新しい架け橋【2】
パラスとフラウの二人は、さっきは一緒に私と並ぶ形で荷車を引いていたが、実際は違う役割を持っていた。
それは、子供のお守りだ。
さっきも言ったけど、里にいる巨人が総出で防御壁の建設に当たっている。
つまりそれは、女性陣も作業に当たっていると言う事を意味する。
巨人の女性はたくましい。
物理的にたくましい。
人間の男性よりも力がある。
まぁ、巨人の男性と比較すると……流石に負けてしまうのだが、それでも十分な力がある。
掘削をするにしても資材を運ぶにしても、人間の視点で考えれば超人レベルの能力があると考えても間違いないだろう。
作業の間は巨人になれると言うのも大きい。
遠い所からの遠距離運搬は私がやっているんだが、近距離と言うかそれぞれが的確に必要な分だけの資材を運搬する細かい運搬は、この女性巨人達が行っていた。
だが、そうなると?
子供達の世話は誰がやるのか? と言う問題に直結する。
そこで、里の子供達をあやす係りが必要になった。
この役が本来のパラスとフラウの二人だったんだが……フラウが、いきなり『私も作業を手伝う役がしたい』と、いきなり言い出し現在に至る。
話によると、保母さんよろしく状態で子供達の面倒を見ていた時、地元のガキんちょにからかわれたらしく、そこらが原因でこんな事をしているんだそうだ。
何を言われたのかは、言いたくないらしい。
……だが、まぁ……取り敢えず言える事は……だ?
子供の挑発に感化される時点で、お前も十分子供だと思うぞ?
そこはさておき。
他のメンバーもそれぞれの役割を持って、作業を続けていた。
中でも一層際立っていたのがユニクスだった。
彼女はある意味で里の英雄とも言えた。
冷静かつ的確に巨人達へと作業内容を伝え、テキパキと指示をして見せた。
これのお陰で、作業効率がグンッと上がっていた。
……まぁ、天の神様も伊達や酔狂でユニクスに勇者の天啓を与えた訳ではない事は知っていたんだが、こう言うのを見てると、勇者は人の上に立つ為に生まれて来たんだなと、理屈抜きでそう思えてしまった。
現場の指示を明確かつ的確にする事で、作業は思いの外早く終わって行く。
……まぁ、巨人は本来の姿であるのなら五メートルはあるだろう巨体な訳だし、そんなのが集団で作業を開始すれば、普通の人間の何倍もの早さで作業を終了される事が可能なのだろうが、ここにユニクスの指示が加わる事で、更に作業効率が爆発的に上昇していたと言う感じであった。
他方、みかんとういういの二人は、防御壁の作業とは別に、島のアチコチに様々な罠を製作して設置する役をやっていた。
これは私が直接、みかんに頼んでいた物だ。
魔法のプロフェッショナルでもあるみかんであるのなら、おおよそ見当も付かない様なえげつない……もとい、狡猾な罠を山の様に設置してくれると考えていたからだ。
数日後、私はみかんが設置した魔法トラップの説明を聞いたのだが……なんてか、もう……なぁ?
一つ確実に言える事は、この防御壁が霞んでしまう様な内容だった。
まぁ、これはこれで必要だとは思うんだが……みかんが味方で本当によかった。
簡単に魔法トラップの一部を紹介すると、こんなのがある。
島に上陸する為には、海を渡らないと行けない。
これは最低限の必須条件だ。
当然、そうなれば? ゴク族とゴグマ族の部隊は絶対に海を渡って来る事になる。
そこで、魔法トラップが発動する。
この島に武装して来た存在が近付くと無条件で発動。
……尚、武装していなければ発動しない。
ここが落とし穴にならないと良いのだが、鎧を装着しているだけでも発動対象になるから……まぁ、今回に関して言うのなら、それ程の問題にはならないだろう。
発動すると、海水の一部が魔導人形状態になり、侵入者を襲うシステムになっている。
その数も多く……敵の数に応じて、最大千体程度まで出現するそうだ。
魔導人形の群れを駆逐ないし、なんとか掻い潜ったとすると、島に上陸する事になるのだが……ここにも多数の魔法トラップが存在している。
正確に言うと埋没している。
これまた条件は武装している事になるのだが、条件を満たした存在がその部分を踏むと、様々な超魔法が発動する仕組みになっている。
氷魔の吹雪とか、断罪の爆雷とか……色々だ。
私も良く使う魔法だと、超炎熱爆破魔法もある。
………。
もう、みかんの魔法トラップだけでも、里を守れる様な気がして来た。
みかんが言うには、その他にも超強力な召喚獣とかも、条件次第では召喚される仕組みになってるとか言っていたが……そこらで聞くのをやめにしていた。




