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ギガンテス族長との戦い【2】

 ユニクスの蹴りを受けた兵士は数メートル程度吹き飛び、悲鳴を上げる暇すら与えられずに昏倒する。


「貴様ぁぁっ!」


 次の瞬間、周囲にいた兵士が一気に殺気立ち、全員がユニクスへと襲い掛かって来た。


 だが、ユニクスの表情は変わらない。

 冷たい笑みをうっすらと艶やかに……かつ、怪しい瞳を光らせながら、軽やかに巨人兵士の槍を避けて行く。

 ギリギリの所で避けてはいるが、実際はかすりもしない。


 メコッ……!


 一通り、巨人兵士達の槍をかわした所で、ユニクスが攻撃に転じる。

 

「あがひゃっ!」


 再び槍で突こうとした巨人兵士の顎に、ユニクスの肘がアッパー気味に当たる。

 ユニクスの勢いと、巨人が自ら突っ込んで来た勢いを上乗せする形で絶妙に決まったカウンターにより、巨人兵士の顎が砕かれる。


 顎を砕かれた事で、思わずうずくまってしまった所に、追い討ちを掛ける形でユニクスのエルボーが振り落とされた。


 ドガッッ!


 ……え、えげつないなぁ。

 背中の中心に、自分の全体重を掛けて肘を打ち込まれ、巨人兵士はアッサリ白目を向いて倒れた。


「……な、なんだ……こ、こいつはっ!」


 巨人兵士サイドに戦慄が走る。

 六~七人程度で一斉に攻撃をしたと言うのに、相手を倒すどころか逆に自分達の味方が一人倒されてしまった。


 他方、奴等にとって切り札とも言える巨人化は、現状だと不可能に近い。

 ここで巨人化してしまったのなら、彼らの目的である族長の防衛が困難になってしまうからだ。


 簡素に言うのなら、屋敷が近過ぎた。


 この状態で巨人化して交戦してしまうと、屋敷に多大なる被害が生じてしまう。

 当然、中にいるだろう族長だって、幾らかの危害を被る危険性だってある。

 こうなったら本末転倒だ。


 結果、巨人化禁止と言う形となり、特に意図していた訳ではないが……相手側のハンデマッチと言う構図が自然と出来てしまった。


 故に、巨人兵士達もユニクスの脅威レベルと、結果的に生まれてしまったハンディキャップにより、嫌でも慎重にならざる得ない。

 

「どうしたの? 来ないのなら、コッチから攻めるけど?」


 膠着状態になってしまった中、余裕の笑みを塵も芥も崩す事なく答えたユニクス。

 この時点で勝負あったな。


 さて、これからどうしようか?

 私は既に次の算段を考えていた。


「待ってくれ!」


 その時、ユニクスの元へと兵士の合間を縫う様にしてやって来たコーモランとブランダーの二人がいた。


 ……?

 何がしたいんだ?


 私はちょっとだけ眉を寄せた。


 不思議そうに状況を見据えていると、真剣な顔をしたブランダーがユニクスへと切実に訴え掛けて来た。


「ここにいる兵士は、俺達ティタン族の兄弟でもあるギガンテス族の巨人だ。ユニクスさん達には酷い仕打ちをして置いてこんな事を言うのはかなり気が引けるが……なんとか勘弁してくれないか?」


 声高にユニクスへと叫び、間もなく土下座までして来た。


「俺からもお願いします! 甘い事を言ってるのは百も承知だ! しかし、これ以上……仲間に犠牲者が出てしまうのは、見るに耐えないんだ」


 直後、ブランダーと一緒にやって来たコーモランもユニクスに土下座をして、誠心誠意の謝罪と懇願をして来た。


「………」


 ユニクスは無言になる。


 周囲はしばらく沈黙が生まれた。

 その間に、兵士達はユニクスへと攻撃する気になれば攻撃する事も出来たのだが、誰一人として彼女へと刃を向ける事はなかった。


 やれば、その一瞬後にどんな反撃を受けるか分からなかったからだ。

 さっきあった一連の攻防で、すっかり兵士達の覇気は薄れていた。


 それだけに、兵士達は一切の攻撃をせず、ただただ立ち尽くすのみに止まるのだった。


「……はぁ。仕方ないですね」


 つまらない顔になってユニクスは重い嘆息を口から吐き出した。

 

「分かりました……ここは、貴方達の顔を立て上げる事にしましょう。私としてはここでも戦果を上げて、リダ様に新たなごほうびとしてキスして抱き締めて、そしてそして……夜にはドキドキわくわくの目眩めくるめく子作りの体験をっ……」


 ドォォォォォォォンッ!


 最初は毅然とした顔でキリッ! と述べていたユニクスだが、途中で段々と頬が高揚して行き……息まで荒くなり、完全に興奮して来て恍惚の笑みになって来た所で爆発していた。


「私の愛が大爆発っ!」


 勝手に一人で爆発しとけやド変態っ!


「調子に乗るんじゃないっっ!」


 爆発しながら……それでもまだ恍惚の笑みを浮かべていたユニクスに、私はこれでもかと言わんばかりに喚き声を放っていた。

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