輝いた明日へ。ゴグゴグマの巨人【14】
仕方ないな。
少しは楽しめると思ったんだけど……。
心の中でちょっとだけぼやきつつ、私は補助魔法を発動させる。
超攻撃力上昇魔法レベル99!
超防御力上昇魔法レベル99!
超身体能力上昇魔法レベル99!
例によって、自分の能力を急上昇させた事で発生するエネルギーの余波が周囲に撒き散らされた。
更に、スキルまで発動させる事によって、私が完全な本気モードになって行く。
竜の呼吸法【極】
ドンッッッ!
輪を掛けて膨れ上がったエネルギーにより、再び周囲に衝撃波を撒き散らした。
「……最初からそれでやって欲しかった所です」
「まぁ、そう言うなよ。これでも、敢えて敵に強さを合わせる事で自分への鍛練にもなるんだからさ」
ちょっとだけつまらない顔になっていたみかんに、私は言い訳半分の台詞を口にした。
だけど、敢えてハンデを付けて戦う事で、自分へのトレーニングをしていると言うのは本当だぞ。
やっぱり、なんだかんだでレベルアップへの近道は実践なんだ。
まぁ、ここの講釈は長くなりそうだからヨシとして。
私は、まだ残っていたゴツい鎧の連中達をにらむ。
「あ……あぁぁぅ……」
だが、兵士達は腰を抜かしたのか? 尻餅を付いた状態で後ずさりをしていた。
……どうやら、私の実力差に恐怖を抱いてしまった模様だ。
強くなれば強くなる程……相手の強さが分かる。
相手の本筋が見えて来る。
この気持ちは良く分かる。
例えば、みかんが良い例だ。
最初に会った頃のみかんは確かに強かった。
けど、当時の私はまだ、みかんの強さの片鱗程度しか気付けなかった。
そこから幾年かの月日が経過し……私もそれなりの強さに到達した。
そして、知るのだ。
みかんが持つ実力を。
なんと言うか、複雑だ。
強くなれば強くなるだけ……本質を知れば知るだけ、分かってしまう。
……遠くの存在である事を知って行く。
お陰様で、みかんに近付いている筈なのに、逆に遠くなった気持ちにさせられるんだ。
本当に複雑な気持ちだよ……全く。
話しを戻そう。
眼前にいる鎧達は、それなりのレベルを持つ高い実力者であるが故に、私の実力と言う物を瞬時に悟ってしまった。
結果……無尽蔵の恐怖が精神を襲い、完全に戦意を喪失してしまった。
情けないと思うなかれ。
人間は誰だって、恐怖と言う気持ちを持っている。
むしろ、この怖いと言う感情が欠落しているとしたら、それはもう人間とは呼べないのだから。
「どうやら、戦わなくても大丈夫みたいだな」
「その様です」
軽く一瞥してから、私とみかんの二人は先に進もうとする。
……しかし。
「うぉぉぉっ!」
鎧の一人が、半狂乱状態で私へと強襲を掛けて来た。
自分の持つプライドか? それとも、兵士としての忠誠心か?
理由は分からないが、せめて一矢報いてやろうと、長槍を怒濤の勢いで突き刺そうと振り抜いて来た。
ガシッ!
私は槍を紙一重でかわすと、右手だけで槍の刃を掴んだ。
間もなく、
ペキッ!
刃を一瞬でへし折る。
「悪いが、もうお遊びはおしまいなんだ」
呟く様に答えた私は、
ドンッッッ!
襲って来た鎧の土手っ腹に強烈な蹴りを入れた。
蹴られた鎧は悲鳴をあげる事すら出来ないまま昏倒し、
ドカッッ!
そのまま、十メートルはあるだろう壁に激突して倒れた。
そこから、周囲にまだ数人は残っている鎧達を牽制する形で睨んでみる。
……今度は完全に戦意喪失しているらしく、完全に顔を下に伏せていた。
「よし、行こうか」
「OKです、次に行くですっ!」
気合いを入れてみかんは先にあるドアを勢い良く開けた。
バンッ!
……と、開けた先にあったのは、大広間の様な所だった。
中には百人近い兵士。
その中央には、明らかに他とは違うオーラを纏う存在が、好戦的な笑みを見せながら私達を見据えていた。
「ようやく目的地に到達って感じだな」
「ですねぇ」
私の言葉に、みかんも軽く相づちを打って見せる。
さぁ……て。
「話しが通じる相手だと良いんだがなぁ……」
「無理かな……多分」
ですよねぇ……。
私自身もそう思っていたんだけど、みかんがソッコーで否定して来て……まぁ、そうだよなと珍妙な納得の仕方をしていた。
その時だ。
「随分と乱暴な方法でやって来るものだね……里の原住民は」
中央にいた男が、不適な笑みを絶やす事なく口だけを動かしてみせる。
私は里の原住民ではないんだが……そう言う事にして置こうか。
そこらの説明をするのも面倒だし。




