輝いた明日へ。ゴグゴグマの巨人【18】
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さて、今回のお話もエピローグだ。
この物語の特性と言うか……三編目が終了するだけなので、終章からのエピローグと言う章区切りにせず、文節だけ区切って置く。
流石に文節は区切らないと分かりにくいからな。
そんな訳で、終わりを向かえる訳なのだが……この後が大変だった。
何が大変だって?
そりゃ、事後処理だよ。
敵の大将になるゴグゴグマの巨人(旧名ゴグマゴグ)を倒した事で、ゴグ族とゴグマ族は大混乱状態に陥った。
簡素に言うのなら、戦争で負けた組になってしまった……と言う事で、大きな混乱が生じた訳だ。
歴史の流れを紐解けば……過去の歴史でも、戦勝国と敗戦国との違いは歴然と言える。
まして、千年と言う長い歴史の中でも、完敗を喫したのはこれが初めてなんだとか?
今までは、聖地を奪取する気持ちで幾度となく里へと攻撃を仕掛けていた歴史こそあれ、惨敗したとしても里の巨人達は深追いをする事なく、飽くまでも里を守る事に重点を置いていた。
よって、撃退して防衛さえ出来れば、他に何かをして来る事もなかったし、特に要求する事もなかった。
だが、今回は勝手が違う。
完全に攻め込まれた挙げ句、本陣にいた自分達の大将を討ち取られてしまった。
先行隊は完全に壊滅し……被害も甚大で、本陣が駐屯するゴグの町になんの被害が出なかった事が奇跡と呼ばれてしまう程。
実際、そこは奇跡でも何でもなく、意図的にそうしただけなんだけどな?
なんにせよ、今回はこれまでとは全く違う形で完全大敗を喫してしまった事になる。
戦争で負けた国は勝った国の要求に対して、限りなく無条件で飲まないと行けない事は、ほぼお決まりのパターンだ。
それが、ゴグ族とゴグマ族に、丸々当てはまった。
……よって、大変な事になったのだ。
もう、世の中が終わったかの様な絶望的な雰囲気が町の中に溢れてしまって、中には自殺未遂までするヤツまで出現して……本当にやめて欲しいと叫びたくなったね!
この騒動にピリオドを打ったのが、アウロス族長だった。
パラスの兄にしてティタン族の長……そして、ギガンテス族長の席が消滅してしまった関係上、暫定ではあるんだが里の総代表としてゴグの町とゴグマの町へと来訪したアウロス族長は、それぞれの町に住む住民達へと、こうと断言したのだった。
『元を正せばゴグ族もゴグマ族もまた同じ巨人。同胞としてこれからは共に協盛し、互いの繁栄を願いつつ、協和の道を紡いで行こうではないか!』
これには、ゴグ族の住民もゴグマ族の住民も驚いた。
ハッキリ言って、これからどうなるのか分からなかったからだ。
そもそも、ゴグマゴグが大将として君臨してた時……ヤツは島を取り戻し、聖地を荒らす不届き者を蹴散らす! と断言していたらしい。
つまるに、ゴグ族やゴグマ族からすれば、この戦いに勝った暁には、里の巨人は人権も何もないただの奴隷に過ぎない存在になる予定だった。
……その野心を持って、この戦いを開始していた。
実際、ここまであからさまな事を口にする輩は早々いなかったけど、風潮として町の中では里の巨人を蹂躙してやるんだ的な空気は、確かに存在していたんだ。
……そうなれば?
負けた場合、その風潮が自分達に降り掛かって来たとしても文句は言えない事になる。
だが、現実は違ったのだ。
里の蛮族と罵っていたゴグ族とゴグマ族の人間だが、本当の族長は穏やかであり平和主義者で……戦争に勝っても一切の要求をする事もなく、ただただ協和の道を共に歩もうと訴えたのだった。
これにゴグ族とゴグマ族の民衆が動いた。
正確に言うのなら、民衆の心が動いた。
中には感涙した者まで現れ、里への移住まで希望した者が多かったと言う。
余談だが、聖地は完全に解禁された。
……まぁ、当然ではある。
何と言っても、協和の道を唱えたのは里の方なのだから。
これで里が鎖国状態を続けたら、完全な口だけの宣言になってしまう。
但し、巨人の里である島内は聖地である事に変わりはないので、相応のルールは設けられたらしいが……余談程度にして置こう。
風の噂では、巨人連と言う連合会がその後に誕生し、その初代会長にアウロスが着任したと言う。
こうして、一連の戦いは幕を降ろし、巨人達の中に新しい絆と歴史が誕生して行くのだった。
……そして。
人間と巨人との、新しい絆も誕生して行く。
私の目標にまた一歩、近付いて行くのだ。
こう言うのも……悪くはないな。
ただ、やっぱり戦争になってしまうのは……少し悲しいな。
次は、もっと……争いが発生しない形で、協和の場を作る事が出来たら良いのかも知れない。
それは、次回の課題と言う事で。




