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巨人の英雄・ブロンの試練【10】

「ギガンテスの族長が、どんな経緯を経たのかは知らないのですが……向こうのトップと話し合いをする機会があった模様で……その時に、ギガンテスの族長は悟ってしまうのです」


 このままだと、島の中にいる里の巨人は壊滅する……と。


 事実、これはリアルにそうなる可能性が高い。

 正確に言うのなら、私達がいなかったら……の、話しなんだがな?


「ギガンテスの族長は悩んだ末に、自分達の部族だけでも何とか助けようと苦悩しました」


 その結果……兄弟部族となるティタン族を売った訳だな。


「そう言う事か……」

 

 みかんの話しを聞き、私はなんとも切ない気持ちになってしまった。


 時代の流れは普遍でありつつ、その限りではない。

 流転るてんする万物の中を一定の速度で進むと言う意味では、実に普遍的ではあるのだが……反面、激動の歴史を産み出し、時に歴史の変革をも産み出す。

 時の流れは普遍的であっても、その時代を生きる者達が織り成すドラマは、決して普遍ではないのだ。


 そんな、歴史が産み出した悲しき落伍者になりつつある、ギガンテス族とティタン族。

 元来であるのなら、自然に産まれた時代の進歩と革命の前に、鎖国状態を貫いてしまった時代錯誤な部族は滅びゆく運命にあるのかも知れない。


 ……だが。


 例え、歴史が二つの部族を排除しようと……淘汰しようと。

 私はギガンテス族とティタン族を見捨てはしない!


 ……良いだろう! 燃えて来た!

 ここは是が非でも部族間の仲介をし、私の目的を完遂して見せる!


 冒険者協会の会長として……人とそうではない者との架け橋を繋ぐ為に!


「とりま、この話しは理解出来たです? 続けて二つ目を話すです」


「ああ、そう言えばポイントとして二つある見たいな事を言ってたな?」


「ですです。二つ目なのですが……」


 言い、みかんは難しい顔になった。


「確定してるのは、あっちに転生者がいるって事です」


「そう来たか……」


 私は苦い顔になった。

 転生者……この言葉が出て来る時点で、もう大元に誰が存在しているのかを理解する事が出来た。


「ゴグ族とゴグマ族の両方を親に持つ巨人なので『ゴグゴグマの巨人』と呼ばれていたです。コイツが大陸に住んでいる巨人の部族を完全に纏めてました」


 つまり、向こうはもう一致団結しているって訳か。

 一方、こっちは仲間割れ寸前……と言うか、族長自らが内通者にまで成り下がっていると言う始末か。


「圧倒的にこっちが不利だな」


「そうなりますねぇ……このまま行けば里は壊滅でしょうし、ティタンは当然ながらギガンテス族も滅亡するでしょうねぇ」


「ああ、やっぱりそうなるのか」


「ここはみかんなりの憶測も含まれているのですが、ゴグゴグマの巨人は完全にギガンテスの族長を利用してるだけです。最初から里を壊滅させて二つの部族を自分の手中に納め、奴隷か何かにでもする気だった見たいです。もちろん部族としての地位はないので、事実上の滅亡と言う事になりますねぇ」


 嘆息混じりにみかんは言う。

 

 事実、みかんの言った内容が妥当だろう。

 もう、絵に描いた様な流れで滅亡の道を歩みそうな勢いだった。

 

「現状で分かっているのはここまでなのですが……今の所、あのピエロは確認してないです。つまり、今回は敵として戦う可能性は低いかもです」


「そうか……そこは朗報だな」


 倒す事はもちろんだが、ヤツは面倒な形で敵を加勢する。

 アインの時なんかそうだった。

 暗黒の球みたいなのをアインに浴びせた事で、ヤツは私の実力を越えて来た。


 同時に自我が崩壊してしまい……もう、助ける事が不可能になっていた。


 …………。


 あんな想いは、もうこれっきりにして置きたい。


「どちらにせよ、ピエロが悪さをして転生者を作り出した結果、ゴグゴグマの巨人が産まれた事は確かです……あいつ絡みなら、確実に用心して置かないと……こっちが死ぬです」


「……ああ。そこは私もそう思う」


 つい最近、身を持って知ったからな。


 みかんの親になるのだろう宇宙意思が言うには、どこからとなく出現した別の宇宙意思……それが、伝承の道化師ピエロになるらしい。


 そして、私は知っている。

 ヤツに目的など存在しない事に。


 ただただ、無限に存在する宇宙空間を浮遊し、悠久とも表現出来る長い永い時の狭間で偶然産まれた『だけ』の存在なのだから。


 何の為に生まれて、何の為に生きるのか?

 どうして存在するのか?

 それら全ての概念が最初からないのだ。


 ヤツがやっている事は、世界中を全て巻き込んだ究極の……暇潰しなのだ。


 巻き込まれるこっちの迷惑を考えろと言いたいぞ! 全くっ!

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