新しい架け橋【7】
感情が昂り、喜びが一滴の涙として溢れ出た。
「……うん。頑張る! お姉ちゃん頑張るからね! 首飾りありがとう! 大事にするからっ!」
涙ながらに語り、フラウは子供達を抱き締めていた。
見てたコッチまで涙が出た。
この子達の為にも……胸一杯の希望がある未来を作らないと行けない。
「……よし!」
私は気合いを入れた。
これから眠りに就くのだろう子供達と一緒に、子供達一人一人の自宅までしっかりと送ろうとしていたフラウを尻目に、私は歩き出す。
「すまない、今日は私も寝る事にするよ」
……と、軽く周囲のみんなに答えて。
そこから、他愛の無い会話を二、三してから落成式の会場を立ち去る。
向かった先は、海岸だ。
里から離れた私は、コーモラン達から借りている別宅とは逆方向の道……と言うか、道ですらない場所へと向かう。
そして、しばらく歩いた後、
「ここまで来れば飛んでも大丈夫かな?」
一応の確認として周囲を見回しながら呟くと、
「そ~ですねぇ。ここまで来れば大丈夫かと~?」
「私もそう思う」
後ろからニュッ! とみかんとういういの二人が!
「……っ!」
ギョッとなった私は、思わず悲鳴を上げそうになった。
しかし、ここで大声を出す訳には行かない。
里からだいぶ遠い所まで歩いては来たが、それでも耳が良いヤツ……例えばユニクス辺りなら、確実に聞こえそうだったからだ。
「い、いきなり何するんだよ、お前ら!」
苦々しい顔になって、私は喚いてみせる。
今のは、本気で心臓に悪いぞっ!
「そう言うリダは、どーしてこんな所に? コーモランさんから借りてる家は、真逆ですよ~?」
「そうだよなぁ? そこは私も謎だ。どうしてなんだろうな?」
喚く私に対し、二人は意地の悪い笑みを作っていた。
……やれやれ。
「お前らと同じ理由だ」
私は嘆息混じりに答えた。
実は、最初から決めていた事だった。
落成式の時、ういういが言ってた台詞がある。
『それを言ってもいいのか?』
……と。
これが、ここに私がいる全てと述べても良い。
勘の鋭い人は気付いたろうか?
……そう。
私は……一人でゴク族とゴグマ族に喧嘩を吹っ掛けるつもりだった。
族長の話であれば、明後日には一万の軍勢が、この島を落とそうと攻めて来る。
その前に、奇襲を掛けてやろうとしていたのだ。
正直、我ながらかなりの無茶をしていると思った。
……馬鹿だとも思う。
所が? 同じ事を考えていた大馬鹿が、実は他にいたのだ。
「全く……これから私がやろうとしている事を、まさか二人だけでやろうとか、正気の沙汰とは思えないぞ……」
「それを一人でやろうと考えてたリダに言われたくないかもです」
「全くだ」
呆れた私がいた中、逆ネジ状態で嘆息を返される様な返事をされる。
……ぐむ。
確かにこれはブーメランだ。
下手に突っ込むとヤブヘビになりかねない。
まぁ、それに……だ?
「みかんがいるなら、かなり戦力が高くなるしな。頼りにしてるよ」
半分以上、開き直っていた私はニッ! と、快活な笑みを作った。
そんな時だった。
「そんな事だろうと思いましたよ、リダ様」
新たな存在が、またもニュッ! と!
「うきゃぁぁぁぁっ!」
流石に予想外過ぎた私は、思わず絶叫してしまった!
「あら、可愛い! リダ様! もう一回やって下さい! こぅ……可愛い女の子って感じで!」
「やかましい! 私は最初から可愛いわっ!」
厳めしい顔で叫ぶ私。
いつもなら、ここで爆破魔法の一つでも掛けてやる所なのだが、こんな外れで爆発なんか起きたら、里の連中が勘違いしてしまう。
せっかく落成式の関係で和やか雰囲気になっているんだから、ここは少しでも穏和ムードを壊さない様にしないとなぁ……。
いや……でも、まさかのセカンドインパクトだった。
一回目は予測していたけど、二回目の方は自分なりに上手く撒いたと思っていたから、油断していた分だけ威力が高かった。
どちらにしても……だ?
「これで四人になりましたねぇ」
「そうだな。一人頭3333人が、キッチリ2500人になった」
みかんとういういは、能天気に喜んでいた。
……なのなぁ……?
「お前ら分かるだろ? これから私がやろうとしてる事を」
「当たり前です。知らないでいたとするのなら、かなりの馬鹿です」
みかんは顔で『何を今更』と言う感じで言う。
私からすれば、知っていてここにいるヤツも大概な大馬鹿だと思うんだけどな?




