新しい架け橋【8】
「リダ様、今回はちゃんと、私もついて行きますよ……リダ様の行く所、常にユニクスありです。地獄の果てまでお供致します」
ユニクスは瞳をキラキラ輝かせて言う。
冗談めいた台詞だが、本当にそう思ってるから怖い。
「本当は、ユニクスも残って欲しかったんだけどなぁ……」
「ふふふ……前回は残されてしまいましたからね? それに、今回はフラウもいます。希望は決して消えたりはしません」
……そうか。
思えばパラスもいたんだった。
私が……と言うか、今回は私達になるんだが、とにかく気にする事なく突入する事が出来る背景には、自分が死んでも自分の意思を引き継ぐ存在がいるからと言うのもある。
もし私がやられてしまったとしても、それでも私の意思を引き継いで、希望の光を絶やさないでくれる……そうと信じられる存在がいるからこそ、私は気兼ねなく無茶な事が出来るんだ。
それは、次にユニクスが私へと尋ねて来た質問への答えにも精通する。
「それにしてもリダ様? リダ様が突入するのであれば、防御壁などの建設は必要なかったのではないのですか?」
「そんな事はないだろう? 私達がやられてしまったのなら、間違いなくゴク族とゴグマ族の連中は里に攻めて来るんだから」
どんな事でも、最悪の事態を考えて行動しないと行けないと言う事だ。
「なるほど、確かに保険は必要ですね……それに、私達がこの里を去った後に、再びゴク族とゴグマ族が来襲して来る可能性だって否めない」
「そうだな。仮にこの特攻が上手く行ったとしても、それで終わるとは限らない。私達が学園に戻ってから以降の事も、ちゃんと考えて行動しないと行けない。目先の事ばかり考えていちゃ駄目なんだ」
「なるほど、流石リダ様! 素晴らしいお考えです!」
言うなりユニクスは私に抱きついて来た。
どさくさに紛れてハグしてた。
「……ああ、リダ様、リダ様……はぁはぁ」
「そろそろ離れてくれないか? 私も、ここで無駄に味方を爆発させたくないんだ」
とうとう息が荒くなって来た所で、私は爽やかな笑みを作りながらも殺伐としたオーラを吐き出すと言う、何とも滑稽な状態を見せていた。
ユニクスは一気に蒼白になって、コキーンッ! と固まる。
「えぇと……すいません、調子に乗りました」
けれど、ちょっと悲しそうだ。
きっとユニクス的に言うのなら、こう言う時くらいはもう少しだけ抱き締めさせてくれても良いのに的な気持ちなのかも知れない。
……まぁ、もう少し位なら、それでも良いとは思うんだがな。
少なからず、今の私達は正念場だ。
「ここに来て、なんだかんだ有りましたね」
私から離れた後、ユニクスは思い出す様に呟く。
「……そうだな」
「正直言うのなら、最初は何となくでついて来てました。私自身も、特に思い入れのある土地と言う訳でもなかったですし、単なる観光気分の方が強かった気がします」
「実は私もだ」
苦笑混じりに述べて行くユニクスに、私も悪びれた風もなく頷いた。
実際問題、私も最初はそんな感じだった。
パラスの住んでいる地元の酒が旨いと良いな位の感覚だった。
けれど、今は違う。
「里のみんなに希望のある明日を提供出来たのなら……微力ではありますが、ベストを尽くしたいと私も思っております」
ああ、私も同感だ。
「里のみんなの為にも……負けられない」
フラウの為に木の実で出来たお守りを作った子供達の笑顔の為にも。
それを貰って感激の余り涙をこぼしたフラウの気持ちも。
何一つ、無駄にしてはいけない物ばかりだ。
ヒーローは、みんなの笑顔を守る事が出来るからこそ、ヒーローと呼ばれているのだ。
私はヒーローと呼ばれる様な人間にはなれないけど、そうありたいと常に考えている。
別宅を貸してくれたブランダーとコーモランの二人。
最終的には私を信じてくれたアウロス族長。
私にこの里を救うチャンスを与えてくれたパラス。
そして、里に住む全ての巨人。
みんなみんな、大好きだぞっ!
「よぉーしっ! 気合いが入って来た! それじゃ、ゴク族とゴグマ族のいる敵陣目掛けて特攻してやる! 行くぞっ!」
「はい、リダ様!」
気力十分の状態で声高に叫ぶ私に、ユニクスがとても良い返事をして来た。
こうして、私達は里のみんなを救う為にゴク族とゴグマ族が陣取っている島の向こう側へと奇襲を掛けるのだった。
……と、言いたい所だったんだが。
「……いや、ちょっと待ちましょうよ、リダ」
みかんは目をミミズにした状態で私達に待ったを掛けて来た。
折角良い雰囲気だったと言うのに……水を差すなよ……。




