輝いた明日へ。ゴグゴグマの巨人【1】
暗闇の中にある木々の合間に、私達は隠れる様に潜んでいた。
目前にはキャンプ。
完全に寝静まっている状態で、辺りには音一つない。
見る限り、見張りも少ない模様だ。
「準備はいいですか?」
小声でみかんが言う。
その顔は暗いから良く見えないが……いたずらっ子の様な顔をしていた。
……と、冒頭からいきなり妙な展開になっているが、簡単に言うと今の私達はゴク族とゴグマ族の先行隊が駐屯するキャンプの目前にまでやって来ていた。
最初の作戦はこうだ。
まず、本陣と増援部隊に一瞬で知らせる事になってしまうだろう打ち上げ花火に仕掛けをする。
みかんが予め用意していた、特殊な魔法の球を花火の発射台に埋め込む。
設置の仕方は実にシンプルな物で、中に放り込むだけで良いらしい。
すると? この花火が打ち上がった瞬間に、召喚魔法が発動するらしい。
どんな召喚獣が出現するのかは、発動してからのお楽しみだそうだ。
……地味にエグいのが出て来そうで怖い。
タイミング的にもちょうど良く、敵が寝静まっている。
起きているのは二~三十人程度の警備兵だけ……と言った所か?
この役はみかんが担当する。
最初、どうするのかと思ったのだが、普通に透明になれる魔法を使って、コソコソやっていた。
そして、特に苦労する事もなく発射台へと、みかん自身が作った魔法の球を放り込んで来た。
ここまで掛かった時間、わずか十分。
情報で三ヶ所の発射台がある事が分かっていたので、全ての発射台へと仕込みをして来たらしい。
この辺は、一つでも見落としてしまうと、残念な結果になりかねないので、しっかりと把握していた模様だ。
そんなこんなで、次の作戦になる。
今度は、普通に奇襲を掛ける作戦だ。
先行隊の本体に直接攻撃を仕掛ける役を担当するのは、私とみかん。
ユニクスとういういの二人には別の作戦を担当して貰う事になっている。
この二人は、それぞれ四方に駆け抜けて行く伝令兵を途中で駆逐する役割だ。
海岸から本陣まで約十キロ。
ここを担当するのは、ういうい。
最初の五キロは敢えて泳がせて置き、残り五キロ地点に差し掛かった所で急襲する作戦だ。
これは、本陣にも海岸の先行隊にも伝令兵がやられた事を悟られにくい地点がそこであったからだ。
上手くいけば、先行隊にも本陣にも悟られないので、追加の伝令兵が動く可能性が低下する。
よしんば、追加で送られる事になったとしても、その時間を稼ぐ事が可能になると言う形になる。
その間に、私とみかんが先行隊の兵士約二千を全て片付ける事が出来たのなら、まずは第一段階クリアとなる。
早馬に追い付ける様に、ういういとユニクスの二人には、みかんが所持している魔法の絨毯を、それぞれ一人づつに渡している。
動力となる魔力はみかんから排出されるのだが、絨毯自体は乗っている当人の意思で自由自在に操る事が出来るので、そこは問題ないだろう。
……と、まぁ。
この様に一連の流れを全員で確認した所で、
「よぉ~し! ほじゃ~、作戦開始です~っ!」
そこはかとなく間延びした地味に緊張感のない声音だったけど、当人はかなり真剣な顔で叫んでいたみかん。
「よし、行こうか」
声質は全然緊張感のなかったけど、顔は確実に緊迫が迫っている表情を作っていたみかんに、私もいつも以上に顔を引き締めてから声を返して行くのだった。
▲○◎○▲
「せーので、行きますか」
相手に気付かれない程度の距離まで近付いて来た所で、隣にいたみかんが私へと小声で言う。
「OK……所で、何で行く?」
「ほむぅ……ほじゃ、超炎熱爆破魔法で行きましょうか~」
なるほど。
ダブル超炎熱爆破魔法か、それは面白い奇襲方法だな。
ただ、威力がデカ過ぎて、本陣や増援部隊の方にも聞こえないと良いんだが。
ま、多分……大丈夫だろう。
本陣からここまで十キロはあるし、増援のゴクマ族の集落がある場所までは、大体十五キロはあるんじゃないだろうか?
それだけの距離があるのなら、超炎熱爆破魔法の爆音が轟いても大丈夫かも知れないな。
……多分。
「んじゃ、やりますか~」
「良しやってやろうじゃないかっ!」
みかんに頷き、私は魔導式を頭の中に紡いで見せる。
「行きますよ~……せーの!」
「せーのっ!」
超炎熱爆破魔法!
ドォォォォォォォォンッ!
二人同時に超炎熱爆破魔法が発動し、キャンプが二連発で大爆発を起こした。




