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新しい架け橋【6】

「本当に、貴女には感謝しか出来ません……ありがとうございます」


 更に続けてアウロス族長は答えてから、深々と頭を下げた。


「ああ、もう……私は私の意思で好きな様にやってるだけだから……感謝する必要ないから」


「そうは行きませんよ? リダ様。貴女様のお陰で、この島に住む島民は本当の意味で一丸となる事が出来ました……実は、漁村の集落があるのですが、そこの村長は私達に非協力的な方でした……が、今回の事で、ユニクスさんが直談判する形で向かって下さり、しっかりと仲介役を果たしてくれたのです」


「……へ?」


 そ、そうなの?

 初めて聞いたぞ、そんな話。


「それだけではございません! ユニクスさんは皆との調和と協和が何よりの力になると、防御壁を製作する際に、敢えて漁村の住民と我々里の者を絶妙なバランスで人員配置をしてくれたのです……これによって、今まであった漁村の民逹とに会った、妙なわだかまりも次第に無くなりつつあります」


 ……まじか。

 スゴいなユニクス!

 やっぱり、お前は勇者だよ!


 ……って、まて!


「それをやったのはユニクスじゃないかっ!」


「……? 何をおっしゃいますか? それらを指示したのは、他でもない貴女様ではありませんか!」


 …………。


 一瞬、何を言ってるのか分からなくなった。

 この族長は、何語を話しているの? とかって思った程だ。


「違う違うっ! それは、全部ユニクスが独断でやった事で……」


 私は全力で否定しようと、早口に遮二無二叫んで見せたのだが、


「そうです! 全てはこの、リダ・ドーンテン様の御意向なのですっ!」


 って、この大馬鹿女郎っ!

 さっきまで体育座りが似合いそうな雰囲気をどんより作っていたユニクスが、いきなり奇跡の大復活を遂げて、くわっ! と主張して来た!


 ドォォォォンッ!


 取り敢えず、爆破して置いた。


「なんでですかぁぁっ!」


 真っ黒けになったユニクスは、断末魔チックなツッコミを私に向けた後に卒倒していた。

 ようやく静かになったか……やれやれ。


「ユニクスがやった事は、全てユニクスの功績だ。私は何もしていない」


「……そうですか」


 改めて説明し直した私の言葉に、アウロス族長は相づちを打ってから答えた。


「やはりリダ様は別格の偉人である様ですね……感服致します」


 だめだ、こいつ。

 きっと、言葉を理解出来ない人なんだよ……残念極まりない人なんだよ。


「……はぁ」


 私は凄まじく重い溜め息を吐いた。

 こんな所に、ユニクスと同じ脳ミソを持つ、おかしな存在がいた事に失意の感情を抱いた。


「もう、どうとでも取ってくれ」


「分かりました! 神よっ!」


「それはやめてくれっ!」


 半ベソになった私は、必死でアウロス族長の意思を正常に戻そうとするのだった。




  ▲○◎○▲




 落成式も佳境に入ろうとしていた。


「……さ、アンタ達はもう寝なさい? あんまり遅くまで起きてると、怖い鬼に襲われちゃうんだから!」


 そうと言っていたのはフラウだった。

 見れば、フラウの周囲には数人の子供達がわらわらとたむろしていた。


 ああ、そう言えばフラウは、作業している巨人達の子供を面倒見る役割だったな。


「ええぇ……もう少し起きてたいよー」


「そうだよ、フラウお姉ちゃん。今日は特別な日だって、お祭りなんだって、お母さんも言ってたし」


「そうかも知れないけど、夜更かしはいけないんだから。えぇと……ほ、ほら! リダ様だって、それはいけないって言ってるよー?」


 フラウは言ってから、私を指差した。

 お前まで様呼ばわりかよ……何なの? 今日は!


「そっかー。リダ様が言うなら、僕達も寝るよ」


「そうだね。神様に言われたら、流石に寝ないと」


 ……っ!

 今、この子? 新しいオカルト教徒になってなかったか?


「そうねー。神様は皆をちゃ~んと見てるんだぞー? 良いことも、悪い事もね? だから、良い子にしないとダメなんだぞぉ?」


「分かった! 寝るよ」


「おやすみなさい、フラウお姉ちゃん!」


「うんうん、良い子ね!」


 フラウは、子供達を笑顔で何回も優しく撫でていた。


 そんな時だった。


「あ、そうだ! フラウお姉ちゃん!」


 子供達は、集まってフラウに何かを差し出していた。


「……? これは?」


 フラウはキョトンとなる。

 良く分からないけど、なにやらドングリの様な物がついてる首飾りの様だ。


「この島にいるね? 守り神が宿った木の実があるんだけどね? それをみんなで集めて作ったの!」


「そうだぞ、フラウお姉ちゃん! これから、里の為に戦ってくれるんだろ?」


「だから、お守り作ったのー」


「お姉ちゃん! 絶対に死なないでね!」


 子供達は、みんな笑顔でエールを送る感じでフラウに言っていた。


「…………」


 フラウは無言だった。

 身体は思いきり震えていた。

 瞳には一粒の涙が生まれていた。

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