新しい架け橋【10】
「しかも、問題はそこだけではないのです」
言ったみかんは、スッ……と指を差した。
指の先にあったのは、増援部隊を意味するゴグマ族の陣営だ。
「この本体と増援部隊は、この海岸を挟んで駐屯されております」
この地図を見る限りだと、海岸の先行部隊を中心にして、それぞれ左右に中心部隊と増援部隊が駐屯している。
「……すると、あれか? 海岸の先行隊を奇襲すると……」
「そうです。本体と増援部隊は、海岸に向かって行進して行きます」
「…………」
私は絶句した。
つまり、それは……。
「完全な挟み撃ちです。先行隊は、恐らく奇襲された場合、本体と増援の両方に伝令の早馬を走らせて来ます……しかも、これだけではない」
「まだあるのかよ……」
私はげんなりした顔になった。
もう素直にコーモランの別宅に帰ろうかな……とか、弱気な事を考え始めていた。
「やつらは昼間に奇襲された場合は狼煙を、夜間に奇襲された場合は花火を打ち上げます。つまり、開戦の合図を即座に本陣と増援部隊のどちらにも素早く教える事が可能なのです」
「うぁ……」
「分かったです? 無作為に突っ込んだ場合……どんな結果になってしまったのかを」
「…………」
みかんの言葉に私は無言になって目を伏せた。
確かにその通り過ぎて、何も言い返す事が出来なかった。
このまま突っ込んでいたら、完全に倒しきれない数の軍勢に押しきられてしまい……最終的に私を無視して特攻して行く兵士によって島を攻撃されてしまう所だった。
他方の島サイドは、まだ開戦しないと考え、落成式によって酒を飲んで泥酔している巨人で一杯だ。
こんな状態では、まともに戦う事なんか出来ないだろう。
下手をすれば、無抵抗のまま蹂躙され兼ねない。
私は、ヒーロー所か、ただの阿呆になってしまう。
「すまない……みかんが教えてくれなかったら、とんでもない悲劇が生まれる所だった」
私は素直に自分のこれから起こそうとしていた行動を反省した。
危うく里に大きな危険が及ぶ所だった。
そこは、みかんに感謝しないと行けないな。
そして、同じ位……自分の軽率な行動を悔い改めなければ。
「分かってくれれば、それで良いのです! 良いです? 超多数と戦う時は必ずしも自分だけに攻撃が来るとは限らないと言う事を念頭に置いて戦った方が、良い参謀になれるかもです」
みかんは胸を張ってから、やや講釈がましい事を私に言ってきた。
言いたい事は分かるんだけど……地味に屈辱なのは何故だろう……?
多分、きっと……私は参謀になんかなる気がないからかも知れない。
そして、そのツッコミを口にしたいけど、私に落ち度があったから言える雰囲気ではないのが、悔しいのかも知れない。
ひたすらどうでも良い話ではあるんだが。
…………。
そこは良しとして。
「そこで、今回の作戦を説明するです!」
みかんは真剣な顔のまま、強い意思を込めて私達へと答えて行った。
私達の作戦会議はおよそ三十分程度続く。
作戦の内容は……まぁ、次回にて話そうか。
「……と、言う事で、みんな作戦内容は大丈夫です?」
作戦会議が終了し、みかんは周囲のメンバーに確認をして見せる。
この言葉に、
「……ふふ、楽しい内容ですね。この任務をしっかりこなして、リダ様にごほうびを貰いたいと思います」
ユニクスは俄然乗り気になって答え、
「相変わらず、やる事がエグいなぁ……いや、良いんだけどさ? みかんらしくて」
ういういは、誉めてるのか貶してるのか良く分からない台詞を口にしつつも、しっかりと肯定の意思を示した。
どうでも良いが、私はユニクスに御褒美をやるつもりはないぞ?
本当にどうでも良いが。
「内容はバッチリだ……が、本当にこれで行けるのか?」
「……さぁ?」
さぁ……って、お前。
まぁ、やって見ないと分からない部分もあると言う事だろう。
……そう言う事にして置こう!
とにもかくにも。
今度こそ、奇襲作戦を開始しようとした私達は、里の明日を守る為にゴク族とゴグマ族との決戦を迎えようとしていたのだった。
次回に続く!




