輝いた明日へ。ゴグゴグマの巨人【5】
炎の槍に、全くの効果がないと言う事が分かった先行隊は、部隊にいた全ての騎兵を私達に目掛けて特攻を仕掛けて来る。
それとほぼ同時に、
「およ~。とうとう向こうも追い詰められたと見るです」
みかんは、突入して来る騎馬兵とは別の方を軽く見据えながら答えた。
余談だが、私もみかんも周囲が夜であっても普通に周囲を見渡す事が出来る。
猫の瞳と言うスキルがそれなのだが、暗闇に入ると自動的に発動する。
私の周囲に出現する透明な壁と同様に、必要な条件が揃うと勝手に発動する、オートスキルの一つだ。
みかんがこのスキルをどうやって入手したのかは知らないが……私は遥か南西に位置する大陸で、巨大な砂漠だらけのダンジョンを潜った時に猫の神様と出会い、そこで貰ったスキルだ。
最初はこんなの要らないと思ったんだが、意外と便利なスキルだった。
発動すると、瞳が超暗順応状態になり、暗闇でも普通に見る事が出来る。
弊害として、瞳が光る。
……暗闇に隠れる時は、この目を隠す必要があるのが難点だ。
ただ、サングラスの様な遮蔽物で簡単に隠す事も可能なので、そこまで困った事はない。
最悪、光の屈折を利用した魔法等を瞳に描けると言う方法もあるしな。
……と、そこは良しとして。
みかんが見ていた方角にあったのは、打ち上げ花火の発射台。
つまり、敵もここに来てようやく本陣や増援部隊に救援を求めようとして来た模様である。
……だが、それはむしろ自分達の首を絞める結果となる。
「まぁ、ちゃんと使ってくれたお陰で、仕掛けが無駄にならなくて良かったかもです」
「……そうな」
なくても大丈夫な気もするが、ここで花火を打ち上げられる事で、本陣や増援部隊が一気にここへと来られてしまったら洒落になっていない。
そう考えれば、やっぱり花火に仕掛けは必要だったと言う事だろう。
そうこうしている内に、花火が打ち上げられた。
正確に言うのなら、打ち上げ花火に火が点火され、発射される筈だった。
しかし、花火は当たり前の様に不発に終わり、
ドドドンッッッ!
その代わりと言っては難だが……爆発音が点火台の周囲から谺する。
この轟音によって、私達に突入しようとしていた騎兵が急ブレーキして点火台へと意識を向ける。
まぁ、かなりおかしな状態が起こっているからな。
そりゃ、気になって見てしまったんだろうよ。
「よし、チャンスですねぇ」
元々は私達を倒す為に、もうすぐそこまでやって来ていた騎兵が、突然の爆発でストップして後ろに気を取られていたのを確認したみかんは、
超炎熱爆破魔法!
追い討ちを掛けるかの様にして、後ろを見ていた騎兵隊目がけて超魔法を放って見せた。
ドォォォォォォンッ!
一瞬で、半分近い騎兵が吹き飛んで行く。
しかし、流石は精鋭と言うべきか?
超魔法の一撃から難を逃れた数騎の兵士が私達へと到達し、そのまま手にした長槍で突き刺そうと攻撃を展開して来た。
……まぁ、確かに強いよ。
ランク的にSに近い強さがあると思う。
……だが、会長を相手にするには、まだまだ早かったとしか言えないねぇ。
突入して来た数騎の騎兵の槍を、数本ばかり両腕でがっちりと挟む様にして掴んだ私は、
「うぉりゃぁぁぁっ!」
そのまま、全て纏めてジャイアントスイング。
そして、ハンマー投げの要領で全員を投げ飛ばして見せた。
投げ飛ばされた騎兵達は馬ごと回転しながら飛んで行き、そのまま地面に激突して倒れた。
これで昏倒しない相手なら、追撃で魔法を使ったりもするんだが……今回は大丈夫かな?
そんな事を考えていた頃……発射台の辺りが凄い事になっていた。
あ、あれは……なんだ?
思わず私はポカンとなっていた時、みかんがニッコリ笑って言う。
「ジンのアフリトですねぇ」
「………」
私は無言になる。
なんてえげつない物を召喚して来るんだお前は。
てか、そもそも、これは召喚『獣』ではない。
アフリトとは……ジンと呼ばれるデーモンの一種。
ただ、ジンの場合良いヤツも多いので、一概に悪魔と決めつけるのも難しい。
まぁ、魔神と表現した方が、より適切かな?
さて、このジンには強さが五段階ある。
冒険者協会のランクと同じ要領だ。
仮にC・B・A・S・SSと言う強さ段階があるとすると、アフリトはSに値する強力なジンだ。
これは私の情報でしかなく、実際に見て来た訳ではないのだが、SSは言うまでもなく最強で、神に匹敵する力があると言われている。
その下になるS……これが今回のアフリトだが、人間レベルで言うのなら伝説級と述べても差し支えない。
この魔神を怒らせた日には、一夜で町はおろか、国家すら存亡の危機に陥ってしまう。
国よっては、イフリートとも呼ばれている、ハチャメチャな強さのジンだ。




