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ギガンテス族長との戦い【9】

「……さて、ギガンテスの族長はこれで黙ってくれるでしょ~し? まぁ、余計な事したら、面倒だからみかんが殺すです」


 きっと脅しでも何でもなく、本気でやりそうだったみかんは、言ってからティタンの族長を見た。

 そんなティタンの族長も顔が強張っていた。

 

 何となくだか、命の危険を悟った感じの表情を見せていた。

 まぁ……な?

 そうなる気持ちも分かるよ、うん。


 だけど、みかんは下衆には下衆な態度を見せるだけであって、真摯な態度を見せる相手にはやっぱり額面通りの態度を見せて来るんだぞ?


 そんな事を知るよしもないとは思うが。


「どうしたのです? 別に貴方には何もしませんよ?」


 みかんはキョトンとした顔になって、おどけた笑みをやんわりと作りながらも小首を傾げた。


 ………。


 あいつ、今頃になって自分が恐怖の大魔王チックな目線で見られているのに気付いて、可愛い素振りとかティタンの族長にアピールしてやがる。

 いや、もう遅いよ! 何もかも遅いよ!

 そこまで来たら良いじゃないか、大魔王でっ!


 つい、心の中でツッコミを入れてしまった。


「その……えぇと……はい、すいません」


「いきなり謝ったっ!」


 口ごもってから、頭を下げて来たティタンの族長を見て、みかんはガーンッ! って顔になった。

 どこからどう見ても、確かに不可思議極まる謝罪の図ではあるんだが、それだけの事をしたみかんも大概だったから、敢えて何も口にする事はなかった。


「い、いやいや~! ティタンの族長さんは、なぁ~んも悪い事はしてないので、謝ったりなんかしなくても全然良いのですよ~?」


 あたふたと焦った顔になって捲し立てるみかん。

 何だろう? 可哀想なまでな間抜けに見えて仕方がない。


「と、ともかくです? 思い直して下さい、ティタンの族長さん。貴方は全てを知っていて尚……それでも、それらを受け入れ様としているです」


 そこまで答えたみかんは、強い意思を言霊に乗せて見せる。


「つまり、それは巨人族の滅亡の全てを受け入れたと言う事になるのです!」


 ズバッ! と言い切る様に言い放つ。


「…………」


 ティタンの族長は再び無言。

 ただ、さっきとは少しばかり雰囲気が違った。

 瞳を瞑り……何かを考え……そして、観念したかの様な顔になっていた。


「本当……貴女様は何者なのですか? そこまで全てお見通しとは……」


「通りすがりのトレジャーハンターですかねぇ~?……ああ、今は冒険者にもなったです。飽きたら辞めるけど、リダが辞めさせてくれないのです……とんだブラック企業です」


「ブラックじゃないしっ!」


 心からのため息吐きやがったぞ、あのキノコっ!

 ただ、みかんが冒険者協会に復帰してくれた事は、かなりの朗報だ。 

 当然、辞めさせてなんかやらんぞ? 私が会長をしてる限り、お前程の奇跡的な逸材を逃してなるものかっ!


 ふっふっふっ!


 …………。


 あ、ブラックではないからな?

 ほ、本当だぞ? ちゃんと辞めたいやつは辞めさてるからな?

 みかんだけ特例なんだ!

 

 そ、そこは置いといてだっ!


「みかんとティタンの族長さんの考えは正反対なのですよ。貴方は全てを知った上で、それが運命だと考えてしまい、そのまま里の滅亡を受け入れようとしたのです……が、みかんは違うです。全てを知った上で言うです。みかんは……絶対に、貴方達を救います!」


 握りコブシをギュッ! と力強く握りしめ、みかんはティタンの族長に断言して見せた。


 ティタンの族長は、思わずポカンとした顔になってしまった。

 典型的な呆気に取られている人の顔と言っても良いまでの表情で、ポカーンと口を開けた後、


「……ぷ、ふふ……あははっ!」


 とっても陽気に笑っていた。

 それは決して、嘲笑ではない。


 確かに、みかんの宣言は彼からすれば滑稽極まる馬鹿げた戯言に聞こえたに違いない。


 彼は全てを知っているからだ。

 里を蹂躙じゅうりんするだろうゴクゴグマの巨人がどれ程の脅威であり、その実力と言う物をしっかりと分かっている。

 それだけに、彼からすればみかんの断言は冗談にしても滑稽過ぎて笑えてしまう内容だったに違いない。


 だが……それでも、だ?


「貴女がその言葉を言うと、決して嘘でも戯れ言でもないと、理由もなく信じられてしまう自分がいる……どうやら、自分も他人を笑う資格などない程の大馬鹿な様だ」


 ティタンの族長は、言ってから声を出して笑っていた。

 他方のみかんも、一緒になって笑っていた。


「あはは~っ! 良いじゃないですか! 馬鹿で結構。大いに結構なのです。世の中、賢ければ何でもかんでも上手く行くって訳ではないのです~。そう言う馬鹿は必要不可欠な馬鹿なのですよ~」


 みかんは陽気に、必要にして十分な馬鹿の持論を口にしていた。

 まぁ……この表現もどうかと思うが、こう言う馬鹿は私も必要だと思うぞ?

 そして、私にとって愛すべき馬鹿とも言えるな。


 思った私も、二人を見据えながらも小粋に笑った。

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