ギガンテス族長との戦い【8】
……なるほど。
大体が見えて来た。
理屈としては筋が通ってはいるが、やってる事はそこかしこにおかしい。
正確に言うと、やり口が卑劣な様で、実はそうでもないと言う事だ。
「ギガンテスの族長。我々は無抵抗な人間を一方的になぶる様な事はしない。そうではないのか?」
「……た、確かにそうだな……分かったよ」
ティタンの族長に諭される形で、ギガンテスの族長は不承不承ながらも肯定の言葉を吐き出した。
本当に渋々って感じだった……マジでぶん殴りたい相手だな。
そんな、今にも唾でも吐いて来そうなギガンテスの族長を、私が不快指数120%で睨み付けていた時だった。
「ティタンの族長。あなたはそれで良いのです?」
いつの間にか近くまでやって来ていたみかんが、ティタンの族長へと声を掛けて来た。
「それで良いとは?」
ティタンの族長は眉をひそめる。
みかんはちょっとだけ考える仕草を取ったから口を開いた。
「あなたは、全てを知っているからです」
「……っ!」
みかんの言葉に、ティタンの族長の顔色が変わった。
……ほぅ。
これは、私としても興味深い内容だな。
全てを知っていたとするのなら?
当然、ギガンテスの族長がしている事を知ってたと言う事になる。
けれど、そこまで知っていても尚、ティタンの族長は頑なにギガンテスの族長を守り、あまつさえ人質を盾にすると言う卑劣な手段にまで打って出た。
何か事情があったとしか、私には考えられないねぇ……?
そして、みかんは分かっていたんだろう。
私が感じていた、妙なわだかまりの正体を。
「何を言いたいのか、サッパリ分からないのだが……?」
比較的、冷静な顔付きでティタンの族長は言う。
だが、私の目から見ても分かるレベルにまで、彼の顔に動揺が見られている。
……なるほど。
さっきまでの態度は、やっぱり演技も込みだったのか。
少し騙されそうだったよ……全く。
まぁ、守護霊が見える私を騙すのには、もう少しの対策が必要だったかも知れないけどな?
「分からないです?……いいえ、そんな訳はないでしょう? その証拠に、どうして私達に危害を加えないのです? 一方的に色々と画策していたのは、ギガンテス族だけでした。貴方達ティタン族の巨人は、純粋に私達を里から追い出そうとしていただけ……ううん、違うです『里から退避させようとしていた』だけなのです」
みかんは落ち着き払った態度のまま、ズバリ言い切ると言うばかりの態度でティタンの族長へと饒舌に語る。
「………」
ティタンの族長は無言になっていた。
「……おい、それはどう言う事だ?」
「だまらっしゃい!」
そこでギガンテスの族長が、話の中へと割って入ろうとしたが、みかんの強烈な眼光と叫び声によって、思わず尻込みした後に口をつぐんでしまった。
みかんでもこんな顔するんだな……。
普段は、ぽけ~っと間延びした言葉をのんびり使う、気長で能天気でマイペースのスペシャリストみたいなヤツだと言うのに。
しかし、みかんが見せた気迫は本物だった。
直視すれば、それだけで恐怖を直接本能へと植え付けられる様な? そんな、衝撃的なプレッシャーを瞬時に受けたんだと思う。
現に、未だ十メートルはあろう巨体を誇っていた筈のギガンテスが、全身から汗を流して慄然となったまま立ち尽くしている。
これだけで、みかんの威圧感が半端ないと言う事が判断出来た。
「ギガンテスの族長。もう、アンタには何も言う事がないです。みかんとしては、もう少し救い様があればと見ていたのですが……出て来るのは失望と言う言葉だけ」
そこまで言うと、みかんはギンッ! と鋭い気迫のこもった睨みをギガンテスの族長に向けた。
「………」
絶句状態になってしまったギガンテスの族長は、完全に白目になりそうな勢いで顔を蒼白にしていた。
「……まぁ、あれです。運が良かったですね? リダ達が来てくれて。みかんとういういさんだけでここに来ていたのなら……貴方の命は無かったですよ?」
………。
みかんは真顔で言ってた。
い、いつものみかんさんは何処に!
飽くまでも予想でしかないが、本当にギガンテスの族長を殺すつもりだったろうみかんを見て、私はちょっとだけみかんが怖くなった。
いや……さぁ?
みかんって、ほら?
宇宙意思の分身と言うか……娘みたいな存在な訳で。
ここらに付いては二編目の後半で語っているから、気になった人はページをバックして見てみると良いかも知れないな。
確か、二編の最終章でやってた筈だ。
まぁ、そこはよしとして。
そこらの関係もあるだけに、殺すと言う概念が、私らよりも薄いと言うか……なんか、ちょっとだけ違う気がするんだよなぁ……。




