輝いた明日へ。ゴグゴグマの巨人【16】
そして、みかんが言っている事も事実なのだろう。
体験談だ……と言う所も含めて。
「……まだ分からないです? それなら実際に消えて見ましょうか?」
みかんは妖艶に笑う。
妙に不気味な笑みだった。
悪役としか思えない。
「……ま、まさか……?」
そこから、ゴクマゴグの顔色が変わる。
どうやら、何かに気付いた模様だ。
同時に身体が震え始めて、額から汗を流し始める。
……う~むぅ。
「およ? ようやく気付いたです? 千年程度前に、やっぱり似た感じで無謀にもみかんに戦いを挑んだ巨人がいたです。結局は最後に消滅してしまうのですが……と、ここまで言えばいい加減分かると思うんですがねぇ……?」
「………」
うん。
ゴクマゴグが完全にビビっている。
顔面蒼白になって、口を動かす事も出来ない状態だった。
そこから、ボソリと言う。
「あ、あのぅ……もしかして、貴方は箱庭の主様であらせられますか?」
すると、みかんは妖艶な笑みを色濃くしてから言った。
「やっと思い出しましたか。つくづくオツムの具合が悪い様ですねえ……?」
「………」
頷いたみかんがいた所で……あ、なんかゴクマゴグの脳波が完全に停止してるっぽい。
目は虚ろになっていて……てか、白目に近い状態になっていて、今にも気絶しそうな状態になっていた。
てか、箱庭の主って……。
まぁ、言いたい事は分かるよ……うん。
この世界は……言ってみれば宇宙意思と言う特別な存在が趣味で作った箱庭の世界。
その分身であり、娘的な存在であるみかんが『箱庭の主』を名乗っていても、なんらおかしな事ではない。
むしろ、私からすれば、どうして今の名前に改名したのかが気になるレベルだ。
この辺は、その内話される時が来るかも知れないが……私の話しでやるかどうかは微妙だな。
みかんの話しになる訳だし。
「さて、ゴクマゴグさん? みかん達は話し合いに来たです……本当は、もっと平和的かつ理知的に対話を持ち込みたい所でしたが……まぁ、みかん達は乱暴者ですから? ちょっと粗暴な真似もするのですよ」
みかんは淡々とした口調でゴクマゴグへと答えて行く。
「ここまでの事をして置いて、対話とか言われてもな……」
ゴクマゴグは、かなり訝しげな顔になって言っていた。
まぁ、そうな?
私達のやって来た事は、言ってみれば殴り込みだ。
けれど、そんな事を言っていたらキリがない部分もある。
何と言っても、最初はゴクマゴグの方が里にちょっかいを掛けて来た事から始まっているのだから。
「じゃあ、どうします? みかんに抗います?……もしそうなら」
言うなり、みかんはゴグマゴグへと冷たい笑みを強かに強めて言った。
間もなく、スゥ……と彼の目前に手を向ける。
咄嗟にゴグマゴグは身構えた。
しかし、何も起こる様子はない。
……ないが、私は気付いた。
みかんがゴグマゴグへと手を向けた瞬間に、なんらかの魔法を掛けた事を。
それがどんな魔法なのかまでは、私にも分からなかったんだけどな!
「貴方を消滅させます」
しばらく手を構えた状態のまま、みかんはキッパリと断言して見せた。
きっと……いや、違う。
確実にハッタリなんかじゃない。
「……確かにな? アンタは凄いよ。この世界の全てを知り尽くした箱庭の主だよ」
他方、何もされていないと思ってのか?
ゴグマゴグは、そこはかとなく威勢の良い態度を取って見せる。
「だが、それは大昔の話……いや、仮に今でも語り継がれていたとしても、俺にとっては過去の話しだ」
やや、気負いの面を見せつつ……反面で、自信もあるのか?
ゴグマゴグは、明らかにみかんへと威圧的な態度を取ってみせた。
……いや、違う。
「アンタは分からないかも知れないが……俺はこの世界に転生し、アンタも良く知ってるあの道化師から新しい能力を貰った……そして、今に至るまで自分自身を鍛えに鍛え抜いて来たのだっ!」
そこには、絶対的な自信が存在していた。
みかんとゴグマゴグとの間にどんな経緯があったのは知らないし、特に興味もないと言うのが正直な所ではあるんだが、遠い遠い昔……約千年前に彼はみかんにやられているのだろう。
予測ではあるが、みかんによって殺されている。
そして、本来なら記憶の全てをリセットして、三千世界の彼方へと旅立つ筈だった。
だが、その過程で偶然伝承の道化師と遭遇し、記憶があるまま再びこの世界へと転生したのだろう。
どうして千年の時を越えてしまったのかは謎でしかないのだが。
……果たして。
「俺はアンタが知る、あの時の俺とは違うっ! 今度こそ、アンタをこの手でぶちのめしてやるっ!」
好戦的な気迫を言霊に変える形で叫んだゴグマゴグは、その瞬間に身体を大きくして見せた。
まさに、巨人だった。
現代に生きる巨人……ゴグゴグマ、本来の姿がこれなんだろう。
……てか、いきなり本気モードかいっ!
いきなり最終形態になったろうゴグゴグマを前に、私はツッコミ半分の喚きを胸中でかましていた。




