輝いた明日へ。ゴグゴグマの巨人【19】
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「さて……ぼちぼち、トウキに帰りますかね」
そうと答えたのは私だ。
里の平和も確立し、安穏でのどかな町並みが今後も変わらないと言う事を確信した所で、私は自分達のホームでもある冒アカへと戻ろうとしていた。
「そうですね。リダ様がそう言うと思い、身支度は全て昨日の内に済ませて起きました」
何気なく答えた私に、ユニクスは淑やかな笑みで答えて来た。
相変わらず用意周到と言うか……本当、やる事が早くて感心してしまう。
事件は、その時に起こった。
「リダ! 外見てっ!」
突然、フラウが焦って私達へと叫び声を上げる。
余談だが、現在の私達がいた所はティタン族の屋敷……つまり、アウロスの住んでいる屋敷の一室にいた。
まぁ、色々あって賓客扱いを受けてた。
そこまでしなくても良いのに。
閑話休題。
ここらの関係もあり、屋敷の客間に宿泊する形で手厚い迎賓を受けていた訳だったんだが……。
「……外? 外に何があるって言うんだ?」
「飛行船だよ飛行船っ! あれ、確実にニイガの新型魔導式飛行船だと思うっ!」
「…………は?」
私は思わずポカンとなり、口をぽっかりと開けてしまった。
「なんでそんな物が?」
「わかんないよっ! とにかく来てっ! 里が騒然となってるんだからっ!」
全く訳が分からない中、遮二無二騒ぎ立てるフラウに言われるまま……私とユニクスの二人は外に出て見る。
果たして。
「で、でっかっ!」
空を覆うばかりの巨大な船が空中に浮いていた。
……こんなのが浮くんだ。
てか、ニイガの魔導力って……どこまで高いんだよ……。
もはや近未来を見た様な気分にすらなってしまった……世の中は、頑張れば大体の不可能が可能になってしまうらしい。
「ああ、リダ様! これは貴女方の関係ですか?」
空を覆う巨大な飛行船を、唖然となって見上げていた時、アウロスの声が私にやって来る。
正直、全力で否定したい気持ちで一杯だったんだが……多分、きっと私が関係するんだろうなぁ……なんか嫌だな。
この調子だと、アウロス族長に怒られそうだなと、地味に困った私がいた所で、
「何か降りて来ますよ?」
ユニクスが軽く指を差して見せる。
その先には……飛行船の中から小さい何か……多分、飛竜の類いと思われる何かに乗って降りて来る人物が確認出来た。
しばらくすると……ああ。
飛竜には、超見慣れた人物が乗っていた。
もう、これで飛行船の中にいた人物が私に用事があった事が確定してしまう。
てか、なんて登場の仕方するんだよ、あのじゃじゃ馬姫わっ!
私は胸中で叫んでいた。
物凄い勢いで高度を下げて来る人物は……もう間違いない。
ルミ姫様だ。
片方の人は誰なのか分からない……少女か?
良く分からないが、それとなくルミに似ている気もする。
従姉妹とか、そこら辺だろうか?
まぁ、何にしてもだ?
「ふぃーっ! やっとリダ達を見つけたぁっ!」
飛竜に乗ってやって来たルミは……妙にやりきった顔をして見せる。
私からすれば、どうしてお前がこんな大がかりな嫌がらせを巨人の里でやらかしてくれてるのか知りたいんだが?
「おい、ルミ……いきなり何してくれてんだよ……」
飛竜から降りて来たルミに、私は呆れ眼のまま尋ねる。
すると、ルミは物凄い剣幕で私へと叫んで見せた。
「ああ、リダ! 大変なのっ! ニイガが! 超とんでもない事になってるのっ!」
完全に焦っているのだろうルミは……まぁ、大変だって事だけは分かったけど、それ以外はサッパリな台詞を口早に叫んで来た。
「分かった。取り敢えず落ち着け……ったく、本当にニイガって国は面倒事が多い国だな……」
何があったのかは知らないが、こうして自国の最新機を駆使してまで私を探していたと言う事は、かなりの大事になっているのだろう。
前回、王子の一件で色々なゴタゴタ騒ぎがあったばかりだと言うのに……本当、忙しい国だ。
「……どうやら、緊急事態の様ですね」
そう答えたのは、アウロス族長。
やや神妙な顔になっていたアウロス族長に……私はソッコーで頭を下げた。
「申し訳ない、族長! どうやら、本気で私のせいだった見たいだ!」
「いやいや、リダ様が絡んでいるのでしたら、里に危害が加わる事はないでしょうし……私も特に非難をする様な事はしませんよ」
アウロス族長は穏やかな笑みを作って見せた。
本当にお人好しな族長だった。
まぁ、お陰で助かったんだが。




