輝いた明日へ。ゴグゴグマの巨人【12】
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一時間後。
結局、寝る事も出来ず、ひたすら町を眺めるだけと言う、ある意味で暇人の集大成染みた行為を続けた所で、みかんがムクッと起き上がった。
「ふぁ……良く寝たです」
まぁ、一時間でも少しは体力が回復するとは思うが、良く寝た部類に入る物なのだろうか?
ふと、どうでも良い事を考えてしまう私……こいつが相手だと、妙に素朴な疑問が一杯沸いて来るんだよな。
「さて、町の方はどうなっているかな~?」
言い、みかんは眼下に広がる町の状況へと目を向ける。
ここらに関しては、私は既に結果を知っている。
伊達に一時間も町を眺めていた訳ではないのだ。
「ほぼ、大多数の住民は避難した見たいだな。かなり迅速だった」
もしかしたら、避難訓練とかしていたのかも知れない。
そう思える位に、トントン拍子で避難して行くのが分かった。
実際問題……本当の戦争だった場合、逃げ遅れた民間人がどんな末路を辿るのかを考えれば、やはりなんらかの訓練はしていたのかも知れないな。
ここらに関しては私にも良く分からない事なので、この話はここまでにして置こうか。
「ほむ、頃合いかもです。それとアフリトのサトー君は出番なさそうです」
「私的に言うのなら、出番がなくて良かったと思うぞ……」
私のツッコミもソコソコに、魔法の絨毯が高度を下げて行く。
向かう先は、敵の本陣となる駐屯地。
地図を見る限りだと、町の大通りに面している一本道をそのまま進めば到着する。
魔法の絨毯はゆっくり高度を下げつつも、敵の本陣方面へと飛んで行く。
レイス騒動で、すっかり静まり返った町並みが徐々に大きくなり、やがて魔法の絨毯は地面スレスレを超低空飛行で飛んで行く形を取った。
中々にスリリングな光景だった。
町の大通りとは言え、建物と建物の間を物凄い勢いで飛んでいるのだ。
文字通り風を切る勢いで突き進む魔法の絨毯は、地面スレスレを飛び始めて数分せずに敵陣の駐屯地にまでやって来た。
眼前には、鋼鉄で出来た鉄柵の高い門がある。
……だが、魔法の絨毯はスピードを緩める事なく、狂った弾丸列車の様に突っ込んで行った。
「ちょっ……前っ!」
流石に私も蒼白になってみかんへと叫ぶが、みかんは全く素知らぬ顔のまま、ニヤリと笑みまで見せて突入して行く。
同時に魔導式を頭の中で完成していたらしく、
巨大爆破魔法!
ドォォォォンッ!
鋼鉄の鉄柵めがけて爆破魔法を放った。
この一撃で、敵陣の門が一瞬で破壊される。
ついでに守衛だったのだろう兵士も巻き込まれる形で吹き飛んでいた。
……えぇと。
死んでない事を祈る。
私なりに胸中で呟き、超スピードで破壊された鉄柵の門を突き抜けて行った。
ウォォォォォォンッッッ!
本日二回目のサイレンが周囲に谺する。
……まぁ、そうなるわな。
さっきと違い、今回は本格的に駐屯地を狙っているのだから。
敵襲と分かり、一気に周囲の空気が変わった。
夜間だと言うのに、結構な数の兵士が私達の元へと集結する。
もしかしたら、さっきの騒動もあって目を覚ましていた兵士が結構いたのかも知れないな。
「おお! 出番ですサトー君! やりましたねっ!」
何が『やりましたね』なのか知らないが、
ポンッ!
そこで、アフリトのサトー君が出現する。
サトー君は出現するや否や、いきなり旋風を巻き起こして周囲の兵士達をきりもみ状態にしてしまう。
こっちに集中して兵士が集まっていた為、効果は抜群だった。
旋風の勢いで前が倒れると、以後はドミノ崩し状態で倒れて行く。
「よしっ! このまま突っ切りますよっ!」
以後も正面突破する形で突き進む。
お土産屋で買った500マールの地図には載ってなかったが、司令官がいるだろう場所は分かりやすい程にデカイ建物であった為、そこまで気にする事もなく突っ切って行く。
途中、どこから沸いて来るんだと言いたくなるまでの兵士に幾度となく囲まれたが、後方から私達を追い掛ける形でついて来たサトー君の旋風によって、兵士達を吹き飛ばしていた。
なんて事だ、サトー君大活躍じゃないか!
見た目、怖い魔神風味なアフリトのサトー君だが、何気に頼もしくて結構良いヤツなんじゃないかと思えて来た。
そこから、役目を終えて町から戻って来たレイス達も、私達を味方する形で兵士への足止めをして見せた。
……うむ、なるほど。
こうして見ると、レイスだからと言って、必ずしも私達の敵だと言う訳ではない事がわかるな。
全ての概念・生物・存在……それら全てとの協和と言うのは、この事を言うのかも知れない。
みかんが私に伝えたかった事の意味が、少しだけ分かった気がした。




