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新しい架け橋【5】

「こんばんわ、みかんさんとういういさん。そうですね、これからが本当の戦いだと、自分も思ってます」


 アウロス族長は、みかんとういういに軽く会釈する形で挨拶すると、覇気のある声音を返した。


 そこから私の方へと顔を向ける。

 落ち着きがあるのに、穏やかさが滲み出て来る雰囲気を色濃く作って。


「リダ様。貴方様のお陰で、全てが順調になっております」


 そして、優しい眼差しそのままにひざまずく……って、おいっ!


「何してんだ、アウロス族長ぉっ!」


 何? 何なのこの人? 真面目な顔してコメディアンも出来る人なの?


「大丈夫ですリダ様。貴女様の御威光は、私がしっかり伝えていた結果です!」


 直後、ユニクスが私に向かってグッショブしながら、胸を張って叫んでいた。

 お前の仕業かユニクスっ!


「ユニクス……お前、後で爆破決定な?」


「なぜにっ!」


 ユニクスは思いきりショックな顔を作って叫んでいた。

 ……はぁ。

 なんてか、もうぅ……ため息しか出ないぞ。


「事情はなんとなく分かったが……その、気にしないで欲しい。族長と私は同じ世界に生きる同胞にして仲間だ。それ以上でも以下でもないんだからな?」


「……仲間、ですか」


「そうそう、仲間。平等の関係と言いたいんだよ、私はっ!」


 だから、そこのボケが言った事は綺麗サッパリ忘れてくれ。

 ……何を吹き込まれたのかは知らないけどさ。


「平等……そうですね。貴女様はそこまでの威厳に満ち満ちていらっしゃると言うのに……それでも尚、自分ごときにも対等の権利を与えて下さる」


 あ~……もしもし?


 もう、完全に私が超絶偉い人みたいになってるよ……希代の英雄とか、そう言う感じの存在になってるよ。

 ハッキリ言って、あたしゃそんな柄じゃないからな?


「一つハッキリして置きたいんだが……族長は、どうして私に敬意を無駄に払う?」


 ユニクスがバカな事を吹き込んだ事だけは分かったんだけどな? 

 ポイントとしては、その内容を知りたい訳だ。


「ユニクスさんがおっしゃいました……リダ様はいずれ世界を救うメシアになると!」


「どこまで盛るんだよ……?」


 私は項垂れそうになった。

 直後にキッと、ユニクスを睨もうとした。


 ……けど、やめた。


「……私はリダ様の素晴らしさを知って貰いたいだけだったのに」


 視界にいれたユニクスはしょぼーんと黄昏ていた。

 今にも体育座りして丸くなりそうな勢いだった。


 ………少し、言いすぎたかな?

 あ、後でフォローはして置こう。

 でも、爆破はするけどな!

 

 なんにしても、だ?

 そう言う事を妄想する人間は、ユニクスだけで十分だったんだがなぁ……はぁ。


「私はメシアなんかじゃない」


 ……ただ、全世界が仲良しになれる様に頑張ろうとしているだけだ。

 そう言おうとも思ったが、ここは伏せて置いた。

 思うに、ここを言うとまた無駄に妄想が膨らんで、自分の好きな解釈の仕方をした挙げ句、やっぱり貴女は救世主だと言って来そうだったからだ。


「謙遜でしょうか?……いやはや、奥ゆかしい」


 だが、何も言わなくても、やっぱり同じ結果になった。

 ……だめだ……もう、これはユニクスと同じ位に末期なヤツだ。

 どこをどんな風に話のベクトルを持って行ったとしても、必ず同一の方向へとベクトルを強制変換してしまう残念なタイプだ。

 この手の奴らを矯正するには時間と労力が無駄に掛かってしまう。


 ……仕方ないな。

 これから色々と体力を使う事になると考えた私は、余計な気力を消費してしまう事を避ける為に、敢えて余計な事を言わない様にした。


「まぁ、今の所はそれで良いよ……それより、これからが本番だな」


「そうですね……リダ様の言う通りです」


 穏和に語るアウロス族長。

 でも、どうにも違和感と言うか……接しにくい。


「あのさ……悪いんだけど、せめて普通にタメ語で話してくれないか?」


「タメ語?……それは、どういう言葉ですか?」


 それは真面目に言ってるでございましょうか?

 まぁ、高貴なお方ですこと!


「タメ語と言うのは……そうな? スラングではある。タメってのは同じって意味だ。語はその言葉って事だな。つまり敬語や謙譲語を一切使わないフランクな言葉を使って欲しいと言ってるんだ」


「なんと! いや、しかし……そんな畏れ多い!」


 はいキター!

 畏れ多い来ましたー!


 もうテンプレなんですかねぇ?

 それ言わないと、会話が成り立たないんですかねぇ!


「どうしてか、いつもそう言われるけど……てか、もう何回も言ってるからもう言いたくもないんだけど、全然畏れ多くないからな? 畏れ少ないって感じだからな? 本当にもう、みんなして何で同じ事をこうぅ……バカの一つ覚えの様に言うんだろうなぁ……」


「……ふふ」


 辟易していた私を見て、アウロス族長は吹き出していた。

 そこから続けて言う。


「それは、みんなが貴女の事を尊敬しているからですよ」


 答えたアウロス族長は、とても真摯な瞳で私を見ていた。

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