




