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巨人の英雄・ブロンの試練【9】

「失礼なっ! みかんはただ、ういういさんを今回の敵対部族になるゴグ族とゴグマ族が住んでる集落のど真ん中に蹴り落としただけです!」


 失礼千万と言うばかりに叫ぶみかんは、更に鬼な台詞を平然と吐き出していた。


 つまり、こうだ。


 魔法の絨毯で敵の集落までやって来た所で、ういういを蹴り飛ばすなり何なりして叩き落とし、そのまま飛び去ってしまった訳だ。

 バカなの? てか、ういういに一生恨まれるぞそれ!


「向こうも向こうで一触即発状態だった見たいでな……上空から落ちて来た私を見るなり、敵襲のブザー見たいなのが鳴ってさ? そこからは散々で……向こうの兵士に集団で攻撃されて……最悪だったよ!」


 ういういは、げんなりした顔になりつつも半べそになってぼやいていた。

 ……なるほど。


「すると、向こうもコッチに攻撃を仕掛ける気でいる訳か」


「仕掛けるも何も、完全に戦争一歩手前だったね。完全武装の兵士が山の様にいてさ? 逃げて来るので精一杯だったよ……」

 

 言ったういういは、そこで重い吐息を『……はぁ』と吐き出す。

 どうやら、事態は私が予測していた以上に火急を様する模様だ。


「……で? みかんはどうしてういういにそんな鬼畜な事をしたんだ? まさか、単純にやりたかったから……って訳じゃないだろう?」


「まぁ、みかん的にはそれはそれで面白いイタズラだとは思うのですが、当然ちゃんとした理由がありました」


 それはもう、イタズラのレベルを遥かに超過してると思うぞ。

 まぁ、そこは良い。

 ともかく、ういういの荒行と言う名目もあったのだろう……そうして置こう。


「兵士を攪乱かくらんさせるのが主目的です。程よく兵士が、空から落ちて来た未確認落下物体ういういに意識を向けている内に、みかんは集落の内部にある建物の中に侵入して行くのです」

  

「ああ、だからおとりなのか……」


 みかんの話しを聞いて、ようやくういういの言ってる本筋を理解した。


おとりだなんてご挨拶ですねぇ……名誉の犠牲と言うべきです」


「お前、それだと死んでるぞ……」

 

 もっと酷い事を言って来たみかんに、私は思わずういういに同情したくなった。


「とにかく、話しを続けるです……ういういさんの名誉の殉職を無駄にしない為、みかんは建物の中に入って行き、そこで色々な情報をせしめて来るのです」


「そうか、でも殉職だと完璧に死亡してるからな?」


 あ、なんか、ういういがさめざめと泣いてた。

 そこで、フラウがポンと優しく肩を叩いて慰めてた。

 ……まぁ、実際はちゃんと生きてたし、そっちはフラウに任せて置くか。


「全部を言うと話しが長くなってしまうから、ポイントを絞って話します……まず一つ。実はコッチの部族に、相手側の内通者がいるです」


「……は?」


 私はポカンとなった。

 聞き捨てならない内容だった。


 みかんが手にした情報に間違いがないとするのなら、此方こちら側の部族に裏切り者がいると言う事になる。

 当然、あってはならない事だ。

 私の目的は、最終的に抗争寸前になっているだろう、島側の部族……ティタン族とギガンテス族の二部族を、大陸側にいるゴグ族とゴグマ族の仲介をする事ではあるんだが……だからと言って、八方美人に立ち振る舞うつもりは最初からない。


 両方に良い顔をしていた所で、状況を打破する事は困難だろうし、そこまでへりくだった態度をしたいとも思わない。


「しかも……その内通者は、ギガンテス族の族長です!」


「なんだと?」


 衝撃的だった。

 私は、まだ族長とやらに会ってはいないが……だ?


「もしそれが真実なら、ギガンテスの族長はティタン族をゴグ族とゴグマ族に売った事になるぞ?」


「ズバリそうです。かつては聖地を守り切れるだけの戦力と実力を持っていたギガンテス族とティタン族……そして、実際に千年近い時を守って来ました」


 みかんは、そこで神妙な顔付きになった。


「しかし、時は流れ……現代の先端魔法を大陸経由で手にしていたゴグ族とゴグマ族に対し、島の中で鎖国同然の生活を続けていたギガンテス族とティタン族は、いつの間にか大きな文明の差を作り出してしまうのです!」


「そうか……」


 途中、何回か小競り合いがあったとは聞いていたが、そこを含めてもまだティタン族とギガンテス族の自力が勝っていたのだろう。


 しかし、時の流れは残酷だ。

 更に時が流れ……大陸内に居を構えていたゴグ族とゴグマ族は、身体的な強化とは別に……文明の利器や、新開発された新しい魔法などを駆使して、ティタン族とギガンテス族を凌駕する力を手に入れた。


 結果、形勢が逆転してしまうのだ。

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