輝いた明日へ。ゴグゴグマの巨人【9】
「ほむ。こうなると、攻めるのは今が一番ベストになりそうですねぇ」
「そうですね……そこは私もそう思います」
みかんの言葉に、ユニクスが素早く相づちを打った。
実際、先行隊を完全に沈黙させた事で、こちらに大きく傾いている事は確かだ。
そしてなにより、
「敵が現状を的確に把握出来てない今……陽が明けるより先に攻撃を開始すれば、あるいは目的を達成する事だって可能かも知れません……最終的な判断はリダ様に任せますが、私としては今が攻め時と判断します!」
こうと答えたユニクスの言葉に、私も賛成だった。
今なら、本陣にしても増援部隊にしても、どちらも先行隊が全滅したと言う事実を知らない。
予測からすれば、まだ開戦すらしていないと言う考えであるに違いないのだから。
そう考えるのなら、まさか本陣がいきなり急襲されるとは思わないだろう。
まさに虚を突く奇襲作戦となりそうだ。
「ここは一気に本陣を叩く作戦と行こうかっ!」
ヨシッ! 燃えて来たぞっ!
思った私は、地図にあった場所……敵の本陣となるゴグ族の町に向かおうとする。
……が、しかし。
「ちょっと待つです」
間もなくみかんに止められてしまう。
……なんだよ? 攻撃するって決めたんだろう?
「ここに来る前にも言ったかもですが、無作為のまま特攻を掛けるのは良くないです……全く、リダはイノシシか何かなのです?」
「……別にイノシシって訳じゃないけどさ? もう、作戦って言う程の事が必要とも思えないんだが?」
「……はぁ。全く……だからイノシシと言うのです?……良いです? 仮に、増援部隊が私達の予測以上の早さで先行隊が壊滅したのを知り……かつまた、本陣へと攻め込まれている事実に直面した場合、どうなると思うです?」
「そりゃ……急いで本陣を援護するんじゃないのか?」
「そうですねぇ……その調子でコッチに来てくれたのなら、まだ良いです。ただ、本陣が狙われている上で、敢えて本当に上陸する可能性だってあるのです」
「なん……だと?」
みかんの言葉に、私は思わず戦慄を覚えた。
「そもそもです? どうして増援に三千もの兵がいるのかと言うと、地理的に挟み撃ちが可能だと言う利点と……もう一つ」
そこで、みかんは真剣な顔になった。
「島サイドにいる主力部隊が本陣へと向かった時、海岸がガラ空きになるからなのです」
「………」
私は無言になった。
そうか……そうなるのか。
つまり、本陣となるゴグの町に自軍が進軍すると、里とその周辺はノーマーク状態になる為、然したる苦労をする事なく、上陸する事が可能になる。
逆に増援を先に倒そうと自軍を動かせば……当然、今度は本陣が動いて、ノーマークになっている海岸を通って上陸。
結果は、増援部隊がノーマークで上陸するよりも酷い結果となってしまう訳で。
「……この陣形に、そんな画策が隠されていたとは……」
私は思わずシリアスな顔になって呟いた。
他方のみかんは地味に呆れていた。
「別に隠してはいないと思うです……てか、兵の数とその配置条件からすれば、その可能性だってスグに出て来るかもです」
悪かったなっ!
どうせ、私は策知らずだよっ!
「ここから作戦となるのですよ」
「……つまり、敵の二方作戦を打ち破る方法があると言う事か?」
「そ~ですねぇ。打ち破ると言うか、力で押してしまうと言うか……まぁ、そんな感じです」
もはや、それは作戦と言えない気もするんだが?
私の中に、超素朴な疑念が芽生えたのだが、敢えてそこは口にする事をしなかった。
「こっちの作戦は至ってシンプルです。向こうも両端で二つに分散して陣取っているのなら、コッチも二つに別れて叩くと言う方法です」
確かにシンプルだった。
目には目をってヤツだな。
「ただ、増援部隊はどう動くのか……今の所は不明瞭な所が大きいのです。リダの言う通り、本陣を助けに行くのか……それとも、敵の主力が本陣と戦っているどさくさに紛れて島を襲うのか……現時点ではどっちも同じ程度の確率なのです」
「ほうほう……つまり、可能性の問題って事か」
「そうなるです……そこで、ういういさんとユニクスさんは、増援部隊の方に向かって貰い、敵の動向を探って欲しいのです」
なるほど、そう来たか。
つまり、真っ直ぐ本陣へと増援しに行くのなら、それはそれでヨシ。
しかし、増援が本陣をガン無視して島へと突入した時は……それをしっかり防衛して欲しい訳か。
「島を狙う様なら、必死でカバーして欲しいのです。敵が先行隊の全滅に全く気付かず、動く様子がないのなら、そのままにして欲しいです。下手に奇襲を掛ける真似はせず、なるべく時間を稼ぐのがベストですねぇ」
軽くういういとユニクスの二人へと説明して行くみかんへ、
「OK、分かった。それで行こう」
ういういは二つ返事で頷き、
「はい! リダ様もそれでよろしいでしょうか?」
ユニクスも即座に快い返事をしてから、私へと同意を求めた。
当然、私の言う事は決まっているだろう。
「ああ、頑張れ! くれぐれも、無理はするなよ!」
私は真剣な顔を作りつつ……しかし、最後に笑顔を作った。




