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こうして私は無双する・リダVer  作者: まるたん
第三編・最終章
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輝いた明日へ。ゴグゴグマの巨人【17】

 グシャ……ボコォッ!


 ゴグマゴグが本来の姿……巨人としての姿になった事で、大広間が激しい轟音を立てて瓦解して行く。


 大広間と言っても、それは人間サイズでの話しだ。

 一気に体長を十メートルまで巨大化させた事で、建物が破壊されてしまう。


 ……参った。

 普通に強いぞ……コイツ。


 実際に戦闘してはいないが、あらましの能力と言うか……強さが伝わって来る。

 エネルギー見たいな物が溢れ出ていて……そのエネルギーを感じる限りで凄まじい力を誇っている事を無言で私に答えていたんだ。


 多分……きっと、実力的に言うのなら今の私とほぼ同レベル。

 

 私にとって得意分野である筈だった力と力のぶつかり合いであっても、力負けしかねないステータスを誇示していた。

 まぁ、サーチで相手の数値を見た訳ではないし、やっても抵抗レジストされて見る事は出来ないと思うけどな?


 何にせよ、だ?

 先に補助魔法と補助スキルを掛けて置いて正解だったかも知れない。

 ふと、そんな事を考えていた時だ。


「……はぁ」


 みかんが呆れた顔になって、重い吐息を吐き出した。

 そして言う。


「やっぱり貴方は……千年前とちっとも変わらないのですねぇ……人の話しを全く聞かない」


 崩れ行く建物の中、


 ボコォッ!


 とうとう巨人の重みで床が抜けてしまい、直後に浮遊魔法を掛けて宙に浮く中……みかんは少しだけ悲しそうな顔になる。


 ……そして、つくづく残念そうな顔になって呟いた。


「これが、みかんが貴方に作った、最後のチャンスだったと言うのに」


 言うなり、


 パチンッ!


 親指と人差し指を擦り合わせて、指を鳴らして見せる。


 瞬間、


「…………な、なんだ……これはっ!」


 驚くゴグマゴグの声が、私の耳に転がって来る。

 何が起こっているのか?

 それは、私にも良くわかっていない。


 ただ分かる事は……彼の身体が徐々に消えて行くと言う事だった。


「世の中には反物質と言う物があるです。これは物質に触れると瞬時に結合し……物質もろとも消滅してしまうです」


 ……まぁ、宇宙のあちこちに一杯あるとは聞いた事があるけど、普通にある代物ではない様な……?


 …………。


 まさか、それを集めたのか?


 私は呆然となった。

 もし、そんな事が可能であったとするのなら、文字通り相手は消滅するからだ。


「どんな物体であったとしても、物体である以上は必ず物質なのです……質量を持つ存在であるのなら、それは物質であり……そして、反物質と化合する事で消滅する対象になる」


 ただただ、冷ややかに……抑揚の無い声音で能面のまま、口だけを動かして行くみかん。


「貴方は気付いたです? 手をかざした瞬間に何が起こったかを?……一見すると何も起きてない様に感じたかも知れないですが、あの時点で既に、みかんの魔法は貴方の体内の至る部分に組み込まれていたのです……反物質召喚魔法がね」


 ……なるほど。


 大体のカラクリは分かった。


 つまり、こうだ。


 みかんがゴグマゴグへと手をかざした時、ヤツの身体には幾つかの小さい召喚魔法が施された。

 多分、召喚をする為の小さな小さな魔法陣なんだと思う。

 魔法陣自体には効力はなく……それでいて魔力も極微量であるため、魔法を受けている事に気付けない。


 簡素に言うのなら『ただ手をかざして来ただけ』にしか見えなかった。


 実際、私もほんのわずかにみかんから魔法のエナジーを感じただけで、何をしたのかは分からなかった。

 そして、何もされてないと勘違いしていたゴグマゴグ。


 ……だが。


 実は、この時点で既にみかんはチェックメイトを決めていた。

 

 それに、みかんは確かにゴグマゴグへと言っていたのだ。

 みかんに抗うのなら消滅させるぞ……と。

 

「……こ、こんな事が、こんな事がぁぁぁっ!」


 消えて行く己の身体を見ながら……しかし、抵抗する事も出来ないまま、腕が消え、足が消え……とうとう動く事すら出来ない状態になり、


「うぉぉぉぉっ! こんな筈じゃ、こんなは……ず……じゃ…………」


 最後に頭が消えた。

 ヤツが吐いたいまわの時は、理不尽と不本意とを掛け合わせたかの様な……そんな、不条理極まる魂の叫びにも聞こえた。


「……本当に馬鹿ですね。ちゃんと人の話しに耳を傾けていれば、あるいは彼の悲願だったろう聖地に足を踏み入れる事だって可能だったかも知れないと言うのに」


 完全消滅したゴグマゴグを軽く一瞥した後、みかんはボソリと独りごちる。


 単なる人間でしかない私にとって、千年も昔の話しなんか知るよしもない。

 だが、きっと前にも似た様な事があったのだろう。

 そして、願わくば……次に会う時があったのなら、違う結末をみかんは用意したかったんじゃないかなと思う。


 ……だが。


 現実はそこまで甘くはなかったらしい。


「今度は変な道化師ピエロに捕まる事なく、三千世界を謳歌すると良いです……くれぐれも、人様に迷惑を掛けない様にとだけ、最期に助言してあげましょうか」


 みかんはそう答え、軽く空を見上げた後、


「じゃ、後片付けして里に戻りましょうかね~?」


 いつも通りのみかんに戻って行くのだった。

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