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こうして私は無双する・リダVer  作者: まるたん
第三編・編末オマケ短編
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こうして実技試験は鬼門となった【2】

「い、いやいやっ! それは飽くまでも、物の例えだよ! 実際は我々が束になっても勝てる可能性は薄い……いや、ゼロだ! よって、私は君と張り合うつもりは毛頭ないからね!」


 先生は、本気で血相を変えてからワタワタとふためいて叫ぶ。

 本当に、冒険者協会の育成を担当している教育機関の教職員なんだろうか……?


 なんと言うか……教職員になる事で、本当の意味では冒険をしなくなってしまったのかも知れないが……この態度は地味に情けない気もする。


「……分かりました。そこは私も額面通りに受け取りすぎました。その話は聞かなかった事にします」


「そ、そうかい……そうしてくれると助かるよ……自分が原因で、よりによって教員の全員が君に蹂躙されてしまうとなれば、自分の肩身が狭くなるからね……」


 蹂躙って……あんたなぁ。

 少し言い返してやりたい気持ちもあるが……こんな所で反論などかましていたら、話がいつまで経っても終わらない。

 私としては、まだ春休み中なんだ。

 職員室の近くまでやって来ては、それとなく覗き込んで来ているフラウやユニクスを、これ以上無駄に待たせる訳にも行かない。


「それにしても……特待生の試験なんて、なんでやるんです? もう、ウチの学園に入学する事が決まっているんですよね?」


 私は少しだけ不思議そうな顔になった。

 試験と言うのは、通常であるのなら学園に入学出来るか否かを判断する為に行う物だ。

 もう、決まっていると言うのなら、わざわざやらなくても良い様な気がするんだけどな?


「うん、良い質問だね。そこは優等生と言うべきか。やはりリダさんは有能な生徒だ。将来は協会で上層部の人間になりそうだから、今の内にコネを作って起きたい所だね」


 先生はニコヤカに答える。

 冗談半分で言っていると思いたい言葉だ。


「コネを作りたい人間が、私に恩を着せる事なく、むしろ余計な仕事を与えると言うのは、私としてはどうかと思うんですが?」


「これも鋭いな……はは、本当に君には敵わない。その点に付いても含めて、今から説明しようか? まずは既に合格が決まっているも同然だと言うのに、どうして試験をするのか? これは、特待生の能力をより細かく知る為に行っているのだよ」


「……なるほど。つまり、特待生の能力をより細部に渡って知る事で、より効率の良い教育のカリキュラムを組む為にやっていると言う事ですか?」


「ズバリその通り! やはり、話が早いね! 次に、リダ君が試験管を担当する理由についてなのだが……」


 そこまで言った教師は、かなり情けない顔になって苦笑した。


「特待生を相手に出来るだけの教師がいないんだ」


 それでも教師かっっっ!

 私は、心の中で絶叫した!


 いや、この学園……これでも、協会直営でやってる公式の冒険者育成機関だぞ!?

 その教師が、このザマなの!?


 もう、ここの人事を根本から見直そうよっ!


「先生……言ってて恥ずかしくないですか?」


 怪訝な顔になって私は答えた。

 これでも、今のリダ・ドーンテンは学園の生徒として対応している分だけ、まだ優しいんだからな?


 会長のリダ・ドーンテンさんがこの話を耳にしたら激怒だぞっ!

 使えない教職員をリストアップして、人事異動させるぞっ!

 流石にリストラはしないだろうが……左遷レベルの人事大移動を展開してしまうぞ!


 余りの不甲斐なさに、ホトホト呆れる私がいた所で、先生は溜め息混じりに答えた。


「本来であるのなら、この試験担当はアイン先生が行う予定だったんだが……どう言う訳か退職してしまってね……結果、試験管が居なくなってしまったのさ」


「…………」


 この言葉に私は無言になる。

 

 そ……そうか……アインがやる筈だったのね。

 ま、まぁ……確かにアインなら、試験管として適任だったとは思うよ……う、うん。


「えぇとぉ……」


 私は思わず額から汗を流して答えた。

 まさか、そのアイン先生を私が殺してしまいました……とは言えない!


「そ、その……わ、分かりました」


 私は、何とも言えない罪悪感を胸に抱きつつも、肯定の言葉を口にした……。

 な、なんてか……だ?

 結局、私のせいでもある。


 色々と事情があったにせよ、結果的にアインを救う事が出来ずに殺してしまったからなぁ……。


 本来、アインがやらなければならなかった事であるのなら、私が代わりにやると言うのも筋が通っている様な気もするし……。


「そうか! やってくれるか! 良かった!」


 先生は快活な笑みを満面に浮かべ、ホッと胸を撫で下ろしていた。


「いやぁ……正直ね? 特待生ともなると、教師の私達ですら手に負えないレベルの子もいてね? 負けたら恥ずかしいんだよ! しかも、そこから卒業するまで先生するかも知れないし……ずっと負けた事を言われ続けるかと思うと……もう、教師としての立場がね」


 先生は晴れやかな笑みのまま答えた。

 これが本音かよ……。

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