【4】
私が瞬時に放った爆発魔法を受けたゴブリンは、一瞬で破裂して塵一つ残す事なく消滅する。
……それにしても、さっきのゴブリンはどこから来たんだろう?
頭に血が昇って、つい瞬殺してしまったが、冷静に考えるとおかしい。
裏山とは言え、ここは学園内だ。
校内はモンスターが入れない様な仕組みがあちこちに施されている。
例えば、魔物関連が敷地に入れば無条件で迎撃するトラップだったり、そもそもモンスターが入れない透明な防御壁が張ってあったり。
ともかく、この程度のモンスターならば、入る事なんか不可能に近い。
ところが、普通に裏山にいたわけで。
これがおかしくないわけがない。
パチパチパチ
……?
木陰の方から誰かの拍手が聞こえる。
拍手をしていたのは、イケメン?
「いや、流石は世界冒険者協会の会長ですね。素晴らしいお手並みを拝見させて頂きました」
にっこりと……しかし、確実に妖艶な笑みを好戦的に作り出していたエール君。
「私を知ってる見たいだな?」
「ええ、存じてますとも。自分達のボスが、貴女の入学を予見しておりましたからねぇ」
……ほう。
エールは甘いマスクに全くそぐわない毒々しい笑みを作ったまま、私を見据えてた。
まぁ、しかしだ。
彼のやろうとしている事がどんな物なのかは分かったよ。
同時に私の目的も絡んで来るわけで。
簡素に言えば、コイツが例の魔族。
学園の破壊を企み、私が送った冒険者達を悉く殺した憎き仇。
……いや、違うか。
最初、そう思った私だが、それはちょっと違うなと思い直した。
エールは確実にこう言っていた『自分達のボスが貴女の入学を予見していた』と。
確かに、情報では魔族がいるとは言っていたが、単体だとはどこにも書いてはいなかった。
そうか、複数いたのか。
「それで? 私が会長だと分かったとして、あんたは私に何の用事だい?」
まぁ、良いや。
全部叩き潰せば良いだけだし。
思った私は、イケメンを睨み付けた。
すると、エールは含み笑いをしながら、私に向かって口を開く。
「言わないと分からないものですかね? じゃあ、言いましょう。お前の腸を裂いて喰ってやろうとしてるんだよ!』
人間の姿をしてたエールだったが、言葉を終わらせるより早く、その姿と声音を大きく変貌させていた。
これまで人間だった姿はどこにもなく、無駄に筋肉が付いた凶悪なゴブリンへと大きく変化させる。
同時にその声も、醜悪なモンスターの物へと変わり果てていた。
あれか、魔王ゴブリンってヤツか。
ゴブリンと言えば、雑魚の代名詞。
ここは確かにその通りだ。
ところが、人間にも個人差がある様に、ゴブリンにも強いのと弱いのがいる。
一般的に強いゴブリンの事をボブ・ゴブリンと言うのだが、希にボブ・ゴブリンよりも更に強いゴブリン・キングと言う個体が生まれる。
文字通り、ゴブリンを束ねる大将なのだが、この大将の中でもピカイチの実力を持つ、ゴブリン・マスターなる存在がいる。
ここまで来ると、もはやゴブリンであってゴブリンではないレベルの強さで、まさに魔王の一角として周囲から畏怖の対象とされていた。
そこで、こう呼ばれていたのだ。
魔王ゴブリンと。
強いんだか弱いんだか分かんない名前だけど、魔王の称号は決して弱い相手には付かない。
その強さは称号に見合うだけあり、アークデーモンを十匹まとめて相手しても、笑って倒せる強さがある。
あるんだけど、だ?
『死ねぇ!』
「悪いが、死ぬのはアンタだ」
右手にもっていた巨大棍棒で、私の腹部をホームランしてやろうと、全力で振り抜いて来たが、その棍棒は私の前で止まる。
腹部に当たる直前の所で、私がその棍棒を右手で掴んだからだ。
特に手を動かすまでもなく止められるのだが、元はアレだ……イケメンだったし、少しは真面目に相手をしてやろうと思ったんだ。
「どうした? 魔王様? この程度の実力なのに、魔王の冠を魔界王から貰えたのかい?」
『き、きさまぁっ!』
プルプルと怒りで身体を震わす。
同時に棍棒を動かそうとするも、ピクリとも動かない。
ま、あれだ。
私が握ってるわけだ。
会長の力に勝てるヤツなんか、そこまでいない。
「アンタ、もしかして冒険者協会を舐めてるのかい? あんたが魔王なら、私は会長だぞ? 中ボス風情が、私に勝てると思ってるのかい?」
『く、こっこのぉ………』
エールの顔に色濃い焦りが見えて来た。
ま、当然だね。
こう言っては難だけど、格が違う。
あんたごとき雑魚モンスターが、この会長様に勝とうなど片腹痛い!
百匹いても笑って虐殺出来るわ!
「一つ、聞こうじゃないの。あんたはこの学園を狙う魔族の一人で当たっているかい?」
『言わないとわからないか?』
……ですよね~。
「なら、話しは早い……くたばれ」
ボンッッッッッ!
冷ややかに一言答えた時、エールの身体から強烈な爆発が起こった。




