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ギガンテス族長との戦い【1】

 翌朝。


 私達はコーモランやブランダーの案内の元、内通者の疑惑があるギガンテス族長の元へと向かった。


 みかんの情報は疑う必要はないだろう。

 そうであるのなら、事態は火急を要する。


 迅速な対応で素早く里の巨人達を纏めなければ!


 思った私は、


「族長はいるか?」


 族長がいるのだろう屋敷に正面からやって来た。

 相変わらず原始的な家ではあるんだが、他よりは少しだけ豪奢な気がする。

 何より大きな建物に門構えまである。


 まぁ、この里に二人いる長の一人なのだから、相応の自宅に住んでいても何らおかしくはない。


「貴様らは……人間かっ!」


 族長の自宅前までやって来た所で、兵士らしき一人の巨人が私に声を掛けて来た。

 完全に警戒感マックスって感じの雰囲気を私達に見せてた。 


 ……うむぅ。


 私は若干の違和感を抱いた。

 一応ではあるが、平穏を保っていた現状だと言うのに、族長の自宅前には既に武装した兵士が数人ばかり立っていたのだ。


 この調子だと、屋敷内にはそれなりの兵士が駐在しているのかも知れない。

 いくら、ゴク族やゴグマ族が里を狙っているとは言え、ちょっとやってる事が過剰ではないか?


 これでは、いつ戦争が起きても良い様に準備している見たいではないか。


「随分と物々しいですね……」


 ユニクスも、不自然なばかりの警備状況に眉をひそめた。

 

「もしかしたら、昨日の試験と偽った罠が呆気なく突破されちゃったから、自分達の所に殴り込みに来るかも知れないって、身構えていたとか?」


 眉をひそめるユニクスに、フラウが自分なりの考えを口にする。

 確かにそこは考えられる。

 しかし、そうと仮定するのなら、あの罠を敷いたのはギガンテス族長でほぼ間違いないだろう。

 罠として巨人兵士を送り込み、返り討ちにあった結果を、昨日の今日で既に知っている事になるのだからな。


「可能性としてはそうかも知れないな? 私達がやって来る事を予期出来たのなら、それ相応の準備程度はするだろう」


「そうですね……向こうも臨戦態勢に入っているかも知れません」


 ユニクスは顔を引き締めて答えていた。

 もし、ユニクスの言葉が正しいのであれば、屋敷の中は兵士だらけで……殺伐とした空気が渦巻いているんだろうなぁ……やれやれ。


 私としては平和的に解決したいんだけどな。

 

「待ってくれ。俺達は話し合いをしに来た」


 私の気持ちを代弁する形で言っていたのは、案内役としてここまでやって来たコーモランだった。


 剣呑な顔ではあるが、それでも自分なりに精一杯の愛嬌を見せて、族長の警備をしているのだろう兵士に向かって交渉して見せる。


「話し合いだと? そもそも、我々に貴様らから言う言葉など持ち合わせてはいない! 早々に立ち去れ!」


 だが、頭ごなしに怒鳴り散らされるだけに終わる。

 更に、コーモランやブランダーをやや無視する形で、私達へと視線を向け、敵意の塊じみた意思を露骨に見せてからがなり立てる。


「貴様ら人間どもは、そもそもこの聖地に侵入している時点で罪なのだ! 早々にこの島から出て行かないと言うのであれば……」


 答えた兵士は、私達に向かって右手に持っていた槍の刃を突き立てて来る。


「我々は容赦なく、貴様らを排除する」


「ああ、そうかい」


 今にも、右手の槍を突き刺して来そうな状況の中、私は冷ややかに笑う。


「さっきも言ったが、私は話し合いに来ただけなんだけどな?」


 だけど、へり下るつもりもない。

 向こうが攻撃して来るつもりなら、私は容赦しないぞ?


「リダ様。どうされますか?」


「相手次第だろ?……私はヤツらに頭を下げる義理も理由もない」


「わかりました」


 ユニクスは普段通りに、穏やかな笑みを作って見せる。

 だが、その笑みは明らかに『穏やか』と言う表現とは相反する意思が、瞳の奥から垣間見えた。


 そこから、ユニクスは穏和な笑みを保ったまま、槍を突き立てていた兵士へと顔を向けた。


「そう言う事だ。お前達がおかしな事をしない限り、私達は危害を一切加えない……が、抵抗するのであるのなら、どうなるのかは私にも分からないぞ?」


 ここまで言うと、朗らかな笑みは妖艶な物へと変化して行く。

 ……こう言うのを見てると、元々は悪魔だったと言う事が分かるなぁ……。


「飽くまでも我々に抵抗すると言うのか……良いだろう! まずは貴様から叩き潰してくれるっ!」


 警護の兵士は言うなり右手の槍をユニクスめがけて突き刺そうとして見せる。


 ガッッ!


 その瞬間、ユニクスはスッ……と槍の一閃を軽くかわして、槍の柄を右手で握って見せた。


「……っ!」


「この程度の腕前で、私を倒す気でいたなんて……ふふ。笑っちゃうわ」


 ドンッ!


 刹那、ユニクスの蹴りが警護の兵士の腹部にヒットした。

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