【6】
全く………もう少し根性を見せてくれよ。
そうは思う私ではあるのだが、まだ学生なんだし、実際に冒険者として経験を積めば嫌でも根性なんか座って来るだろうから、今回の所はそれで良しとして置く。
それにしても、気になる事を言っていた。
学園を狙う魔族が複数いたのは、まだ良い。
……いや、厄介な事に変わりはないけど、一応の納得も出来るし、まだ考えられる事の範疇内だ。
だけど………だ。
頭が破裂して断末魔の叫びを上げられずに絶命した魔王ゴブリンが残した、最期の言葉がどうにも気になった。
ヤツは言った。
他の世界から転生………と。
恐らく、本当であればこの後に続く言葉があったんだろう。
もし、そうであれば……最期の言葉は本来なら転生者と言う筈だったのかも知れない。
異世界からの転生者。
……こう言いたかったんだろう。
そんなヤツがいるのか?
不可思議な言葉ではあるんだが、それ以上にもっと気になった事がある。
ヤツは言っていた。
その転生者とやらは、私がこの学園に入学する事を『予見』していた、と。
つまり、最低でも予知能力があると言う事になる。
だが、もしこれが単なる予知ではなかったら、それは私にとって最悪のシナリオとなる。
簡素に言うのなら、私がこの学園に入学するまでのシナリオを『この転生者が作った』可能性があったからだ。
もし、そうであれば……流石の私も勝てる自信がない。
なぜなら、それは時が定める運命を転生者の手で自由に変えられると言う事になる。
もし本当にそんな物があったとするのなら、滅茶苦茶チートなスキルだ。
相手の運命が例えどの様であろうと、自分の意思で勝手に書き換えられてしまう。
元来生きる者が死に、本来死ぬ運命だった者が生きる事になる。
運命を全て改竄されてしまう。
こんな事が出来るとは思えないし、今の所は飽くまでも憶測に過ぎない。
まぁ………いいさ。
同時に、私がこの学園へと入学する事を予測していたのなら、あいつらの狙いは学園ではない。
ここはおかしいと思っていたんだ。
学園を壊したいのなら、すぐにでも壊せば良いのに、と。
でも、やらなかった。
これに、予見する力がある事を加味すれば、自ずと答えが見えて来ると言う物だ。
つまり、奴らの狙いは……私だ。
そうであれば、全て辻褄が合う。
私が狙い……ねぇ。
良い度胸だ!
あたしゃ、逃げも隠れもしないよ。
好きに襲いな。
返り討ちにしてやるからさ!
……ま、取り合えず今は、ルミ姫様とフラウと一緒に、のんびり学園ライフを楽しみますかね。
「よぉ~し! 取り合えずフラウ! お前は特訓として私と魔法で勝負! 良いか? わりかし本気出すけど、せめて一分は立ってろよ?」
「無理無理無理!」
フラウは全力で手をブンブンやってた。
やる前から諦めるんじゃないよ!
「それと、ルミは足が遅すぎる! まずグラウンド十周! 話はそれからだ!」
「ええええ! 私もやるのぉ~っ!」
当たり前だ!
てか、本気で冒険者になるなら、あの超鈍足ではダメだ! あれじゃゴブリンに喰われるし、オークの子供を生むはめになる!
……まぁ、普通のゴブリンやオークに負けるとは思えないけどな。
「よぉ~し! じゃ、学校終わって放課後になったら、特訓開始な! 二人とも、死ぬ気で頑張れ!」
「無理ですリダ様!」
「ルミさんは仮病の為、欠席します!」
「ばかものぉぉぉぉぉっ!」
次世代の冒険者の根性を叩き直す所から、まずは始めるかと私はこの時ほど思った事はなかった。
以下、次回!




